第181話ワルクラ配信3-5

まずはどこに行こうかな? そう思ったとき、丁度逃げてきたこの付近に街の中でも特に存在感のある施設があることを思い出した。


「えっと、確かこっちに入り口が……あったあった! まずはこの『エーライ動物園』から観光していきましょう! ここはガチガチに本格的な造りになっているので、開幕から企画を盛り上げてくれるはずです!」


エーライ動物園、名前の通りエーライちゃんが中心になって開園し、今でも規模を広げ続けている、広さだけなら街で一番の大型施設だ。

ゲートを潜るとさっそく動物たちがお出迎えしてくれる。各動物がそれぞれの個性にあった装飾が施されたエリアに展示され、更にその動物の基本的な情報からクスっとくるような雑学まで書いてある看板まで設置されている。

これだけ広くて環境も整った場所だったら、動物さんたちも幸せだろうなぁ。


コメント

:出たな栄来組総本山

:今日は組長はいないかな?

:確かにここは動物園だ、動く生き物が沢山いるからな、ははは

:街屈指のホラー施設


その凝りようは現実の動物園と比べても遜色ないほどだ。エーライちゃんのスペックの高さが透けて見えるね、配信スキルも高いしで本当に器用な子だ。裏の顔さえなければ……いや、あれがあってこそのライブオンと言われればそうなんだけど……。


ワルクラチャット

<昼寝ネコマ>:お? 淡雪ちゃんか?


「あれ? ネコマ先輩?」


先輩方に汚された心を動物たちに癒されながらゆったり中を歩いていると、奥の方からネコマ先輩がやってきた。


ワルクラチャット

<昼寝ネコマ>:どしたー? 動物園に用かー? 羊毛か? ミルクか? それともアレか?

<心音淡雪>:ただの観光です。あとアレってなんですか?

<昼寝ネコマ>:おーそうかそうか! エーライちゃんほどじゃないがネコマはここに詳しいからな! せっかくだしアレも含めて案内してやるぞ!

<心音淡雪>:本当ですか! ありがとうございます! 

<昼寝ネコマ>:ここは広くなりすぎて複雑になってきた感じあるからな! 案内役は任せるがいいぞ!

<心音淡雪>:お願いします! ところでなんでネコマ先輩はここに居たんですか? 詳しいみたいですしよく来ているんです?

<昼寝ネコマ>:いや、飼われてる


「……ぇ?」


ワルクラチャット

<心音淡雪>:だ、誰に?

<昼寝ネコマ>:長に


「あっ(察し)」


これ以上の追及はやめよう。これ以上踏み込むと何か悪いことに巻き込まれそうな予感がビンビンする。


コメント

:詳しくは園長のアーカイブ『珍獣! 猫娘を捕まえにいくのですよ~!』をご覧ください

:逃げるネコマ……釣り竿を持って追いかける園長……強制入園手続き……お茶代わりの劇薬ポーション薬漬け……ピストン圧迫面接……死亡動機捏造……うっ、頭が

:やめろ、思い出そうとするな、人形にされるぞ

:配信見てないけどネコマがとんでもないことされたのは分かった

:園長は『仲間には』めちゃくちゃ優しい園長の鏡だから

:何度次期園長を決める選挙やっても動物からの支持率100%らしいな。不正もないらしい。

:動物(一部例外あり)


一部何があったか知っているであろうリスナーさんによりコメント欄が盛り上がっていたが、どれもあまりにも恐ろしい内容だったので目を逸らした。

エーライちゃん、本当に恐ろしい子……。




「あっ、うさぎさんだ! 他も小動物がいっぱい! 中に入れるってことはふれあい広場かな?」


正直少しネコマ先輩に付いていくことに恐怖を感じたが、案外普通に動物園を詳しく案内してくれた。

驚いたのはこの施設、なんと地下まで広がっていたことだ。そこには敵モブまでもが飼育されており、危険度が特に高く飼育環境を考え中の敵モブ以外はほぼ全て網羅しているようだった。

外からは見えないから私も初めて知った……エーライちゃん相当やりこんでるなこれ……。

さてと、ふれあい広場はこのくらいにして、次のエリアに案内してもらおうかな。


ワルクラチャット

<昼寝ネコマ>:次のエリアは大人気だぞ! よく他のライバーも来るんだ

<心音淡雪>:そうなんですね! 楽しみです!


「あれ? こっち行くんだ?」


なんだか人目に付かない奥の方に向かっているな。普通人気エリアなら目立つところに造ると思うんだけど……。


ワルクラチャット

<昼寝ネコマ>:着いたぞ! ここが大人気の最初に言った『アレ』だ!


「――――――――」


私は言葉を失った。

そこにあったのはいくつものベッドが敷き詰められた狭い檻。そして檻の中には……自由やプライバシーを完全に度外視し、極限にまで数を敷き詰められた『人』の集まりがあった。


ワルクラチャット

<心音淡雪>:ネコマ先輩……これは……?

<昼寝ネコマ>:これはもなにも村人だぞ! 反対にあるこっちの檻にはうまうまなやつがいるからな! 取引が必要になったらいつでも来るといいぞ!


「これ完全に村人ガチャ用の増殖施設じゃねぇぇかああああぁぁぁ!?!?」


これ私でも知ってるぞ! どっかの村から村人連れてきて、繁殖して厳選したら良いもの物々交換してくれるんでしょ!

道理でガチ勢の人達はよく動物園行ってるわけだ、前からなんでだろと思ってたけどこんな答えなら知りたくなかったよ!


ワルクラチャット

<昼寝ネコマ>:ほら! このバイニンとか1番人気でおすすめだぞ! 皆からは愛をこめて『五〇勝』って呼ばれてるやつだ!


「人気投票1位繋がりでかってやかましいわ! 確かに見た目よく似てるけど! あとバイニンって呼ぶな! 一層危なく思えるだろうが!」


コメント

:出たなエーライ動物園の闇その1

:その2から先もあるのか……

:あ、人気2位のコイル君もいるじゃん、やっほー

:狂え、純粋に

:こめられてるのは愛じゃなくてエメラルドなんだよなぁ


「なんて恐ろしいことを……これは私が一回ガツンと言ってやらないといけませんね!」


ワルクラチャット

<心音淡雪>:ネコマ先輩! 私怒りましたよ!

<昼寝ネコマ>:淡雪ちゃん、言いたいことは分からなくはない。でもそれを言ってはいけないんだよ

<心音淡雪>:……どういうことです?

<昼寝ネコマ>:これを否定するということは園長を否定するのと同じ。もしそんなことをここでしたら……淡雪ちゃんもバイニンの仲間入り


「ひいいいいいいぃぃぃぃぃ!?!?」


チャットが流れるのと同時に踵を返し、情けない悲鳴と共に他のエリアへと一目散に逃げる私なのだった。

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