第140話ひと狩り行こうぜ5

「よっしゃ! 討伐完了! 二人ともお疲れ!」

「お疲れなのですよ~」

「お疲れさまでした。いや、本当に疲れましたね、主に心労的な部分で……」


あの後、無事に光ちゃんを生存させた状態でクエストクリアまでもっていくことができた。

光ちゃんのデータを守るためではあるが、ここまでゲームにマジになったのはプニキ以来だろうか……確かに緊迫感と没入感がすごくて私も癖になり……はしないな。

ゲームくらいもっとカジュアルにワイワイ楽しもうよ……なぜそこまで自分に試練を課すのよ光ちゃん……。


「いやぁマジで死にかけたときはドキドキしたね! 光なんてもうアドレナリンの分泌量バグって瞬きすら忘れてたよ!」

「それなら今すぐその縛りをやめなさい」

「いやでもね、確かに失敗したら心に深い傷を負うことは分かるんだけどね、でもその瞬間が……最高に気持ちいぃ……」

「こいつ超ヤベーのですよ~」

「どこぞの死にまくってエクスタシーに目覚めるスパイみたいなこと言い出しましたね」

「レーザーカモーンですよ~!」

「試練に躓くたびに成長していく光のメンタルは最早ダイヤモンド、誰にも砕くことなんてできない! あぁぁ、ラスボス戦の時には裸縛りも追加しちゃおうかな? あとクリアが目前まで迫った緊迫感と、もし死んでしまった時は容赦なく全て最初からの絶望感がピークに……最高に燃えるね!!」

「見えている地雷に飛び込んでいくことは勇気ではない」

「その言葉で止まるほど光先輩も常人ではないのですよ~」


同期の狂気を目の当たりにして動揺が隠せないのだが、私はどうすればいいのだろうか?

というか今考えるとライブオンで本当にまともな人誰一人もいなくない? 私このままじゃあライバー以外の友達じゃ満足できない体になっちゃうよ?

――あ、そもそも私ライバー以外に友達いなかったわ、あはははははー。


「げげごぼうぉぇっ」

「ど、どうしたのですかあわちゃん先輩? キャラが濃すぎるスパイが二人になってしまっては、流石の園長でも対応が難しいのですよ……」

「嘔吐……限界まで満腹にした状態でリ〇グフィットをやって、吐いたら負け縛り……ありかもしれない」

「やめなさい、配信内で吐くのだけは本当にやめなさい、大変なことになるから」

「異常なほどの説得力なのですよ~」


コメント

:経験者は語る

:嘔吐で業界の頂点に昇りつめた女だ、面構えが違う

:ゲロ式人生革命 ¥10000

:ゲロで吐瀉物と同時に体の中の清楚も吐いてしまった女

:体の中もなにももともと体の外に張り付いているだけだったでしょ

:あれ? 吐くのも意外と悪くないのでは?

:神に愛された外見の美少女という前提条件がクリアしているならワンちゃんある

:なるほど、よし、ゲロ式配信の準備してくる

:自己肯定MAXニキ嫌いじゃないよ


「ねぇ光ちゃん、貴方は一体どこを目指しているの?」

「勿論世界最強の生物だよ!」

「即答!? それならなぜ道場とか行かずにVTuberになろうって思ったの!?」

「VTuber=電子生命体=あらゆる攻撃が効かない=世界最強。光天才でしょ!」

「QQQ、証明失敗」

「BBQ、お肉食べたいですよ~」


コメント

:人と生まれたからには、誰でも一生の内一度は夢見る「地上最強の生物」。VTuberとは、「地上最強の生物」を目指す格闘士のことである!

:まぁVの者のVはVictoryのVだからな

:VTuberってすごい(小並感)

:生まれる国と時代を間違えたのか逆に運が良かったのかもう分からん

:園長現実逃避してて草


「本当に……ライブオンの面接とかどうやって突破したんですか?」

「どれだけ強くなりたいかをひたすら力説したら『そっかぁ!』って言ってて気づいたら合格してたよ!」

「もう諦めたっていいじゃないか、人間だもの、あわを」

「そろそろ次のクエストいくのでーすよ~」


その後も配信時間終了まで狩りを楽しんだのだが、普通に考えたら楽になるはずのマルチプレイなのに、ソロプレイより疲労感が大きかったのはおかしくないだろうか?

まぁワチャワチャと騒いで楽しかったのも事実だから、いい思い出かな。

でも流石に次は落ち着いてゲームを正攻法に楽しみたいな。

まぁでもいくらなんでも次はここまで酷くなることはないだろう。次のコラボプレイを楽しみにして今日は寝ましょう。

おやすみ~……。




――そして後日。


「ハチミツください、なぜなら還は赤ちゃんだからです」

「えへへ……還ちゃん……久しぶりに会えたね……ママだよ、シオンママが会いに来たよぉ……前は企画の運営があったから我慢してたけど、今日こそはママの子にしてあげるからねぇ……」

「こんましろー、ましろんこと彩ましろです。絶対に疲れるから念のため明日マッサージの予約を入れてきました」


あ、だめだこれ、ライブオンに救いなんかなかったんや、ストゼロ飲みます。

 

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