第139話ひと狩り行こうぜ4

「それにしてもカエルって不思議な生き物ですよねー」

「お、どうしてそう思うのですよ~?」

「うーん、そもそも両生類全般に言えることなんですけど、どこか地球的じゃない不思議さがある気がしません? まるで宇宙から来たと言われても信じてしまいそうな」

「確かに! 光も小学生のときとか好奇心が刺激されまくりだったからよく捕まえて観察してたよ!」


段々と敵の攻撃パターンも頭に入り、危なげない狩りになってきたので自然と雑談が増えてきた。

たまたま狩っている敵が大きなカエルだったので話題に出したのだが、生き物全般大好きなエーライちゃんには刺さったようで、楽しそうに話題に乗ってくれる。


「カエルさんの中だけでも膨大な種類がいますからね。毒を持つのは勿論、中には背中に卵を担ぐ子や、まるで赤ちゃんのような声を出す子もいるのですよ~。あと意外と味も良かったり」

「え゛? た、食べるんですか? カエルを?」

「光それ知ってる! 見た目と違って癖が無くて美味しいらしいね!」

「ふふ、光先輩は博識ですね、えーらいえーらいです! 今では日本にありふれているウシガエルさんも、もとは食用として連れてこられた外来種だったりもするのですよ~」

「極度のサバイバルでは基本知識だからね! いかなる状況でも生きていけるようにカエルは勿論蛇まで捌き方はばっちりだよ!」

「その知識を現代日本で使う機会は出てくるんですかね……」


コメント

:カエルです、食べてください

:光ちゃんの血肉になるなんて許さんぞ、池に帰れ、カエルだけに

:↑ニキも南極に帰ってどうぞ

:バジェットガエル飼いたいけど飼育が難しいんよな

:基本爬虫類とか両生類は懐かないから飼育には無償の愛が必須

:カエルってあれか、よく女神様食べてるやつだよな?

:もしかしなくても素晴らしい世界に住んでます?

:僕は声がカエルみたいだねってよく褒められます

:あっ(察し)

:知らない方が幸せなことって世の中あるよな


こういう緩いノリでのゲームも楽しいものなのだが、同時に気が緩んでしまうのも人間。

現在ゲーム上ではガンガン攻め過ぎた光ちゃんが画面端に追い詰められ、しかもモンスターは光ちゃん以外には興味もないといった様子で私たちに反応してくれない。


「え、いやちょっとそれは光もきついかも!?」


結果的に連撃をくらい、キャラクターが身動きが取れなくなり隙だらけになる、所謂ピヨッた状態になってしまった。

まずい、このままでは光ちゃんが戦闘不能になってしまう!


「い、いやだあああ!!!! 死にたくない! またあの地獄はいやだぁ!! だれか助けてえぇえ!!!!」

「待ってて光ちゃん! 今起こすよ!」

「私は閃光をなげますよ~」


急いでわざと光ちゃんを攻撃することでピヨりを覚まし、エーライちゃんが強い光で相手の目を眩ませる閃光玉を投げてくれた。

ふぅ、なんとか危機は回避だ。


「あ、ありがとう二人とも、本当に助かったよ……」

「いえいえ。それにしても光ちゃんすごく焦っていましたね? 全然まだ余裕ありますから一回くらい倒れても大丈夫ですよ?」


このゲームは三回戦闘不能にならない限りクエスト失敗にはならないようになっている。一回目すらまだの為、そこまで気にすることはないと思ったのだが……。


「いやぁ、実は光は今一回でも戦闘不能になったらデータ削除の縛りでクリアまで目指してるんだよね! 実はこれも7つ目のデータだったりするんだよ! 本当に二人は命の恩人だ、大好きだぜぇ!」

「「は?」」


さも当然かのように光ちゃんがそう言った瞬間――私とエーライちゃんの時間が止まった――。

そして時は動き出す。


「組長、守護陣形を組みます、ターゲットの前に」

「承知、組員の命は私が守る。ハチの巣にしてやるぜ」

「おうぅ? どうしたの二人とも? あ、ちゃんと死んだとしてもクエストクリアした後にデータ消すから心配いらないよ!」

「「そういう問題じゃねーから!!」」


完全にハモってしまう私たち。

もう本当にこの子はなんでこういうことしようと思っちゃうの!! 配信前の疑問もようやく繋がったわ!


「光ちゃん、今すぐ上に256歩、右に1歩、下に16歩、左に32歩のところにあるベースキャンプに帰りなさい」

「なんでなぞのばしょみたいにいったのですよ~?」

「あ、懐かしいねなぞのばしょ! 光もなぞのばしょ初見プレイやったなぁ。一切攻略知識なしで挑んで心の目で目標を目指すんだよ! でも結果的にそれもデータ消えたから光はまだ未熟者だなぁ」

「ねぇあわちゃん先輩、光先輩をうちの園で保護してもいいですよ?」

「いいですとも!」

「いやだめだよ!? ゲームも人生も光はまだちゃんと戦うからね! というかむしろデータ消して欲しい! 幾多もの厳しい試練を乗り越えて光はもっと強くなるんだ! だから気にせずにこきつかってくれ!」


コメント

:草

:ほんと狂気

:文字通り一回の死が命取りになるわけか

:隠れドM枠、それも究極的な

:元気枠に見せかけた中二病に見せかけたあほの子に見せかけたライブオン

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