第94話L-1グランプリ7

「まぁこのままじっとしていても埒が明かないので、還が謝罪する側やりますか」

「お、いいねぇ! それじゃあネコマーが問い詰め記者役やるかにゃー。謝罪内容はネコマが完璧に作るから安心して任せてくれていいぞ」

「期待してます」

『覚悟は決まったようだね? それじゃあ三分間謝罪会見よーいスタート!』

「えーこの度はお忙しい中お集まりいただき誠にありがとうございます。これより山谷還の謝罪会見を開始させていただきます」


おお! 入りが謝罪会見っぽい! いい感じに雰囲気出てきたよ!


「今回このような騒動になってしまい、社会を混乱させてしまったことを重く受け止め、一切包み隠さず事の経緯を説明したいと思っております」

『ありがとうございます。それではこれから質疑応答に入らせていただきます。それでは獣っ娘の記者の方、ご質問お願い致します』

「にゃにゃーん! ライブオン二期生の昼寝ネコマが質問するぞ! 今回山谷還氏がNLKの名物教育番組ママといっしょにて、エキストラの児童達に交じり収録中に侵入。そこから更に番組キャストの歌のママと体操のママに養子縁組届を突きつけ、終いには番組カメラマン達に「お前らテープ回してるやろな?」と脅迫したとの騒動が世間では浸透していますが、これはすべて事実でしょうか?」


だめだこれ! 架空のものだとしても起こした騒動が人間にとって許されるものじゃない!

あの悪戯好きなネコマ先輩に罪状を任せた時点で還ちゃんは大きなミスをしてしまったのかもしれないな、ご愁傷様……


「あ、なるほどぉ、はいはい……なるほどなるほど」


ほら! 還ちゃんも「こいつやりやがったな?」みたいな反応してるし!


コメント

:草草の草

:放送事故どころの騒ぎじゃない、これは放送事件や

:還ちゃんの引きつった声でもう駄目だった

:内心本当はやりたがってそう

:これは先が気になる


『えと、か、回答をお願いします!』


だがここで止めてはただでさえ時間制限のある劇の進行を壊してしまうので、一つ深呼吸をした後還ちゃんは口を開いた。


「えーはい。全て事実でございます」


おぅ、まさかの全て認めるルートを選んだか。流石意外とノリがいい女還ちゃん。


「にゃにゃ! 正直なお答えありがとうございます! それでは騒動を起こそうと思った経緯をお聞きしても?」

「えー単刀直入に言いますと、やばいと思ったが幼児退行欲を抑えきれなかったです」


おいこら。


「そもそもですね、還は身体こそ大人ですが内に眠る熱きソウルは赤ちゃんなのです。なので私の行為を騒動呼ばわりされることそのものが誠に遺憾ですね。少なくともあの瞬間私は憧れの番組に出演している興奮からあらゆる思考能力が赤ちゃんレベルまで低下していました」

「にゃ、にゃるほど? えっと、つまり還氏は自分を赤ちゃんだと言い張るわけですな? 失礼ですが年齢をお聞きしても?」 

「年齢なんて数字です、年よりにはそれが分からんのですよ!」

「その発言が赤ちゃんから出るわけないだろ! ま、まぁいいでしょう。えー次は歌のママと体操のママに養子縁組届を突きつけた件ですが、これはどういった考えの上での行動ですか?」

「ママと名乗るのなら私のママになれ、以上!」

「にゃ、にゃにゃ? い、意味が分からないです!」

「あなたには分からんでしょうねぇ!」


コメント

:信じられるか? これ謝罪会見なんだぜ?

:完全に開き直ってて草 

:なるほどつまりは重くないか? その称号(ママ)ということですか ¥240

:分からんでしょうねぇって言われても分かりたくないです

:ちょっと195回スパチャして300万円送ります


「というか私ばかり攻められてる方がおかしくないですか? そこのネコマ記者にも様々な罪状があることを私掴んでいるんですからね!!」

「にゃ?」

「おら! 早く処刑台上がれやおら! 今度は私が攻める番や!」

「にゃにゃ!?」

「お前の悪事全部白日の下に晒し上げてやるから覚悟しろやおらぁ!!」

「にゃにゃにゃ!?!?」

「えー記者の山谷還です。よろしくお願いします」

『おおっと! な、なんだこの展開は!? まさかのここにきて被告と記者が選手交代、いやポジションチェンジというべきか! 二人の立ち位置が一瞬にして入れ替わったぞ!? 残り時間1分で一体何を見せてくれるのか!?』


あほやん。


コメント

:大草原不可避

:はえー謝罪会見ってスポーツだったんすねぇ

:世間の敵意をどちらが多く相手にぶつけられるかを競うマインドスポーツやぞ

:一転劣勢(チェンジサレータ)

:なるほどぉ、逆転コンビの名はこれの伏線だったわけですか

 


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