第57話ニュースライブオン3

「さてさて、次のニュースはこちら! 『祭屋光、激辛焼きそば早食いRTAで2分30秒の好タイムを出す!』」

「ほうほう」

「こちらも実際のVTRをどうぞ!」


『今日の光は負ける気がしないよ。なんでかって? ある炎の兄貴から勇気を貰ったからさ』

『焼きそばの辛さや渇水にどれだけ打ちのめされようと 心を燃やせ 歯を喰いしばって箸を持て。光が足を止めて蹲っても時間の流れは止まってくれない 焼きそばの量は減ってはくれない』

『息の仕方があるんだよ、どれだけ辛くても耐えられる息の仕方グハァアア! ゴホッ! オエッ!』

『ごじぞうざまでぢだ……ぐすっ、お、おいぢかったです…………こ、この涙は良いタイムが出たからであって、決して辛かったわけじゃありません!』


「はいここまで! シュワちゃん、ここまでのVTR見てどう思った?」

「落ち着いて食べればいいと思います」

「シュワちゃん、全てのRTAの存在を無に帰すようなコメントはやめなさい」


コメント

:世界一本気で焼きそばに立ち向かった女

:ドMの呼吸かな?

:ひぎぃ! みたいな感じの呼吸だなきっと

:光ちゃんはおばかわいい

:それな


「あははっ、流石に冗談だってばよ! てか絶対光ちゃん某鬼退治映画見に行ってきたでしょ、露骨過ぎるくらい影響受け取るやんけ……最後に至っては呼吸法とか言っておきながら辛さに惨敗してるし……」

「まぁまぁ、そういう真っすぐで正直なところが光ちゃんの魅力だからね!」

「それには完全に同意ですね、ちゃんとご馳走様もできててえらい! ママになりたい!」

「おん? 何を言ってるんだいシュワちゃん? 光ちゃんのママはこの神成シオンだよ?」

「おんおん? こちとら光ちゃんでどちゃシコキメた逸材ですぞ? この心音淡雪こそ光ちゃんのママにふさわしい」

「おんおんおん? シュワちゃんは同期だけど私は先輩だよ? よって消去法でママは私ということになると思うな」

「おんおんおんおん? 年下や同い年のママのすばらしさを理解できぬとはママみが衰えたのではないですかシオン先輩?」

「おんおんおんおんおん? 先輩を煽るとはいい気概だねシュワちゃん?」

「おんおんおんおんおんおん? 権力を行使するとは、いやはや、シオン先輩こそパワハラの呼吸でも習得しましたか?」

「……これはどちらが本当のママか決着をつける必要がありそうだね」

「完全に同意です、ここは公平に光ちゃん本人に判定してもらいましょう、今から通話かけます」

「負けないからね!」


コメント

:すみませ~んリスナーですけど、ま~だ時間かかりそうですかね~?

:なんで勝手に人の親権について争ってんだこいつら(大困惑)

:シュワちゃん、本当のママは娘でシコッたりしないんやで

:シュワちゃんまともなこと言ってる風だけど一個もママの根拠として成立してないの草

:勢いだけで誤魔化すなwww


『あ、もしもし! いきなりどしたのシュワちゃん? 今ニュースライブオンに出てるんじゃなかったっけ?』

「突然ごめん、どうしても聞いておきたいことがあったんだ、私とシオン先輩、どっちが子宮にギュンギュンくる?」

『え? あ、ん??』

「第一声からなに言ってるのシュワちゃん!」

『あ、やっぱりシオン先輩もいたんですね! え、てことはもしかして光、今ニュースライブオンに出演しちゃってるわけですか!? やったああぁ!!』

「そうそう、ほんといきなりごめんね? 光ちゃんに聞きたいことがあって」

『お、シオン先輩からもですか? なんでしょうなんでしょう?』

「私とシュワちゃん、どっちの子宮から生まれたい?」

『……んん? あれ、もしかして回線悪かったりしますかね? 言葉の意味がよく分からなくて……』


コメント

:だめだこいつら、早く何とかしないと

:大草原や ¥2000

:ツッコミ役不在の恐怖

:光ちゃんこういうの疎いからガチの困惑してそうで草

:こいつらなんで子宮で優劣決めてんの?


『なんかよく話は分からないけど、光は二人のこと大好きだよ!』

「「はっ!?」」


光ちゃんのその真っすぐな言葉を聞いた私は、まるで深い眠りから覚めたかのようだった。

なぜ私は誰が一番だ、などという狭い固定観念に縛られてしまったんだ、恥を知れ。

恐らくシオン先輩も同じことを思ったのだろう、隣同士しばらく見つめ合い、そして同時に頷いた。


「「ありがとう光ちゃん! おかげで目が覚めたよ!」」

『おぅ? それならよかったけど……結局なんの話だったんだろ?』


コメント

:ほんと仲いいなこいつら

:最高や

:ノリだけで行動してるのほんと草

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