第19話収益化記念配信1

「はぁ、はぁ、」


いつものように配信を開始しようとPCを繋いだモニターと向かい合っている私だが、その心情は明らかに普段とは違っていた。

心拍数が上がり息が切れそうになる。 ここまで配信前に気分が高揚したのは初配信の時以来かもしれない。

焦る気持ちをなんとか抑え込み、震える指で配信を開始する(ストゼロの飲みすぎで禁断症状出てるわけじゃないよ! むしろ今素面だよ!)

これだけ気持ちが高ぶっている理由、それは……


「皆様こんばんは。今宵もいい淡雪が降っていますね!(早口) さてさて、今回は収益化記念配信です! しかもましろんが描いてくれた新立ち絵のお披露目に他にも盛り沢山な内容ですよ!」


コメント

:キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! ¥500

:プシュ! 

:¥155

:プシュ! 

:¥155

:プシュ! 

:¥155

:(収益化が)遅すぎるっピ! ¥10000

:おめでとー! ¥1000

:ニート卒業配信と聞いて ¥3000

:お、清楚モードスタートやん! 

:¥155

:本性がばれたこのタイミングで新立ち絵……? なんかオチが読めた気がするぞ笑 ¥800


そう! 今日は待ちに待った収益化が通った記念配信なのだ!

あぁ、コメント欄に目に追えない速度で大量のスパチャが飛びかってる……

もうね! 最高の気分だよ! 私が経済を動かしてる!

もしかしたらそんなに喜んでお金の為にやってたのか! と怒る人もいるかもしれないけど、嬉しいものは嬉しいんだから仕方ない! 

今まで人生どん底だった落ちこぼれが成り上がった瞬間なのだ、だれが何と言おうと私は今嬉しさの極地にいる!

あああぁぁ……私は今世界一の幸せ者だぁ……


「皆様本当にありがとうございます! 今私素面なんですが、本日はめでたい日なので度々コメント欄にて見かけましたストゼロというお酒を『初めて』飲んでみようと思います!」


コメント

:は? 

:は?

:は? ¥1000

:はい、ここまでテンプレ

:はいはい天ぷら天ぷら ¥500

:¥155


「あと、不思議なことに155円のスパチャが異常に多いですね。 本当に謎ですけど土下座で感謝します。 これで私はあと10年は戦える」


コメント

:なんで155?

:コンビニで丁度ストゼロ買える額なんやで

:草

:これ以上ないくらい嬉しそうで草

:神聖3桁や

:俺も送ろ ¥15500


「さて、それでは今日は350mlレモン味で乾杯したいと思います!」


プシュ!


コメント

:プシュ!

:プシュ! 

:ワイもプシュ!


「それでは――乾杯! ごくっごくっごくっ……ぷはああああ!!!」


コメント

:かんぱーい!

:めちゃうまそうに飲むやんw

:とてもストゼロ初めてとは思えない飲みっぷりで草

:なんか一緒に飲むのええなぁ ¥5000

:これは酒テロ


ああやばい、この収益化による心の充実感とストゼロの愉悦ダブルコンボ、んぎもじいいいい!!!

これで家賃払うたびに通帳の残り残高とにらめっこして冷や汗をかくこともないし他のライバー達がやってたゲームも買える。

ああ、この心の柵が抜けたほうな解放感……なんかこみあげてくるものがあるなぁ。


「ぐすっ、うう……本当に幸せ……」


コメント

:ふぁ!?

:泣いた!? こいつストゼロ飲んで泣いたぞ!?

:ええぇ(困惑)

:水を得た魚って言おうとしたら自分の体から水出し始めて草

:淡雪こわれる

:あわちゃんが、しゅわちゃんになっちゃう!


「いや、だって今まで人生でここまで嬉しかったことないですよ! 学生時代も地味で目立たなかったし、社会人になったらブラック企業に尊厳破壊されつくしたから、そんなダメダメだった自分が今これだけの人に愛されてると思うと涙もでてきますよ!」


コメント

:泣いた 

:生きろ そなたはおもしろい ¥20000

:個人的に下手に謙遜されるよりこれくらい喜んでくれたほうがスパチャ送るこっちも嬉しい ¥5000

:それな 

:¥155

:もっと幸せになって、どうぞ


「ううう、みんなありがとう! もう今度ストゼロカートン買いしちゃう!」


コメント

:え

:まずいですよ!

:スパチャやめた方がよくね!?

:健康の為なら仕方なし

:あれだけ流れてたスパチャ一発で止まって草


「いやいやいや嘘! 嘘だから! ちゃんと休肝日も週二回とるし飲みすぎもしないようにするからー!!!」


コメント

:草 ¥400

:酔いが来たのか頭シュワシュワしてきたなwww

:ほんと人間味丸出しなところすこ ¥1000


「ふ、ふぅ! さて、そろそろ一本目も空なので新立ち絵のお披露目行きましょー! 更にそのあとはマシュマロ返しながら凸待ちするよー!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る