第15話 サウス戦線

 ■ミズキ 性別:男 年齢:17

  職業:魔法剣士  レベル:5

  HP:300/300 MP:250/250

  【物理】近接攻撃:+600 遠隔攻撃:+300

      近接防御:+300 遠隔防御:+200

      近接支援:+150 遠隔支援:+100

  【魔法】近接攻撃:+50  遠隔攻撃:+50

      近接防御:+50  遠隔防御:+80

      近接支援:+200 遠隔支援:+10

  【精神】近接攻撃:+150 遠隔攻撃:+100

      近接防御:+200 遠隔防御:+130

      近接支援:+100 遠隔支援:+60

  【バシップ】絶対不服従、攻防之見切

  【スキル】

  【スペル】拒絶I、静寂I、治療II

  【加 護】創造主(不老)

  【ギフト】魅了


 自分のステータスを思い出していた。集団戦においてどんな戦いができるのかを考えていた。これまで師匠との訓練は対人戦が主で、それ以外は村の周りにいた魔物を少し狩ったに過ぎない。


 魔法に関して言えば、治療は自分に対して使っていたので、割と得意な感じだったが、魔力切れを考えると他人に扱える程の余裕があるのかは少々疑問に思う所だ。


 完全に魔力が切れると身動きが取れなくなる。補給するには食うしかないが、魔力切れを起こしているとそれすらできない。意識が保てなくなるケースもあると言うくらいだ。そこを気を付けて戦う必要があると肝に銘じた。



 日が出て来たと同時に魔物の群れの中心で爆発が起こった。


 魔法使いによる、範囲攻撃だ。後学の為にどんな魔法だったのか見ていれば良かったと思ったが、それどころではない。


「開門ー!」


 魔法使いによる攻撃が終わったので、暫くは接近職の出番だ。


 恐怖と同時に心が疼く。


 これから、戦いが始まる。


 私は剣を構えて、門外に突進した。




 私が一匹一匹対処している時、周りに幾つか土煙を上げているのが見えた。


 その土煙は魔物の群れをかき分けて進む者だ。かき分けられた魔物は宙を舞い、絶命していった。


 別の方向では大男が大剣を使い、魔物を同時に切り裂いている。胴から切り裂かれた魔物は絶命していった。


 私が持っているのは両手剣だった。師匠が一番似合うからという理由で選んでくれた剣だ。大剣程の大きさはないので大男のような戦いには向いていない。


 この乱戦の中、防御なんて悠長な事をしていれば、様々な方向から刺される。

 『攻撃は最大の防御だ』を地で行くスタイルを実践せよと言われてる気がする。


 私は突撃してくる魔物に対して、両手剣を突き刺す。

 ここで止まってしまっては後続にやられる。そんなことは判っているが、突き刺さった魔物が邪魔になって次の動きに移れなかった。ダメだと思たその時だ。


刀剣之波動ブレイドソニックを覚えた】


 私は少しばかり口角が上がるのを抑えきれなかった。


刀剣之波動ブレイドソニック!』


 突き刺さった魔物が膨らんだかと思うと四散した、さらにはその直線上に居る魔物が一気に吹き飛んだ。



 私を含めた5人が戦線の維持に役立っていた。


 両手剣使いの私と短剣使いのリリアルト、大剣使いの大男と、細身女性の二刀使い、背の低い斧使いは恐らくドワーフなんだろう。。初めて見る亜人種にすこし興奮した。やっぱりいるんだなと。


 5人が間引いて、残りを兵や冒険者が始末するというスタイルが出来上がっていた。だが、こちらの被害が皆無という訳ではなく、既に味方の3割ほどが戦闘不能に陥っている。


 相手の数は残り2000を切ったと砦から伝令が聞こえた。半分は倒したとはいえ、かれこれ3時間は戦っているのだ。そろそろ休憩くらいさせてほしい。


「ミズキ!避けて!」


 横からリリアルトの声がした。遠方から投げられた岩が、目の前の魔物を押しつぶす。その岩がはねてしまい、私の肩を強打した。洒落にならない程痛いが、どうにか治療魔法で傷は癒した。


「前衛、一旦引け! 遠距離戦に入るぞ!」


 その声に救われた気がした。そうだ、リリアルトが近くに居るはずだ、一緒に退避しようと声がした方向を見るとリリアルトは倒れていた。何があったのかと駆け寄ると片腕の肘から先が無くなっていた。


 その場は一旦、砦内に戻って私が治療をかけたが傷口がふさがるだけだった。私の魔法では部位欠損は対処できないと判ると同時にヒーラーを探した。教会から派遣されたヒーラーならばどうにかしてくれるかもしれないと一縷の望みをかけたのだが、彼らでも部位欠損は対処できないという。


 私は、絶望した。


 何も返す事が出来ない事に絶望したのだろうか。

 それとも彼女が戦えなくなることに絶望したのだろうか。

 それとも、自分の愛する人が傷ついた事に絶望したのだろうか。

 

 私はミハルと同じくらいリリアルトを愛しているのかもしれないと思った。


 砦は今も戦闘中だった。

 私は少し茫然とした意識の中、魔法使い達が詠唱で攻防している中に混ざった。


 遠くに見える敵の中心地に向かって攻撃すればいいとだけ認識して全力でスキルを放った。


刀剣之波動ブレイドソニック!』

 

 まばゆい光は一直線に敵を捕らえ、ドーム状の爆発が発生する。

 どれくらい蒸発したのか判らないが、周りの反応からして効果はあるようだ。


刀剣之波動ブレイドソニックの派生、刀剣達之舞ブレイドダンスを覚えました】


 覚えたのなら使うしかない。


刀剣達之舞ブレイドダンス!』


 私の剣の複製が10本ほど生成され、攻撃対象と認識した周辺の魔物に向かって飛来し無差別に切り裂き始めた。さらにまだ魔物が多く生きている場所を攻撃対象と認識することで無差別に切り裂く剣が移動した。派手さこそないが一度の使用で倒せた数は波動の何倍にもなっていた。


 岩を投げていたのは巨人種だった。

 憎しみを込めて徹底的に切り裂いた。


 巨人種が全滅したのと同時に、私は気を失った。


 後で聞かされた話では魔力切れだったらしい。

 サウス戦線は巨人種を倒した時点で勝利が確定し、残りは撤退していった。


 意識を取り戻した時には、砦内は大いに盛り上がっていたが、リリアルトの姿は何処にもなかった。

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