第2章 第2の魔王

1話 次行こうか…

 魔王討伐を終え、上手く締まらないままリズの色違い達3匹は、次の魔王の元へ向かおうとしていた。


「次はどんな魔王なんだ?」


 スラスケがそんなことを聞いてくる。


「端的に言えば虫だな。それもかなりたちの悪い」

「キモ」

「あぁ、キモイぞ。マジでキモイぞ。」


 ……なんか僕がキモって言われてるみたいで嫌なんだけど。


 序盤の森第2のボス、それはだ。

 しかし、ただの蛾では無い。羽を広げたら人間を優に超えるサイズのクソほどにでかい蛾だ。そしてその羽の柄がどうしたらそうなるんだと言うくらいのゴミ作画である。

 その件についてもクレームが多数入っていたが、それに対し運営はシカト。もしかしたら、何かの伏線かもしれない、ネタバレの恐れがあるから運営も答えないんだ。っていう意見もあったけど、断言しよう。ただの手抜き制作だ。


「どんな魔王なんですか?」


「常に鱗粉撒き散らしてるんだけど、それが猛毒でもし耐性がなければいろんな状態異常にかかってわけもわからずに即死する。でも、ステータスはそんなにというか全然高くない。典型的な状態異常で攻めてくる感じのやつだな。戦いにくいだけの」


「おいおい、なんかリズと俺の対応の差、露骨すぎないか」


  不意にスラスケがそんなことを言う


「お前ばかだもん」


「確かにな」


 ……納得するのか。スライムに『バカ』は褒め言葉なのかもしれないな。


「ま、そういう事だから、今から出発だ!」


 ここ、序盤の森には魔王と呼ばれるクラスの魔物が3体いる。そして今回倒したのがその中で、と言うかゲームの中で1番弱かった魔王だ。次に倒すのはあえてここから遠い方を選んだ。何故かって? 最近魔法使えるからって調子に乗って僕の存在をないがしろにしているスラスケにギャフンと言わせたいからだ。しかし、別の理由もある。


 え? それがどう関係するのかって? それは戦い始めてからのお楽しみさ。


 ――あたりはだんだんと暗くなり始めていた。


 今日は本当に濃い1日だったな。非遮平原に着いてからバカみたいな強さの魔法でドラゴン倒して、レベルMAXからの選択進化、それからリズの姿を転写して4日以上かけて歩いた道を数十分で駆け抜けて、そしてスラスケがアホみたいに強くなってて隕石降ってくるし……


 リズに出会ってから人生の歯車加速しすぎじゃないか? あ、間違えた。スラ生の歯車か。


「おい?」


「え?」


「行くんじゃないのか? 何ぼーっとしてんだよ」


 あ……1人で考え込んでた。


「もしかして疲れてますか?」


「いや、考え込んでただけ」


 リズが心配してくれている。寝る必要も、体が固形でもないスライムに身体的疲労の概念はない。疲れるとしたら精神が疲れるくらいだ。主にスラスケのことで。


 3匹は次の魔王討伐に向け、走り出した。


「ていうかさ、俺たち戦いっていう戦いしてなくね? なんかつまんねえ。せっかく里から出たのにさ」


「僕が敵を選んでるからな」


 冒険者の時は多少無理することもあったが、いかせん魔物は死んだら終わりだ。死にたくないから苦戦する敵とは合わないようにしてるしダメージ受けないようなやり方でやってきた。それに、強い魔物はリズに任せて楽にレベル上げしてたからな…


 身の程を弁えろってんだ。僕らは今スライムなんだぞ!?


「ちょっとだけ強いのと戦ってみようぜ、なんかこう、グワーて熱くなるやつ!」


「えぇ、死んだらどうするんだよ。」


「死にそうになったら、リズに助けてもらえばいいじゃん」


 あ、確かに、『テオス』がなんでも出来るチートスキルなら蘇生ができないこともなさそう……1度それも試してみるか。


「確かにそれなら大丈夫かも、生き返らせたり出来るか試してみよう」


「出来れば死ぬ前に助けて欲しいと思ってんだけど。」


 あ、そっちだったか……


「まぁとりあえず、手頃な魔物で試してみよう」


 確かこの当たりだと、魔猫まびょうがいた気がする。名前の通り猫の魔物だ。いや、詳しくいえばネコ科の魔物。端的にいえばあれは………虎だな。少し伸びて周り見てみるか。


 リズを転写したまま背中から触手を伸ばす。


「う……わ……きっしょ。」

「うわぁ……」


 リズとスラスケが俺の姿を見て同じような反応をする。


「仕方ないだろ……」


 リズは声に出さなかったが多分心の中で思ってるだろうな。仕方ないだろ……リズもこの辺りの草より視点が低いんだから。


 あ、あれ? あれって魔猫まびょうじゃなくて鬼獅子オーガンじゃないか?

 いかにも強キャラって感じの名前で、攻撃力高いやつだ。この森の中だと結構上位のランクで登録されてた気がする。あいつでいいか。ちょうどいい。


鬼獅子オーガンが居たからあいつで試してみよう。僕が倒してくるよ」


「そんなことしなくても俺の魔法の方がいいだろ」


「……確かにそうだな、じゃあ任せた。ちゃんと死体残るようにしろよ。」


「任せろ」


 ・・・


「なんで行かないんだ?」


「行かなくても当たるからに決まってるだろ?」


 どゆこと? 魔法舐めすぎじゃないか?


「終わった、取ってきていいぞ」


 どう言うことだよ………? というか。


「なんで僕なんだよ…」


 行くけど。


 鬼獅子オーガンが居たあたりへ歩いていく。

 そういえば猪王キングボア倒したからレベル上がったんだった。後で確認しとくか。

 鬼獅子オーガンのいた辺りへ近づく。


 まじかよっ………毒か? 毒だとしたらどんだけ強い毒使ったんだよ……しかもこの短時間で仕留められる毒を遠隔射撃って……毒耐性ないと勝ち目ないじゃないか。スライムと戦うために毒耐性って……冒険者の常識が壊れるわ。


 周囲の草が枯れていた。枯れた草の中心には3m程はあろうかという巨大な獅子の死体。


 流石にこのサイズをリズの元へ運ぶのは無理があるな……リズに来てもらうか。


「リズ、スラスケ、こっちに来てくれないか? でかくて運べない」


 念話を飛ばす。


「分かりました。」


「おう」


 すぐに来た。


「草が…枯れてますね。」


 リズもこの様子に驚く。


「スラスケ、お前どんなの使ったんだよ。」


「『動かず攻撃できて死体も残る楽な魔法』だな!」


 …またその適当な感じでやったのか。まぁいいけどさ。

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