第16話 スラ生の歯車に、強力な潤滑油

 レベルを効率よくあげるために僕達は『非遮平原』へと向かっていた。

 非遮平原は、序盤の森にはもう敵がいないと感じた冒険者が次に進む場所だ。序盤の森は、かなり広大なため序盤と言っても森の奥地になっていくにつれ、そんなやつ序盤に出していいの!? なんて感じるほど強いやつが出てくる。そして、非遮平原の魔物はそれより強い。魔猪ヘボアの10倍のステータスなんてざらだ。


「なぁ、一体どれくらいかかるんだ?」


 僕達が移動を始めてもう4日が経った。スライムは寝る必要が無いため休まず進み続けている。獣狼神は……わかんないけど寝ずに着いてきてる。


「このスピードだとまだまだかかるな」


 素早さは戦いの瞬間的なスピードを表しているものであり、どれだけそれが高かろうが歩く? というか進むスピードは変わらない。個体差はあるが、種族別でだいたい決められている。そしてスライムは吸血蛞蝓ラミアナメクジと言うナメクジについで、このゲーム界で2番目に遅いのだ。


「もう飽きたぞー、同じ景色ばっかりだし。」


「大丈夫ですか? スラスケさん」


「おう、お前は全然平気そうだなー」


 当たり前だろ。ステータスの桁が違うんだから。体力要素があるのかはわからんがステータスが高い方がスタミナはある気がする。たぶん……何となく。


「お前って言うなスラスケ。ちゃんと名前で呼べ」


 怒ったら瞬殺だぞ。冷や冷やさせるな。そんなことは起こらないと思うけど。


「下っ端が何言ってんだ」


「まだ僕の事下に見てるのか!?」


「まぁまぁ、お二人共」


 リズが来てこいつ調子に乗ってやがる。女の子だから多少見逃してるけど、今度僕の大切さを教えないとな……。


 そうして、3人は特に何も無いまま序盤の森を抜け、非遮平原に出た。道中ステータスオール三桁の奴が度々出てきたが、リズが居るので全て瞬殺。敵のステータスは教えてないのでスラスケはよく働く子分だな、としか思ってないらしく、未だに大柄な態度を取っている。いい加減やめてくれ。


 リズがモンスターを倒したことでレベルが15も上がった。ステータス確認しとくか。



 種族『プレーンスライム』

 Lv17 ♂ スラオ


 進化まで後Lv33


 HP: 231 MP: 201


 攻撃力: 189

 守備力: 241

 素早さ: 160

 魔法耐性: 134


 特技 転写


 スキル 毒霧 硬化 撃進 鞭打ち トゲ


 個体特性 無し


 特殊技能 無限成長


 称号 転生者・超晩成型・進化者・変態



 すげ。スライム本気出しちゃったって感じだな。冒険者時代に序盤の森でこんなスライムにあってたから確実に死んでたわ。ていうか、1レベルあたりだいたい10程度ステータス上がってるから、単純計算で進化せずにこのまま猪王キングボア倒せるんじゃね? レベル後半になるにつれて伸び率も上がるし。


 スラスケのは……めんどくさいからいいか。リズのをちょっと覗こ。



 種族『獣狼神』

 Lv25 ♀ リズベルト・サンテリア


 進化まで後Lv---


 HP:2984 MP: 2613


 攻撃力: 3412

 守備力: 2438

 素早さ: 4005

 魔法耐性: 3182

 魔力:5839


 スキル テオス


 個体特性 獣神



 これが本当の『格の違い』ってやつだね。たった2しか上がってないのにステータス跳ね上がってんだけど。獣神について全然知らないからわかんねーけど、特性の『獣神』とスキルの『テオス』ってなんなんだろう? 聞いてみたいけど聞いたらステータス覗いてるのバレるし……


「すっげー。真っ平らだな」


「真っ平らで「遮るもの非ず」ってとこから非遮平原って名前が来てるからな」


「すごい! スラオさん物知りなんですね!」


「いやーそんなことないよ……って、熱っ?!」


 スラスケが火球を飛ばしきた。魔力が上がっているためもう線香花火では無い。手持ち花火位の威力になった。


「キモイぞ。浮かれんな。死ぬぞ」


 お前、どの口で言ってんだよ……。あ、スライムに口なかったわ。しかも、お前がそれ言うのはなんか違くないか?


「キモイ言うな!」


「てかさー、さっき遮るものがないとか言ってたけどあそこら辺でかい岩があるじゃねーか」


 無視すんなよ……。まぁいいや。あっ……スラスケのが移ってる。


「あれは岩じゃない。ドラゴンだ。」


「「ドラゴン!?!」」

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