印象

 正直な話、彩華の自称婚約者が現れた時は本当に怖いと思った。何せ馬で盗賊の見張り番を扉ごと蹴り殺して不法侵入する男がいいんですか、お嬢様。

 海宇と名乗った男は厳ついとは程遠い顔立ちと体格だった。奇妙な柄の服と眼帯とは裏腹に、人懐こい笑みを浮かべて柔らかい物腰でいながら、もの凄い威圧感と恐怖を上着のように羽織っていて、雀は彼が話すたび一字一句に怯えていた。ありあわせで作った焼きおにぎりを食べて美味いと言った時と彩華の頭を撫でた時。それ以外の間、あの男は雀が今まで会った誰よりも、恐ろしかった。

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