第13話

「自分が将来、なにになりたいか分からない」


 ソラシドは、ぱちっと目を覚ますなり


 突然そんなことを呟いた


 それが紙飛行機を飛ばす理由について話しているのだということに


 気づくまで少し、時間がかかった


「ソラシドなら、なんにだってなれるじゃないか」


 と、ぼくが言うと


「それはちがうの」と俯きながらに否定する


「君の言う通り、たぶん私はなんにだってなれてしまう。願ったら、きっとどんな願いも叶ってしまう」


 ソラシドは真っすぐにぼくを見つめて


「でもね」と続けた


「いつまでも、願っているだけじゃいけないから


 願うのは、もう、やめにしようと思うんだ」


 彼女は寂しそうに笑って


 また、せっせと紙飛行機を折りはじめる

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る