第12話

 なにもやることが無い


 ソラシドに見惚みとれるくらいしか、やることが無い


 仕方がないので、地平線に消えていく紙飛行機を数えている


 九九七、九九八、九九九。


 そしてちょうど千機目の紙飛行機を飛ばし終えると


 彼女はいきなり「ずどーん」とひっくり返って


 蒼輝石サファイアを散りばめた瞳の中に


 途方もなく広がる青空を映したかと思うと


「疲れた」とだけ言い残して


 すぅすぅ寝息をたててしまった


 不意に、びゅう、と風が吹いて


 屋上のコンクリートを這うように滑っていった


 橙光晶カーネリアンきらめく髪が、さらさらと揺れて


 ソラシドは、少しだけ気持ちよさそうに微笑んだ


 こういう不器用なところを


 ぼくはきっと、放っておけないのだ


 ソラシドは、寝返りを打つついでに


 ぱちんとひとつ、指を鳴らすと


 あたり一面に、満天の夜空が広がった



 昼夜の逆転すら、彼女にとっては


 照明のスイッチを切り替えるより、遥かに簡単なことなのだ


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