第10話

 時間の進まなくなった屋上で


 ソラシドは、せっせと紙飛行機を折って


 せっせと飛ばしまくって


 ただそれだけを、ひたすらに繰り返していた


 彼女のフォームは、すっかり熟練じゅくれんしていて


 美しく、そして無駄がない


 洗練された動きというのは、見る者を決して退屈させない


 とはいえぼくも人間なので、


 いくら時間が止まっていても


 生命活動は止まっていない


 要するに、腹の虫は誤魔化せないという話なのだが


 ソラシドがひとつ「パチン」と指を鳴らしてしまうと


 耐え難い空腹は、すっかりどこかに消えてしまった


 その瞬間、ぼくはソラシドが


 なにを願ったのか理解してしまったし


 どうやら当分、時間を動かす気は無いのだろうと


 直感的に、そう思ったのだった



 


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