第2話 この木 何の木 俺の木だった
朗報だ。
何とこの身体、空が飛べた。
何気なく"あ~この足透けてるし浮いてるじゃん~"とか呑気に考えながら身体がもっと上に浮くのを想像したら普通に浮いたのだ。
ファンタジーって感じしてきたなぁ!
ただし並大抵の人が出来ることではないな、これ。
俺の種族はほんのちょっと足が透けてる人間説が消えた。
悲しいので次は亜人説を推そうと思う。
種族もステータスも場所も大樹も、何もかも分からないとなると初日で躓いたどころかバンジーで落下レベルに気分が落ちてきている。魔力チートととやらも今だ感じられないし、思い返してみれば空席がどうのとか言っていたのも気になる。
「そういや腹は空かねぇんだよな」
俺はかれこれ数時間経つが空腹も喉の渇きも感じないことに疑問を覚えていた。
だが感じていないだけで腹は空いているのかもしれないし、と供物の方を見た時にふと閃いた。
わりに新しそうな供物のようなものが置いてあるということは何者かがここに来ている証拠なのだし、その何者かにこの場所とこの大樹が何なのか聞けるのでは....?
「ある意味天才じゃん、いやぁ流石俺。当たり前のことに気付くのおっせぇ」
有名大学卒業が聞いてあきれる。
そうだ、元々人の出入りが感じられるんだから人が来てないわけがない。
種族わっかんねぇ問題に気を取られ過ぎていたようだ。
それから暫くの間、俺は暇潰しもかねて色々なことを試した。
分かったことを上げていこう。
第1に、
・行動範囲の限界が空中含め大樹から数十メートルも離れられないこと。
・夜になってもあまり眠気を感じないこと。
・月は2つあること。
・よく見たら腕も透けてたこと。
頑張れば大樹の根っこをうにょらせられること。
そう、俺は大樹の根っこをうにょらせられるのだ。
それは何となくもう一度鏡を見ようとした時のことだった。
「あー、鏡。鏡取りたい」
遠隔操作出来ないものかと念じたりなんたりしていたときに、大樹の比較的細めの根が俺の思うままに動いて鏡を運んだのだ。
転生チートは大樹だった?
まだ細かいことは分からない。
とりあえず特殊なことが出来るとわかっただけよしとしよう。
因みに、さっき夜になってもあまり眠気を感じないとは言ったが元々寝ることが好きな俺は例の幹の空洞の中で寝た。
夜が明けて、朝が来て、二度寝を決め込もうとしたところで俺は変化に気が付いた。
下の方で声がする。
「....を、............ます。」
上からだと離れていて上手く聞き取れないその声は女の子の柔らかい声色だった。
女馴れしていたらなんの問題もなく直ぐ様下りて声をかけるのだが、生憎童貞。彼女いない歴=年齢のおじさんだ。...いや、今は青年か。
兎に角、いきなり声をかけるなんて無理無理。
ひよって穴から女の子の行動を見守っていると、いきなり女性が顔を上げた。
「!」
凄く驚いたような顔で此方を見ている。
咄嗟に隠れようとしたが確実に目があっていた、....と思う。
しまった、逃げ遅れた。
このままずこずこと戻ることも出来ない。
困った俺はへらりと
そうすると嬉しそうな満面の笑みを浮かべる女の子。
警戒はされてなさそうだ。
これは下りても大丈夫なあれ....?
一先ずゆっくりと女の子のいる場所まで下りた。
「あぁ、
感無量とばかりに手で口許を抑える女の子は、良く見れば神官?というか豪華なシスター服のようなものを着ている。
....ちょいまち、世界樹の精霊?戻った?
「....あの、この木、そんな大層な木だったの...?俺、勝手に使っちゃったけど」
「大丈夫ですよ、精霊様。この大樹は世界樹、全ての魔力の源と言われている木です。その冠を着けていらっしゃるということは新たな世界樹の精霊様で間違いありません。この世界樹は精霊様のもので、捧げられた供物も精霊様のものですのでお好きなようにご試用ください。」
困惑しながらも質問をする俺に女の子は優しく返答してくれた。
俺は精霊に転生していたらしい。
そしてこの木は俺のものだったらしい。
どうりで動かせるわけだ。
俺は頭の上に乗る西洋神話の冠擬きを弄りながら更に質問を続ける。
「
「ところでお嬢さん。この世界、魔力とかってどうやって分かるのかな」
そう、ステータス。ステータスが分からない。それが分からないからには世界樹だの精霊だの聞いても何がなんだか分からない。
種族の次はステータスだ。
「ステータスのことでしょうか?心の中で念じながらそのままステータスと呟けば自分にだけ見えるステータスウィンドウが出現します」
普通の手段だった。
「へぇ、ありがとう」
これでやっとスタートラインだと一息吐き、俺は幹の中へ戻ろうと浮遊する。
「あっ、待ってください....!」
「っとと、何々」
「あの、今日は帰りますがまた来ますので!お聞きしたいことがあればいくらでも!」
そう言って女の子はぺこりと俺に一礼し、走って何処かへ走っていった。
あらやだ親切。
........にしても、世界樹の精霊か。そりゃあ名前からして魔力チートですわ。
「ステータス」
女の子言われたように念じながら呟くと、目の前にスクリーンのようなステータス画面が表れた。
俺のステータスは....
〈 ステータス 〉ーーーーーーーーーーー
名前 セイジュ モリ
種族 精霊族
称号
魔力 EX
筋力 C
俊敏 B
精神 A
体力 B
〈 スキル 〉
樹木操作 Lv 1
自己回復 Lv 1
豊穣 Lv 1
浮遊 Lv 2
言語理解 Lv Max
樹木精霊術 Lv Max
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
わりと普通な気がする。
俺の読んでいたラノベじゃもっとこう、俺TUEEEEEEE的なステータスをもらっていた記憶があるんだが....まぁ魔力は本当にチートだな。
多分言語理解はおまけのようなものだろう。
攻撃力はあまり高くなさそうだが生存能力は高そうだし、今のところステータスはこれでいいと思うが....
ここで俺の転生の目的を思い出してみよう。
" 美女といちゃいちゃしてぇ "
いちゃいちゃするにはどんな身体が必要だ?
そう、人間の身体だ。
なんとこの身体、世界樹や地面といった自然にまつわるものは全て触れられるものの、鏡や櫛のようなものは触れなかった。
一応大樹の根を扱うことで動かせるがこのままでは人間に触れない可能性が出てくる。
それは避けたい。
人の身体がほしい。
あわよくばいちゃこらしたい。
俺の中で当面の目標が決まった瞬間だった。
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今日のまとめ
種族は精霊
この木俺の木世界の木
一部の物に触れない
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