(二)‐18

 そう続けた上で、上杉氏は一枚の紙を渡してきた。二つ折りになっている紙を開いて見ると、そこにはアラビア数字で2の数字と0が八つ並んでいた。千、万、十万、百万、千万……と数えて、二億円と読めた。いや、ちょっと待て。金持ちでもないうちに、そんなお金はない。銀行の副頭取まで勤めたとはいえ、地方の信金ということもあり、生活水準は、世間と概ね同じくらいだった。特別貧乏ではなかったが、金持ちでもなかった。そんなうちに二億円の資産など、ないはずだ。


(続く)

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