スライムすら倒せないFランク冒険者の僕が奴隷少女たちとハーレムしながらSランク冒険者を目指す物語 ~規格外な魔力とスキルを持つ大賢者の孫の無双譚~
マルマル
第1話 私を奴隷にしてください!
僕のおじいちゃんはすごい人だ。
先代の勇者様とともに魔王軍と戦った魔法使いで、あらゆる魔法を極め、膨大な知識を有していることから“大賢者”と呼ばれている。
そんなおじいちゃんに育てられた僕は、物心ついた頃にはもう、おじいちゃんに憧れていた。
こんな人になりたいと思った。
だから僕は一生懸命、魔法を勉強した。
昼も夜もなく、おじいちゃんから教わった呪文を覚え、来る日も来る日も魔力が切れるまで魔法を使い続けた。
それはもう死ぬほど努力した。
その甲斐あって、僕はこの世に存在する魔法のほとんどを習得することに成功した。
残すところ、あと一つというところまできた。
けれど、おじいちゃんはなかなか最後の一つを教えてくれなかった。
よっぽど危険な魔法なのだろう。
普段は優しいおじいちゃんが、僕がその魔法に言及すると厳しい表情になった。
だから僕は、その魔法を諦めかけていた。
けれど、僕が15歳になった日、おじいちゃんが唐突にこう言った。
『アルトよ、お前は冒険者になりなさい。もし、お前がSランク冒険者になれたなら、その時に最後の魔法を教えてあげよう』
それを聞いた僕は一も二もなく家を飛び出した。
そして、最初に見つけた街で冒険者登録を済ませると、意気揚々とクエストを受注したのだった。
一か月後―――
「お帰りなさい、アルトさん!」
「ただいま」
挨拶を返して、僕は採ってきた薬草をカウンターに並べた。
「1、2、3……はい! 薬草10枚、確かにお受け取りました! クエスト達成です! 冒険者カードを提出してください!」
僕はベルトのポケットから冒険者カードを抜きだして彼女に渡した。
彼女がカードの表面を指でなぞる。
特殊なインクで書かれた文字が消え、そこへ新たに彼女が文字を書き込む。
「はい、手続きが完了いたしました! 冒険者カードと報酬の銅貨5枚です! お受け取り下さい!」
「ありがとうございます」
僕はお礼を述べて
近くのパン屋さんで食パン二枚とミルク一本を買うと、街の広場へ向かう。
中央に設けられた噴水の縁に腰を下ろすと、勢いよくパンに
あっという間に食事を終えると、僕は深い溜息を一つ吐き出した。
「はぁ~~~、お腹空いたぁ」
ここ一か月、毎日食パンとミルクだけの生活をしている。
しかも、一日一食。
けれど、別にダイエットをしているわけじゃない。
単純にお金がないからだ。
「つらいなぁ」
僕は涙目になりながら、冒険者カードに目を落とす。
冒険者氏名 : アルト・ノア
冒険者レベル : 1
冒険者ランク : F
冒険者ポイント : 53/100
【次のレベルまで、あと47ポイントです】
【冒険者レベルが10に到達すると次のステージへランクアップします】
それを見て、僕はまた深く嘆息した。
薬草採集じゃ、冒険者ポイントが“1”しかもらえないから、ちっともたまらない。
冒険者ポイントが増えないから冒険者レベルが上がらない。
当然、冒険者ランクも“最低のF”のままだ。
「こんなんじゃ、Sランク冒険者になれないどころか腹ペコで倒れちゃうよ」
目標は遠いよ、おじいちゃん。
僕は何度目かの溜息を吐き出しつつ、空を仰いだ。
「おい、見ろよ。アルトだぜ」
その声にハッとして、僕は思考を停止した。
弾かれたように前を向く。
すると、三人の冒険者が歩いてきて僕を取り囲んだ。
「相変わらず、しけた
その内の一人がニヤニヤしながら僕に話しかけてきた。
ダン・ヴァンダイン―――この街の冒険者で一番強いと言われている男の人だ。
眉毛が濃くて、彫りが深い顔立ちをしている。
身長は190センチくらいだろう。
威圧感が半端じゃなかった。
「どうだ? 今日はスライム一匹くらい倒せたか?」
「……いえ、まったく」
「だろうな! その面を見りゃ分かるぜ! ガハハ!」
彼が笑うと、他の二人も一緒になって笑い出した。
かと思うと、ダンは急に黙って顔を寄せてきた。
そして、低くて野太い声で唸る。
「いい加減、目ざわりなんだよテメェ。スライムすら倒せねぇザコは冒険者に向いてねぇよ。とっとと辞めちまえ」
それだけ言うと、彼らは踵を返して広場を横切っていく。
「オラオラァ! 道を開けろ! 冒険者様のお通りだぞ!」
広場にいる人たちが動きを止め、彼らに道を譲った。
ダンたちの背中を見つめる僕の瞳から、雫がポロリとこぼれた。
スライムすら倒せないのは事実だけれど、さすがにキツいや。
心がズキズキ痛む。
僕は右手で胸を押さえた。
数回、深呼吸して気持ちを落ち着ける。
……よし、大丈夫だ。
何を言われようと、僕は冒険者を辞めない。
僕はおじいちゃんみたいな偉大な魔法使いになるんだ。
他人にどうこう言われようと、絶対に折れないぞ。
そう自分に言い聞かせて、服の袖で目元をゴシゴシと拭う。
そしてまた、僕は薬草採集に出かけることにした。
街から歩いて30分ほどのところに“帰らずの森”というダンジョンがある。
大きな樹木がたくさん茂っていて昼なのに薄暗い。
さらに迷路のように入り組んでいるため、踏みならされた道から外れたら遭難してしまう危険性が高い。
僕は慎重に奥へと歩を進める。
入口に近い場所だと薬草が採りつくされているため、どうしても奥に行かざるをえないんだ。
蚊に刺されたり蜘蛛の巣に引っかかったりしながら二時間ほど歩き回ると、どうにか薬草を発見することができた。
今日のノルマは達成だ。
ホッとして、僕は胸をなでおろした。
なぜなら、これで宿屋に泊まれるからだ。
雨風をしのげて、フカフカのベッドで眠れる!
なんて幸せなことか!
街に来たばかりの頃は、お金を稼げなくて野宿するしかなかったんだけれど、これが想像以上に辛いんだ。
見ず知らずの人から石を投げつけられたり、警備兵に怒られたり、散々な目にあった。
もう二度と野宿はゴメンだよ。
ああ、思い出したらまた泣けてくる。
僕は頭を左右にブンブンと振って悲しい記憶を追い出した。
そして、宿屋に泊まれるという幸せな未来だけを考えて帰ることにした。
いそいそと元来た道を引き返す。
気持ちがウキウキして自然と足が速くなる。
おかげで、一時間ほどで出口に到着した。
よし、さっさと受付のお姉さんに薬草を渡して、お金をもらおう。
僕は彼女の笑顔を思い浮かべる。
と、その時―――
グギャァァァ!!!
「な、なんだ!?」
耳をつんざくような、けたたましい音に僕は驚いた。
「に、逃げろぉ!!! “レギオン”だぁ!!! “レギオン”が出たぁ!!!」
街の方へ走る人が、そんなことを叫ぶ。
どうやら僕が聞いたのはレギオンの鳴き声だったらしい。
レギオンといえば、Eランクの魔物だ。
鷹に似た鳥みたいな外見をしていて、全長は5メートル以上もあり、鋭い爪とクチバシで攻撃してくる。
肉食で、好んで家畜や人を襲う厄介なヤツだ。
普段は“アークレイ山”の頂上にある巨木に生息しているけれど、こうして定期的に食料を調達しに来るんだ。
でも、じきに騒ぎを聞きつけた冒険者が討伐してくれるだろう。
僕はお呼びじゃない。
レギオンの討伐はEランク以上の冒険者じゃないと請け負うことができないもの。
まあ僕は、仮に請け負うことができたとしても報酬はもらえない。
だって……
「ちくしょう! なんでこのタイミングでレギオンが現れるんだ!? ツイてねぇ!」
「ボス! もったいねぇけど、奴隷は見捨てようぜ! 金より自分たちの命の方が大事だって!」
「クソッ! 高値で売れるはずだったのによぉ!」
そこで突然、僕の目の前に馬車が止まった。
二人の男が会話しながら荷台を切り離すと、馬に
どうしてそんなことを?
と思っていたら、謎はすぐに解けた。
グギャァァァ!!!
積み荷を引いたままだと、レギオンに追いつかれてしまうからか。
なるほどね。
グギャァァァ!!!
うわぁ、近くで鳴かれるとうるさいなぁ。
鼓膜が破れそうだ。
「ちょっと、あなた! なに突っ立ってるの!? 早く逃げなさい!」
「うん?」
僕がボンヤリとレギオンを眺めていると、荷台の方から誰かの怒鳴り声が聞こえてきた。
そちらに目をやる。
途端に、僕の心臓が早鐘を打った。
そこには、目の覚めるような美少女がいた。
歳は僕と同じで15くらいだろうか?
金色の瞳に、リンゴのように赤い髪は肩に届くくらいで、側頭部からはピョコンと犬耳が生えている。
薄汚れた貫頭衣を着ていて手枷をハメられていてもなお美しいと感じられる凛とした美貌に、僕は心がとろけそうになった。
グギャァァァ!!!
「きゃあああ!」
はっ!
あの子が襲われそうだ!
見とれてる場合じゃない!
僕はすかさず呪文を唱えた。
「ファイアーボール!」
―――ボンッ!!!
初級炎魔法を投げつけると、レギオンは叫ぶ暇もなく粉々に爆散した。
後には塵一つ残らなかった。
「そんな……レギオンが……ファイアーボールで……粉々に……」
驚いた顔もキレイだなぁ。
というか、美人はどんな表情でも美人なんだよな。
いくら眺めていても飽きないや。
「あ、あの!」
僕がウットリしていると、その美少女が声をかけてきた。
「あ……はい、なんでしょうか?」
僕は慌てて緩んだ頬を引き締めると、何事もなかったかのように聞き返した。
「この度は、危ないところを助けていただき、ありがとうございます!」
彼女が深々と腰を折る。
「いえいえ、どういたしまして」
堅苦しい彼女とは対照的に、僕は軽い感じで応えた。
「お礼をしなければなりませんね! でも、私は見ての通りの奴隷ですから、差し上げられる物があるとすれば、この身体くらいしか……」
彼女が言わんとすることを察した僕は、すかさず首を振った。
「いいですよ、お礼なんて! 見返りが欲しくて助けたわけじゃないので! あなたが無事なら、それで十分です!」
「ええっ!?」
僕が丁重に断ると、彼女は驚嘆の声を上げた。
大きく開かれた口がワナワナと震える。
しかし次の瞬間、彼女は弾けるような笑顔を見せた。
「な、……なんと慎み深い御方なのでしょう!」
彼女はキラキラと瞳を輝かせている。
なんだか、視線が妙に熱っぽいような気がするんだけれど、気のせいかな?
などと、僕が不思議に思っていると、彼女が再び言葉を紡いだ。
「決めました! 私、あなたの奴隷になります!」
「……ほえ!?」
その驚きの申し出に、僕は声が裏返ってしまった。
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