誰も知らないわたし旅
信心
第1話 「出発しまーす」
真っ暗な視界。
真っ暗な空間かな。
頭がぐるぐるして。今日は疲れていないはずなのにズーンと眠い。
このまま奥深い暗闇に引き込まれてしまいそうなので、そうはならないように何か考え事をしている。
これは今この瞬間だけじゃなくて、毎日どの瞬間も何かを考えているような気がする。
突然に息が不規則にリズムをとり苦しさを感じる。
真っ暗な空間で心臓がどのあたりにあるのかもわからないのに、大きな鼓動を感じる。
これ以上苦しさを味わいたくないから寝よう。
「おやすみぃ。」
一人の部屋。誰もいないこともわかってるのに、布団の中で呟いた。
布団の暖かさが部屋の寒さをごまかしてくれていた。
ガッガッゴン…
ガッガッーガンっ!
「いでぇっ」
大きく不安定な揺れに後頭部を打つ。
打った箇所に手を当てながら、目をひらいてみた。すると視界全体に映るものは電車内であった。
把握できない状況をなんとか理解しようと、まだ眠たいだろう自分の目を擦りあくびをする。
揺れる電車に座る自分に背後の窓から車内の所々を差し込む暖かな光を目視し、そして感じる。
車内にいるのは不思議にも自分だけ。
それに、「こんなオンボロな車内なんて存在するのだろうか。」と、そう誰もが思いそうな素朴な感じ。
今座っている車両の端から端じまで伸びる座席は赤のシート。そんなシートにホコリが溜まっているように見えて、手でシートをはらっみる。
「うぉっ」
フワッ。と舞うが差し込む光を反射した。
「はぁーー」
もう一度大きくあくびをした後に、ゆっくりと深呼吸をする。
この深呼吸は自分の頭で、だんだんと今の状況を理解し、何か一つ不安な言葉を吐くための準備なのだ。
スゥーっと息を吸い不安を喉を震わして音を出した。
「ここどこ!?」
電車の中である。
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