第6怪の7 ゼクスト クランケンハオス … 第六病院 俺は日本人だからね。 Byふぁーぷる
走りながら痺れ針を仕込み針の帯に装填する。
さ、本番だ!
〜○〜
倒れているヒューマン的に最高峰の若者を又越して走る。
造形的にも美しいが精神的にもフェアー精神に溢れた人類頂点もこの
ザマだと思うと雑草の様な現実世界では直ぐに滅びる対象だろう。
北棟:非公開エリアと羽黒山方面列車到着ロビー。
非公開エリア何が出るやら足音が微塵もしないラバーソールの足袋で
直走る。
銀髪の端麗な幼年期の少年少女が保育されている。
就寝時間なのかズラーっと並んだ透明カプセルに入って安眠中の様だ。
カプセルの有機LED画面に睡眠学習中、教材1035788相対性理論応用編と
表示されている。
成長の度合いでエリアは仕切られ、身体を鍛えるエリア、瞑想するエリア、
研究実験エリアと人類が学ぶべき身に付けるべき事を網羅する施設がこれ
でもかと並んでいる。
大きな大金庫の扉の様な厳重な扉が目の前にある。
先に進むにはこの扉を通過するしかない。
想定内だ。
腰のベルトに巻かれた円筒形の筒を手に取る。
指紋読み取りのガラス面で指紋認証する。
筒が喋る。
発動まで5秒。
大金庫の扉に粘着シートで附着させる。
5秒!
強い波動が放出され、反動で空間が歪む。
脳みそが揺さ振られる感覚に襲われる。
何度やっても嫌な感覚だ。
説明によると念動力が貯められているそうだ。
超能力で聞くお馴染みの物質を念で動かす、破壊する、吹き飛ばす。
大金庫の扉は捲れ上がって床に転がっている。
暗い非常灯だけのトンネルに走り込む。
暗闇は暫く走ると外の空気が流れ込んでくる。
羽黒山の深緑の蒸せ返るような緑が吹き込んでくる。
もう直ぐ外に出る。
汽笛を鳴らさずに車輪の音だけをさせながら列車が入って来る。
そして静かに停車する。
車両は4つ。
停車の反動で各車両がぶつかり合って〈ガシャンガシャン〉と
金属音を出す。
1両目が開く。
ウージーを腰だめに構えたドイツ兵が降りてくる。
列車に沿って一列に整列。
2両目。
天使の様な幼児が抱き抱えられながら降りて来る。
3両目。
檻だ。
鉄柵に入れられたケダモノが運ばれて行く。
檻にはシートが掛けられているので中は分からないがシートが僅かに
捲れ上がった時に赤い爛々とした眼光が見えた。
4両目。
〈プシュ〜〉と機械式の機密ドアが開く。
2メータ近い巨大なアンドロイドが現れる。
軍服を着ている。
襟章にハーケンクロイツとSSゲシュタポのマーク。
規律正しい歩き方でドイツ兵の前を悠然と闊歩する。
ドイツ兵の隊長格が
「ロンメル閣下、全員列車から降りました」
と報告する。
その言葉を聞き終わる前にアンドロイドは手を水平に伸ばして
P38を俺に向ける。
ロンメルと呼ばれたサイボーグは幼児達の盾になる様に俺との
線上に立ちはだかる。
P38の弾丸は正確に俺の眉間を撃ち抜く。
俺は糸の切れたパペットの様に倒れる。
倒れた先はホームの排水を流す側溝だった。
そのまま奈落に落ちる。
底は羽黒山の源泉からの水が勢いよく流れる地下の川だった。
朝日の眩しさで眼を覚ます。
泪橋のたもとに流れ着いていた。
撃ち抜かれた眉間はタングステンの額当てが守ってくれた。
頭は今一つ明瞭としないが橋を渡る温泉治療の老人5人がはしゃぎながら
畑に向かう姿を見上げる。
意識せずに苦笑いが出る。
人生百年と音頭だけは賑やかだが何の施策もない無責任な現実。
生体的な進歩も解決する手立ての飛躍的な向上も無いままに単に生き長
らえる延命だけの世界に無力な老人を放り込む。
人生百年は金か?延命装置か?
それを解決して余りある世界を築いているこの村、その中心第六病院。
無策な現実から派遣された犬も考えるよな。
あのP38のサイボーグは子供らを守る盾となる行動を瞬時に行った。
苦笑いだなこれも。
宣教師が残した記録に西欧文化を最たるものとして広めようとして己の文化
よりも進んでいる日本の精神文化、思いやりを自然呼吸の様に生活する庶民
生活を壊す罪を自問自答している記録が沢山残っている。
何か同じような感慨深さがある。
俺は宣教師じゃ無いから日本人を守るさ。
黒頭巾を脱ぎ、マイクロCCDで録画された記録媒体のSDカードを川に投げ
捨てる。
第六病院は多くの都市伝説を内在する。
ただただ歴史の古い病院で老人達の憩いの場でしかない。
特に問題点もなく、詳細調査をする価値無し…。
と報告するさ。
終わり
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