第8話 自画像

カシャカシャと歯磨きをする音が聞こえて5分後

口を濯ぐ音が聞こえた。

「終わりました」

何を食べたのかわからない、ずっと見ていたが、食べ物を頬張るような事は無かった。

「夕飯は?食べた?」

答えはノー、ずっと何も食べていなかった、それなのに歯磨きを見せつけてきた。

理由を聞くと単純なものだった。

「京さんとの同じ時を同じことをやって共有したいだけです、叶うならば、そちらに行って一緒に生活したいです」

回答はいつもと同じ、一緒に居たい、ただそれだけを言ってくる。

のぞみはソファーでダラっとして、スマートフォンを見ていた、その頃、高野はいのりが居るスマートフォンをパソコンに接続した。

「おやすみなさい、京さん」

いのりは、真っ暗な床に横たわると右腕を枕にしてそのまま、秒で寝てしまった。

そしてのぞみもスマートフォンを手に持ったまま画面をつけた状態で寝落ちした。

画面を消して毛布を掛け、隣の椅子に座ってうつ伏せで寝た。

翌朝、いのりはスマートフォンに入ってきて目覚ましを使い起こしてくれた。

「おはようございます」

のぞみも同じように起こされた。

「あ、、、充電ないじゃん」

残りは3%らしい、焦った顔で充電器に接続していた。

「あーあ」

何やらブツブツと呟きながら制服を取りに行くとそのまま持ってきた。

「乾いてない」

濡れた制服を着ていたが、白色制服に薄く透けていた。

「これで学校とか恥ずかしいんだけど」

元はと言えばのぞみが鍵を忘れたのが悪い。

するといのりは提案して来た。

「そのままクーラーの下に居てください、扇風機を回すとより効果的です」

制服を脱ぐと朝食が始まる前まで一生懸命に乾かしていた。

朝食が始まると母親がのぞみに封筒を渡した。

「これで必要な物は買ってくるといいよ」

目をキラキラに輝かせて嬉しそうにしていた。

「ところで宿題は終わったの?」

そんな暇は無かった、当然ながら全く手をつけていない。するといのりから”写真を送ってくださいと”メッセージが送られてきた。

急いでその場を離れて2人は写真を撮るといのりに送った。

朝食が終わり高野は先に家を出た。

「私は後から行くから」

家を出て10分後、いのりが画面に出てきた。

「京さん?宿題は終わりました、後はこれを写してください、それと問題4番は回答不能です、問題が間違っています、スパコンで100兆回シミュレーションしましたが、全て回答は同じでした」

高野はいのりの能力に頼り過ぎている。

直々の手書き文字が可愛らしいく書かれている。

「手書きなんだ、、、」

思わず言ってしまった。

「私はタイピングが嫌いです、手書きが好きなのです、お絵かきも好きですよ」

趣味の合う人が画面の中にいる、しばらくするといのりは紙を持ってきた。

「私の自画像を描きます」

紙を置くとインクジェットプリンターのような左右の動きだけで自画像を描いた。

「京さん、この絵は私と比較して合ってますか?」

リアル寄りの青色ツインテールの少女の絵が描かれていた。

「お渡しできないのが残念です」

話を聞くと自己改変プログラム規定により自画像を描けるのに自分の服のデザインはできないらしい。

本当なのかはわからない。

「デザイン頑張るからもう少しだけ辛抱して」

すると元気よく頷いた。

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