顧客リスト№42 『お菓子の魔女のお菓子な家ダンジョン』

魔物側 社長秘書アストの日誌

「ちょっこれーと♪ ちょっこれーと♪ ちょこれーとーはー美味しい♪」


またもや社長は、私の隣で歌っている。どこかで聞いたことのあるフレーズで。ボウルの中で溶かしたチョコをテンパリングしながら。…ってちょっと…!


「なに味見してるんですか!」


「いいじゃない!温度確認がてらちょっとぐらいー! チョコだけにチョコっとぐらいー!」


「いやこれで何度目ですか! 一回作る度にちょこちょこ舐めて…」


「だって美味しいんだものー!」



…駄目だ、普通に叱ってもあんまり効かない。…仕方ない、この手段は使いたくなかったけど…!



「…社長。あんまり酷いと、今年の私からのチョコは無しにしますよ?」


「えっ!!? そ、それは嫌…!!!  しっかり作るから…!」



囁き効果抜群。慌ててチョコづくりに戻る社長。…はぁ…良かった…。


この手段、諸刃の剣だもの…。下手したら私が社長に作れなくなるし、社長が私に作ってくれなくなってしまうのだから。




…でも…少し可哀そうだし、ちょっとぐらいの味見なら許してあげても…。



―いや、駄目駄目。一応これ、お仕事ではあるのだから。甘くし過ぎてはいけない。


ビターぐらいとまではいかないまでも、せめて甘さ控えめチョコぐらいまでは抑えないと。









そう。本日もまた、依頼を受けてとあるダンジョンを訪問中。そして…連れてきたミミック達とお菓子作りのお手伝い。私と社長はお揃いのハートのエプロンつけて。



なにせ、バレンタイン目前。お菓子のご用命が増える時期。このダンジョンにも活気とお菓子の香りが溢れかえる。



…いや、一つ訂正。ここでは、常にお菓子の香りが漂っている。だって、『お菓子な家ダンジョン』なのだから。







以前、ミミックを派遣させて頂いたダンジョンの一つに、『家ダンジョン』という場所がある。ぱっと見は深い森の中にある小さな一軒家なのだが、中はとんでもなく広く、魔法に満ちているところであった。


そこの主達は、『魔女』。その中のリーダーであるマギさん経由で依頼が来たのだ。



…もうお分かりだろうか。この『お菓子な家ダンジョン』に住むのも、魔女たちなのである。






とはいえ、ぱっと見の異質さならばここの方が上な気がする。このダンジョンもまた森の中にあり、一軒家の形をしているのだが…。



…お菓子、なのだ。見た目が。クッキーのタイル壁、ドーナッツな窓、ホイップクリームの乗った板チョコの屋根、キャンディの煙突、ウエハースの扉…とかとか。




また、中もお菓子い。違う、おかしい。いや違くはないんだけども。



やはり空間魔法を使って幾つもの道と部屋が作り出されている。そして、お菓子。


ビスケットの床に、マカロンの机やマシュマロの椅子、クレープの花瓶に、グミの花(勿論お菓子の)、ケーキの部屋に、マドレーヌのベッド、カスタードの壁紙…………。


キリがないので、ここいらで割愛。マギさん達の家ダンジョンは色んな素材や景色の壁が広がっていた。しかし、ここはお菓子で統一らしい。


もっとも、色んな種類のお菓子があるのでレパートリーは負けていないだろう。色とりどりで、とても美味しそう。



因みにだが、お煎餅とかチップスとかもあるので、甘いのが苦手な人でも安心。










ところで。私達が呼ばれた理由だが、単純に人手不足だからである。



この時期、このダンジョンでは沢山のお菓子を販売するらしく、しかも手作りをしたい人用に料理教室も開くご様子。


魔女たちは分身魔法を使える者も多いのだが、何分それでも手が足らず、猫の手ですら大歓迎状態。


そこにお菓子作りのノウハウもある私達のことを聞きつけ、これは百人力と依頼を飛ばしてくれたというのが事の顛末のよう。



実は、ここの方々、これまた私達が懇意にさせて貰っている『ハロウィンダンジョン』のジャック・オ・ランタン…プキンさんとお知り合いだったらしい。あのダンジョンにもお菓子作り手伝いで行っているし、納得である。




……え。今更だが、なんでミミックがお菓子作りが得意なのかって? 随分とお菓子なことを聞く。お菓子が嫌いな人がいるのだろうか???




…まあ冗談はさておき。ぶっちゃけると、そこらへんは社長や私の趣味が影響しているだけである。私達につられて、自分で作ったりする子が結構いるのだ。


もっとも、手先が器用なミミック達。やろうと思えば、案外なんでも上手にできちゃうのであるが。











私と社長がチョコ作成部屋で作業を続けていると、廊下をパタパタと走ってくる音が。続けて、ひょっこりと顔を出したのは、ふくよか気味でお年を召した顔の魔女の方。


「ごめんなさいねぇ。どなたか、こっちのお手伝いに来てくださらないかしら…?」


「あ。はーい! なら、私達が行きます! 丁度手元の材料が無くなりましたし!」


「良かったわぁ…ありがとうございます、ミミンちゃん」


「いえいえ!お気になさらず、『ステーラ』さん!」



社長の言葉にほっと胸をなでおろしたあの魔女のおば様。彼女がここのリーダーで、私達への依頼主である『ステーラ』さんである。


…何故か、おば様と呼びたくなってしまう。因みに彼女の得意お菓子はクッキーらしい。ステーラおば様のクッキー。









ということで、軽く片付け。そして社長入り箱…ではなく、社長入りのボウルを持ち上げ、ステーラおば様についていくことに。



あぁ、そう。社長は今回、箱ではなく大きめのボウルに入っている。これにはちょっとした理由がある。




なんとここの魔女の皆さん、ミミック達用に『お菓子の箱』を作ってくれたのだ。チョコやマシュマロ、焼き立てクッキーとかの。


まさかのおもてなしに、皆ご満悦。普通の箱で動き回るよりも、このダンジョンの見た目にあっているし、甘い匂いで常にやる気Max状態。




…なのだけど、一部ミミックの子は私の権限で差し押さえ。お仕事が終わるまで回収か、また新しく作ってもらうことにしたのだ。


その面子は、所謂『つまみ食い常習犯』。会社の食糧庫に勝手に侵入してもぐもぐしていることが多いメンバーである。社長もその一員。


箱がお菓子だと、作っている間につまみ食いと称して食べ、気づいたら箱が消滅しているってことになりかねない。


というか、実際なったorなりかけたからボウルに詰められているわけなのだが…。


因みに社長のお菓子の箱は、既に本人のお腹の中に消滅済みである。





そう言う事なので、もしお菓子を盗もうとしている冒険者はご用心。どこに、いやどのお菓子にミミックが隠れているかはしっかり確認すべき。


まあそんな輩を見つけ次第、問答無用で仕留めるけども。ビスケットのようにさくさくと。












「お菓子を作りたい方が一気に増えてきちゃって。講師役をお願いしたいのですけど…」


「はーいステーラさん! ちなみにどんなメニューですか?」


「パイ作りなのです。これがレシピですよ」


「ほうほう…チョコのパイにベリーパイ、アップルパイにカスタードパイ…他いろいろ! いいですねー!美味しそう…!」


「社長。よだれよだれ。…なんで社長が食べるわけでもないのに、よだれ出してるんですか…」



そんな風に話しながら、お菓子教室への道のりを進む。すると道中、他のお菓子作成部屋の様子が窺えた。ミミック達も色々お手伝いしている様子。



横の部屋では魔女の方と一緒に、大理石でのチョコテンパリングしているミミック。バウムクーヘンをクルクル回しているミミックが。


向こうでは綺麗なラッピングをしているミミック、そしてお菓子箱のように自身の箱を一杯にして、出来立てお菓子類を搬送しているミミックも。



中でも、群体型の子が大活躍な様子。カップケーキとかに使う紙容器の束や箱、その一番上に入り、スススッと各所を移動している。


何百と重なったまま運ぶのも、一個づつ等間隔に並べるのもお茶の子さいさい、一切れのケーキである。




また、魔女だから魔法でお菓子を作っている方々も沢山。魔法陣を展開し、ポンポンポンと。中には景気よくケーキを出している方も。



ん…? 




あの部屋…中から何か大量に零れだしているような……あれって、チョコチップクッキー…? というか、今この瞬間も凄い勢いでボコボコ増えていっている…!?



「あらま! ちょっとごめんなさいね…! 止めてこなきゃ…!」


と、ステーラおば様はふわりと部屋の中に。少しして、クッキーの発生?は止まった。



するとおば様。口の中にクッキーがぎっちり詰まり、明らかに気を失った宝箱型ミミックを抱っこして出てきたではないか。



「うちの子が何か悪い事しちゃいました…?」


恐る恐る問う社長。だがステーラおば様は、いいえ違うのですよ!と首を横に振った。



「私、もっと安く美味しいクッキーを簡単に作れないかしらって考えていて…。それで、魔法陣を叩く…クリックすると無限にクッキーができる魔法を作って見たのです」



…なに、その魔法…? そしてそれがあの有様…。


「もしかして、それが暴走したということで…?」


そう私が聞くと、ステーラおば様はコクリと頷いた。


「えぇ…。この子に魔法陣を踏む役をお願いしていたのですけど…。多分、溢れたクッキーの重さで魔法陣が押され続けて、ずっとクッキーが生成されていたようで…」



つまり、この宝箱型ミミックは、チョコチップクッキーの山に圧し潰されて身動き取れなくなっていたということ。…羨ましい……、いやそうでもないか…。


恐らく、食べることで状況を打開しようとしたのだろうが、口を開けた瞬間クッキーが雪崩れ込んできて…ということなのだろう。


でもこの子、なんだか嬉しそうな顔しているし…。良しとしよう。




というかステーラおば様、さらっととんでもない魔法を編み出しているご様子…。流石はここの魔女のリーダー…。











「さ。ここですよ」


ステーラおば様に案内された先。そこには村人や冒険者、エルフとかの他種族魔物がいっぱい。


そしてやっぱり、女性がほとんど。私が言うのもなんだけど、皆恋する乙女の顔である。



と、ステーラおば様。講師役をしている男女へと声をかけた。


「ヘンゼル、グレーテル。心強い助っ人を連れてきましたよ」







「お。本当ですかステーラおば様!」

「わぁ…! 有り難いです!」



講師役を少し中断し、嬉しそうにこちらへと駆け寄ってくる2人。片や青年、片や彼よりも数歳年下の女の子。



「初めまして。僕はヘンゼルと申します。ステーラおば様達の元で、妹共々菓子職人になる修行を積んでいる者です」


「私はグレーテルと申します! 恋のためのお菓子ならば私にお任せください!」



自己紹介をしてくれるお二人。しかし、魔物ではない。そして、魔女でもない。お揃いのエプロンをつけた、人間の兄妹である。


「この子達は私の弟子でもあるんですよ。今では街の方で私達の作ったお菓子を売る仕事もしてくれているんです」


にっこり微笑むステーラおば様。まるでお孫さんを見ているかのよう。やはり、お菓子は人魔を繋ぐ架け橋なのだろう。



と、ステーラおば様はポンと手を打った。


「さ! ではお菓子作り教室に戻りましょう。皆さんを待たせてはいけませんからね」



そうだった。では、私も社長も…腕前の披露と行こう。









「パイ生地を伸ばしましたら、型に綺麗に詰めまして…。そうそう、お上手です。では、少し休ませましょう。その時間は魔法で短縮しますね」


「パイを焼く時は、膨らみ過ぎないようにこの重石を乗せまして…。オーブンに入れましょう。良い感じになったら、ミミックの子が取り出して調整してくれますからご安心を!」


「では、フィリングを作りましょう。皆さん、作りたいパイの材料は揃っておりますか? 足りなければ横のミミックの子達に申し付けくださいな。急がず焦らず、愛情込めて作っていきましょう」



ヘンゼルくん、グレーテルちゃん、ステーラおば様。三人揃ってすいすいと教示を進めていく。素晴らしい速度である。



我が社の子達を色んな形で活用してくれているし、ヘンゼルくん達は魔法まで使えている。流石はお菓子の魔女の弟子。



おっと、見惚れている場合ではない。私も講師役として頑張らなければ。…って。


「なにしてるんだろ…社長」





またしても社長、何かしている。 別の机で。


だけど、味見しているといわけではない。幾人かの生徒達に囲まれ、チョコペンやジャムペンを振るっている。



私に割り振られた生徒達への指示を出し終わり、様子を窺いに行ってみると…。




「こんな感じー?」


「わぁー! 可愛い! 先生、絵うまっ! ミミックって凄いんだ~!」


「あのー、私のはハートマークの中に『大好き』って書いて欲しいのですけど…」


「それは自分で書いた方が気持ちいいわよ~。手取り足取り…もとい触手取りで教えてあげるわ」




そんな会話が聞こえてきた。なるほど、パイの上にお絵描きをしているらしい。手の幾本もの触手にし、色んな絵や文字を描いたり教えたりしている。


そうか。そういうのもあるんだ。私も魔法でやってみよう。 ……ん?





「あのー…社長? この長方形のパイ、なんですかこれ?」


あまりにも気になった物があったため、思わず問うてみる。すると社長は平然と答えた。


「それ? ラズベリーのパイよ?」


「えぇ…?」


あぁ、確かにラズベリージャムの香りがするし、赤いのも見えている。…のだけど、見た目の大半が緑色。抹茶のようだが…。いや、それよりも奇妙なのが―。


「なんかトゲトゲしているというか…チョコとかアラザンとか使ってるのはわかるんですけど、明らかに食べにくい形状ですが…」


変な接続口?みたいなのもあるし、なんというのだろう…精密な部品のような…。これって確か…。


「ラティッカさん達がたまーに持ってる『基盤』?とかいうのに見えますね…」


そう言うと、やっぱり社長は平然と。



「そーよ。 言ったじゃない。ラズベリーパイのラズベリーパイよ、それ」



……??? ちょっと何言ってるのかわからない……。












気づけばお客さんも減り、私達のお手伝いもそろそろ幕引き。ふー…!疲れた…!



「そういえば、ラティッカさん達は今日なんで来なかったんですかね。まあそもそも、皆さん食べる専門ではありますが…」


ふと思い出し、横で伸びをしながら余ったクリームを舐めている社長に問う。実は今回、我が社の施設『箱工房』に勤めるドワーフの面々が来ていないのだ。


まあ彼女達、技の繊細さは素晴らしいのだけど…確かにお菓子作りが得意な人達ではない。素材のグラム計量はしっかりやるのに、砂糖のグラム計量はとんでもなく雑、といえばわかりやすいか。



「あ、それね。ちょっと私がお願いしたことがあるから、そっちやってもらってるのよ」


「お願いしたこと? なんですか?」


「ふふー、それはね…。 …あら?」


と、社長。突然にどこかへと駆けていく。追いかけようとしたけど、待っていてと言われてしまった。



一体何を…? そう思ってステーラおば様達と待っていると―。




「お待たせー!」


と、社長の声。そして、彼女に手を引かれていたのは―。


「…ぇっ…! あ、あの……う…その…」



……おや? 内気そうな女の子……。









―――――――――――――――――――――――――――――――――


全てが終わり、帰社後。貰ったチョコレートを使い、私達はとあるものを作成していた。それは…。



「「「わぁ……!チョコの噴水!!」」」



歓声を上げるミミック達。そう、これは超巨大なチョコレートファウンテン。高さ10メートルはある代物である。


食堂の屋根を一時的に大きく広げて設置した幾段もの装置には、どぽどぽとチョコレートが巡っている。まさに圧巻の一言。





どうやら社長、ラティッカさん達にこれを作ってもらっていたらしい。しっかりと噴水のようにライオンの口…もとい宝箱の噴出口が各箇所にある。なんともえげつないものを…。



そして貰って来た他のお菓子や、用意していた果物類を用い皆でチョコパ。美味しいから幾らでも入ってしまう。…鼻血にだけ気をつけなければ。



中には猛者もおり、チョコを自分の箱に掬ってチョコ風呂にしている子や、噴出口から直接箱の中に入れてる子も。


勿論ステーラおば様達に新しいお菓子の箱を作ってもらった子も多く、それにつけて食べている子もいる。完全にやりたい放題。



多分最後には、皆のチョコ風呂となるのだろう。そして全部食べ切る流れ。明日には綺麗に無くなっていると見た。


社長のダイエット特別コースに引っかかる子がいないと良いけど…。





……ところで、社長どこいったんだろう。







チョコレートファウンテンを設置し稼働確認後、ラティッカさん達数名を連れどこかに消えていってしまったのだ。


折角、社長用のプレゼントチョコ作ったのに…。社長の箱を模した、両手サイズの蓋つきチョコ…。カラフルな模様を描くのは、魔法でも苦心した。


因みに蓋を開けると、苺チョコプリンが入ってる。社長の髪色のピンクに合わせた形である。




ん―…このまま来ないなら、冷蔵庫仕舞っておかないと。溶けちゃうし…。 


―あ、戻って来た。



「社長、どこ行ってたんですか?」


「えへへ…内緒ー。 あ!それ私に?」


「えぇ! ハッピーバレンタイン!」


早速、プレゼントチョコを渡す。社長はラッピングリボンをシュルシュル外し―。


「わー! 私の箱じゃない!  お、蓋が開く…! ピンクなプリンだー!」


百点満点の反応。作った甲斐があった…!


「有難うアスト! とっとくわね!」


「いや食べてください…!」


チョコなんだから、食べてもらわないと。下手すれば一年保存しそうだから困る。







ラティッカさん達にもハンマーを模したチョコをプレゼント。皆喜んでくれた。 すると―。



「じゃあ、私達からもチョコのプレゼント!」


社長が言うが早いか、ラティッカさん達は食堂の入り口へ。何かをゴロゴロ引っ張って…き…て…。



……な…!!!?





台に乗って来たのは、私の…形の…!チョコの等身大像…?! スーツ姿で若干艶めかしいポージングとってるし、何故か胸とかにリボン巻かれてるし…!!!


え…いつの間に…!? いや、どうやって…!? 




そんな私の混乱を察したらしく、社長は胸を張った。


「ふふん! 私よ? アストの体つきなんて、よーーく知ってるわ!」


…その発言はなんか危ないんじゃ…。そうツッコむ前に、彼女はてへりと笑った。


「なんてね。アストが寝ている間に、チョコチョコ採寸してたの。それで型を作って貰って、チョコ入れて…あとはラティッカ達と一緒に細部を整えて完成!」




なるほど、突然にいなくなったのはこのチョコのためだったらしい。…しかし、よくできている…。羽とか尻尾とか、絶妙なバランスでくっついている。まつ毛とか、見事な細さ。


流石は社長とラティッカさん達。 …多分これはお菓子ではなく、彫刻扱いなのだろう。だからラティッカさん達の繊細技が光っている。




……そしてすっごくツッコミ辛いのだが…。 どう口にするべきが悩んでいると、社長が先に首を捻ってくれた。


「…で。これ、どうしましょ?」


「……ですよね…」



これこそとっておきたい気持ちはあるが…。正直恥ずかしさもある。早めになんとか食べちゃいたい。でも、流石に私だけでは…。






結局、みんなで分けることに。チョコとはいえ自分が砕かれ、食べられている姿を見るのは妙な気分。いや面白くはあるのだけど。



「アスト、明日も楽しみね~。上手くいくと良いけど…」


と、私のあげたチョコと、私の胸部分 (もちろんチョコの)を齧りながら呟く社長。なんでわざわざそこをチョイスしたのかというツッコミはとりあえず放棄して、と。



一体何が、上手くいく…? あぁ! わかった!


「あの内気な女の子のことですね。 信じましょう、『告白』の成功を!」

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