顧客リスト№39 『泉の女神の清泉ダンジョン』
魔物側 社長秘書アストの日誌
突然だが、皆様方は『泉の女神様』を御存じだろうか? 昔話の一つである。
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ある日の森の中、とある木こりが仕事に精をだしていた。しかしある時手が滑り、振っていた斧がすっぽ抜けてしまう。
くるりくるりと飛んでいく斧は、偶然にも近くにあった泉の中にバシャン。きこりは慌てて覗き込むも、その泉は美しく澄んでいるわりに底が見えないほど深かった。
商売道具を無くし、失意にくれる木こり。しかしその瞬間、奇跡が起こった。
『貴方が落としたのは、この金の斧デスか? それとも銀の斧デスか?』
泉のように清らかな声と共に姿を現したのは、二振りの斧を手にした女性…そう、女神様だったのだ。
しかし奇妙なことに、その斧は金製と銀製。まるで貴族が趣味で飾るような、けばけばしい物。
対して木こりが使っていたのは、実用的な鉄の斧。全く違う物だというのは一目瞭然。
そこで木こりは正直に伝えた。『女神様、お住まいを荒らしてしまい申し訳ございません。ですが、私が落としたのは鉄の斧なのです』
嘘をつき金の斧や銀の斧を貰い売れば、たちまち鉄の斧何本分にもなるであろう。それでも、木こりは誠実さを選んだのである。
その正しき心に胸打たれた女神様は、木こりに拾って来た鉄の斧に加え、金の斧と銀の斧をプレゼントしたという―。
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『金の斧、銀の斧』というタイトルでも伝わっているお話である。正直でいれば良いことが訪れるという教訓が籠っている内容だが…。
その『泉の女神様』、実在するのだ。
ここはその女神様がおわしめす、『清泉ダンジョン』。お話通り、綺麗な森が広がっている。
鳥や小動物の軽やかな声が時折耳を撫で、暖かな木漏れ日が周囲を照らす。…ただ、ちょっとおかしなものもあるけど…一旦置いておこう。
そして、このダンジョンの最奥にあるのが透き通った小さな泉。水面は日光に照らされキラキラと美しく輝く。
まさにお伽噺に出てくるような、心安らぐ風景。女神様の棲み処となるのも頷けてしまう。
きっと女神様の容姿も美しく、天真爛漫な方なのだろう。…そう思っていたのだけど…。
「うぅウ…もう嫌デース…。揃いも揃ってェ…。お酒ないとやってられないデース…!」
…本当にこの方が…、私達の目の前で、泉の端に突っ伏すようにして管を巻いているこの方が、あの『泉の女神様』なのだろうか…???
コホン…。失礼なことを思ってしまった。いや、彼女は間違いなく泉の女神様である。
銀糸のような滑らかな長髪の先は金に染まっており、泉の水以上に煌めいている。美しい肢体に纏うは袖の無い純白のキトン。よく神様が纏っているあの服である。
そして頭には月桂樹の冠。そもそも彼女からは、厳かなるオーラが放たれている。老若男女誰が見ても、女神様だとわかる見た目なのだ。
それに、能力を見せてもらった。女神様が手にしているのは水筒…社長が持参してきたものなのだが、元の中身は水で、一本しかなかった。
それが今や三本に増えている。しかもそのうち二本には、赤ワインと白ワインが入っている。
…察した方もいるだろう。女神様の頼みにより水筒を泉の中に落とし、あの手筈…女神の力で増やしたというわけだ。で、増やしたご本人がガブガブ飲んでいるのである。
…あえてもう一度言おう。彼女…『ヘルメーヌ』様は、れっきとした女神様である。…ですよね…?
「―それでェ…人間の冒険者達がネェ…酷いんデス…! ゴブリン達の方が数倍礼儀があるんデース…!!」
「あらー。そうなんですか。どんな感じにですか?」
「ゴブリン達は知っていて落とした物をえらぶのデスが、しっかりお礼言って帰っていくんデース…。でも、冒険者はお礼一つ言わず、しかも『もっと良い物くれよ』と吐き捨てていくんデスよォ!!」
社長に抱きつき、ワンワンと泣きながら訴えるヘルメーヌ様。泣き上戸だったご様子。
そして社長はそんな彼女をよしよしと撫でている。これじゃどっちが女神だか…。
まあでも、ヘルメーヌ様のお気持ちもわかる。そりゃ泣いてしまうでしょう、と思えるほど酷い仕打ちを受けているのだから。
先程、森の様子でちょっと言い淀んだことがある。それを改めて説明しよう。
単純に言えば、『不法投棄』。こんな森林浴が気持ち良い森の中に、ゴミを捨てていく人がいるのだ。
しかし、それはただのゴミではない。武器、回復アイテム、装備、空の宝箱…などなど。ある程度の統一性はあるものの、量が妙なのだ。
業者が大量に捨てていったには少なめだし、個人が捨てていくには多すぎる。当然と言えば当然だが、その全てがボロボロだったり、古臭かったり、消費期限が過ぎてたり。
そして極めつけなのが…濡れている物が多い。または、濡れていた形跡が窺える物ばかりなのである。
ここでお分かりになった方は賢い。ではその答え合わせ…の前に、泉の女神様…『金の斧、銀の斧』のお話の続きを語らせていただこう。
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正直者の木こりの話を聞きつけ、泉の女神様の元に別の木こりが駆け付けた。そして、木を切ることもなく、手にしていた鉄の斧を泉へと投げ込んだのだ。
『貴方が落としたのは、この金の斧デスか? それとも銀の斧デスか?』
正直者の木こりの時と同じように、女神様は斧を手に現れる。と、その木こりは叫んだ。
『えぇ!その金の斧です! 私が落としたのです!』
涎を垂らすかのように、食い気味なその台詞。そう、その木こりは嘘をついたのだ。先に来た正直者とは違い、彼は欲張りだったのである。
その回答を聞いた女神様の答えは、こうだった。
『…嘘つきには、あげる斧はおろか返す斧すらありまセン!お帰りクダサーイ!』
ピシャリと言い放ち、泉の中に消え去る女神様。後には茫然と立ちすくむ哀れな木こりだけが残されたのだった―。
―――――
とまあ、こんなところである。…まあその木こりも、『欲望に正直者』ではあったのだろうけど。
―なんて、笑い話ではないのだ。その『欲望に正直者』達が悪さをしているのである。
このお話を聞いたことがある人の中には、少なからずこう思った方もいるだろう。
『じゃあ問われたその時だけ本当のことを言って、貴重な方も貰ってしまえばいいじゃないか』
と―。そう、そこが肝なのだ。
泉の女神ヘルメーヌ様はとても心優しき方。初めて会った私ですら、少しお話させて頂いただけでそれがわかるほどに。
だから、ここに来た人々が古ぼけた道具や空の宝箱をわざと泉に投げ込んでも、よりランクの高い道具や宝物がいっぱいに詰まった宝箱にして現れる。
そして落とし主が心に嘘をついているのを承知で、その高価な品をあげてしまっているのだ。
可哀そうに、この場の噂が広まるにつれ訪ねてくる人は増え、凄い時には行列すらできるほど。でもそれを無視できないのが女神様。中には本当に困って訪ねてくる人もいるらしいし…。
そのせいでヘルメーヌ様は力を使い過ぎ、心底疲れてしまっているのだ。女神の尊厳を保てないほどには。全く…げに恐ろしきや人の欲。
…え? 不法投棄の謎がまだ話されてない? それは失礼をば。
でも、単純な話である。ここに来る悪賢い冒険者になった気分で考えてみて欲しい。
来る時はボロな道具や箱一つ。しかし、帰りは女神様によって二つ増やしてもらい、最初の三倍。
いや、中身が詰まっていたりするからもっと行くだろう。その分、重量とかも割り増しである。
さて、そうなると持ち帰るのが大変だ。なんとかして減らさないと。例えば、なにか要らないものを。それこそ、泉の底に失くしても構わないような…。
…もうおわかりだろう。冒険者達は、ヘルメーヌ様から返してもらったボロ道具を森の中に投棄していっているのだ。泉から離れた位置に。
それが不法投棄の真相。本当、酷い話である。女神様が泣くのも致し方なし。
「…それで、本当に宜しいのですね?私達ミミックが介入して」
「勿論デース…。私自ら手を下すことはできまセンから…」
泣き腫らした目のまま、本物の水筒の水をコクリコクリ飲みようやく落ち着くヘルメーヌ様。
あぁ、気づけばワイン入り水筒二つとも空になってるし…。そこそこ大きい水筒なのだけど…。
「では、契約書にサインを。 …はい、OKです!悪ーい冒険者を仕留めるため、尽力させて頂きますね!」
「お願いしマース…!」
契約書を受理した社長に向け、ヘルメーヌ様はギュッと両手を合わせ、祈るような仕草。女神様が誰かに祈るような行動をするのは奇妙だが、それだけ辛い状況だという事でもあろう。
女神様をここまで悲しませたのだ、冒険者達にはしっかり報いを受けてもらうとしよう。
清らかな泉には、清らかな者だけが訪れる。そんな風にするために。
「―で、その時アストがですね、酔っぱらって私に抱き着いてきちゃって!」
「アラ!まるでさっきの私みたいデース! でもミミン社長の包容力なら、納得デース!」
契約は終わったからと、社長達はその場で酒盛り開始。いくらダンジョンを一時閉鎖しているとはいえ、まだ昼なのだが…。
加えて、楽しそうな声を聞きつけた森の動物達が集まり、本当にお伽噺のような様子に。
ワイン入り水筒も気づけば増やされ、今やひーふーみー…10本は開いている。やりたい放題か。
と、そんな折。ヘルメーヌ様に向け、社長がある意味禁断の問いかけをした。
「ところでヘルメーヌ様! 斧とかお宝とかは増やせるみたいですけど、人とかは増やせるのですか?」
いや何その質問…。呆れる私を余所に、ヘルメーヌ様はにっこり頷いた。
「えぇ、一応できマスよ! でも、やったこともやる気もありまセン!」
「ありゃー、ちょっと残念。それが出来たら…」
「分身2人に任せて、自分はぐうたらしようと考えてマスね?」
「あははー…流石女神様、お見通しですか」
「皆考えることデスから。けど、そんなことをしたらドッペルゲンガーの如く互いに精神崩壊するだけデース」
酔っぱらった顔のまま、さらりと恐ろしい事を口にするヘルメーヌ様。とはいえ、その通りだろう。
自分が三人に増えたら、誰が本物か確実に喧嘩になる。しかも内2人は本物よりも立派な可能性が高い。となると、まず最初に狂ってしまうのは本物である自分自身の可能性が一番高いはずである。
でも…社長が三人か…。案外うまくやっていきそうな気が…しなくもない…?結局上手くローテーション組んで仕事しそうかも…?
…いや、その分朝の寝ぼけゴネだったり、事あるごとのセクハ…もといちょっかいだったりの奔放さが三倍に……まあそれぐらいなら…寧ろありかも…?
―ううん。やっぱり駄目。社長の抱っこ搬送が問題だ。三つ同時に持つなんてことすれば、絶対前見えなくなるし落としそうだし。
だけど…どんな社長になるかが気になりはする…。そんな私の内心を察したわけではないだろうが、ヘルメーヌ様は微笑んだ。
「ですガ、『泉に投げ込まれた人の、理想な姿のビジョン』はお見せできマスよ?」
「「え! ほんとですか!?」」
私と社長、同時に食いつく。見たい…!!それ絶対見たい…!!!
「フフッ。では、ちょっと待ってくだサイね…」
そう言いながら、ヘルメーヌ様はちゃぽんと泉の中に姿を消す。その数秒後―。
カッ!
突如、泉の水が強く輝く。揺蕩う光はレースのカーテンのように揺れ、木漏れ日をより際立たせた。
そして直後、ゆっくりと姿を見せたのは―。
「さぁ、準備が出来まシタ! どちらからでも構いまセンよ?」
先ほどまで赤ら顔が完全に消え失せ、女神のように天真爛漫な笑顔を浮かべるヘルメーヌ様がそこに。……あ、そうだ女神だった。
「はいはーい!! 私からでお願いしまーす!」
真っ先に手をあげる社長。ヘルメーヌ様はハーイ!と同じような元気で返し、私の方を見た。
「ではアストさん。私が泉に消えた後に、ミミン社長を放り込んでくだサーイ!」
「え、わかりました」
あ。やっぱ投げ込まなければ駄目なんだ。ヘルメーヌ様がちゃぷんと消えたことを確認してと…。
「じゃあ社長、行きますよ~! それっ!」
「ひゃっほー!」
バシャァンッ!
一際大きな水飛沫。そしてまたまた数秒後…。
カッ!
泉が輝き、ヘルメーヌ様が姿を現す。自身の横に、2人のミミックを従えて。
「貴方が落としたのは、こちらの『わがままボディを欲しいままにするエロティック社長』デスか?それとも、こちらの『仕事をバリバリこなす、知的で格好いいCEO的社長』デスか?」
ヘルメーヌ様にそう紹介された2人のミミックは、確かにミミン社長らしさがしっかり残っている。残っているんだけど…。
片や、明らかに丈が合っていない、白くスケスケで、胸やお尻がギリギリ隠れるぐらいのネグリジェだけを着て投げキッスをしてくる蠱惑的な社長。
箱に跨るようにしているその姿は、僅かに動いただけでボンキュッボンな肢体が零れだしそうなほど。いやむしろ、自分からクイっと見せようとしているのだからタチが悪い…!
片や、宝箱をオフィスチェア代わりに書類の束と万年筆を手にしているのは凛とした雰囲気の社長。体つきもエロティック社長ほどではないにしろ、しっかりとした大人な体型である。
その服装、薄グレーのピシッとしたパンツスーツ。しかし胸元はある程度はだけ、見せブラをお洒落に着こなしている。かけていた眼鏡を外し、さらりと髪をかきあげる仕草にドキッとしてしまった。
「…これって、どうやって選ばれたんですか…?」
湧き上がる気持ちを理性で無理やり封じ込め、私はヘルメーヌ様に問う。すると返ってきた回答は…。
「投げ込まれた人と、投げ込んだ人の想いの良いトコどりデース! 要はアストさんとミミン社長、お二人の妄想の具現化デスね!」
…とのこと。う、うーむ…。確かに、凄い…。ゴクリ…。
ハッ! いやいや。やっぱり社長は今のままが一番である。うん! そう心を決めた私だったが…一つ悪戯心を起こしてしまった。
「…つかぬことをお聞きしますが、これ、どちらかを選んだら…?」
「アラ、選んじゃうんデス? ならば…全部ボッシュートになりマース!」
テレッテレッテー♪と口ずさみながら泉へと沈んでいくヘルメーヌ様。社長の分身も手を振り消えていく…!
いやちょっ…!冗談ですから、冗談ですから…!!
「もー。私が戻ってこられなくなるとこだったじゃないの!」
正しいのを選び、戻ってきた社長はちょっとぷりぷり。そんな彼女のご機嫌を取りながら乾かしてあげる。
まあそりゃそうである。欲を出したら全没収、それはお話の中にも明確に描かれているのだから。
最も、ヘルメーヌ様はケラケラ笑っているから、本気でやる気はなかったのだろうけども…。
「さ、次はアストの番よ?」
「え。私もですか…?」
「そりゃそうよ。私の理想体?を見たんだから、アストのも…見せなさいな!」
「ひゃあっ!?」
有無を言わさない勢いで私を掴み、泉の中へと放り込む社長。バシャンと水の中に…。
「…ん? わ…!」
泉の中、普通に呼吸が出来る。水面を見上げれば、覗き込む社長の顔がはっきりと。
「ではアストさん。行きますヨー…えいッ!」
気づけば真横にいたヘルメーヌ様が、私のおでこをちょんと突く。すると、私の身体から光が漏れ、分身。人型となり、ヘルメーヌ様と共に水面へと上がっていった。
どんな姿になっているのだろう…。分厚いローブを纏い、片眼鏡をかけ魔法陣を幾つも浮かべる大魔導士姿とか…!
そうワクワクしていた思いは、ヘルメーヌ様の紹介で一瞬に打ち砕かれた。
「貴方が落としたのは、こちらの『サキュバス族になって社長を虜にしようとする小悪魔アスト』デスか?それともこちらの『ミミックになって、社長と並んで過ごしたい可愛いアスト』デスか?」
……ん?……え??……は???
な、何その二択…!? 『大魔導士アスト』じゃないの…!?!?
水面に浮かぶ私の分身、それは水中からでもしっかりと見えた。
片方は悪魔族の角こそそのままだが、羽根の内はまっピンクに染まり、尻尾の先は穴の開いたハート型に。確かにそれは悪魔族の一種、サキュバス族に見られる特徴。
加えて…その服が…、先程のエロティック社長を凌ぐHさ…。身体を包むのは服ではなく、もはや紐。それが恥部と、お腹周りを僅かにクロスしているだけ。
若干胸のとこは太いものの、数ミリぐらいの差…てかあれ、見えてない…!?端っこ見えてない…!?
そして、下半身のほうだけども…うぅ…あんまり口にしたくない…。…えっぐいほどに小さく、両鼠径部が完璧に見えている…。お尻の方は、完全にお肉に挟まれて紐見えなくなってるし…。
なのに、足は太ももまでしっかりとタイツ。透けてるけど。見事なまでのサキュバス服…。
そしてもう片方。私がミミックになっているみたい。社長が今入っている宝箱と同じ物に、ちょこんと入っている。
ただ、悪魔族の特徴である角羽根尻尾は完全に無くなっている。代わりにミミックの能力は備えているらしく、手を触手にしたり、箱の中に身を潜めたりしている。
また、触手でハートマーク描いたりとサキュバスの私に頑張って対抗している感じが…なんだろう、自分の姿なのにやけにいじらしい…。
というかあれ、若干子供っぽくない…? 私の小さいころにそっくり…。社長と同じ幼女体型な気が…。
…いやというか、なんで片方必ずH系なの!?
…いや…はい……正直に言います…。あの分身の姿、想像したことない…わけじゃない。寧ろ、「こうなったら良いなぁ」と思ったことは幾度かあるのは事実…。
だから…それだけに…すっっっっっっっっっごく恥ずかしい!! 社長、早く選んでください…!正しい方を…私を…!!
「ほぉぉぉぉう…。これは…どっちもとんでもなく魅力的ね…!!」
えぇっ!? 社長、そんな…!! …いや、私もさっき同じこと思ってたし…。うぅ…何も言えない…。
「このアスト、両方とも欲しいです!」
ええええっ!? ちょ、ちょっと社長…! ―あ!まさかさっきの仕返し…!まだ怒ってた…!
「良いデース! あげちゃいマース!」
…は はぁぁぁぁぁっ!?!?!? ヘルメーヌ様!さっきと言ってること違うじゃないですか!うわっ!社長も喜んでるし…!!
酷い酷い酷すぎる!! 怒ってやる…!社長のむにむにほっぺ、千切れるほど抓ってやる…!!
そう力強く意気込み、泳いで泉の水面へ。バシャリと顔を出した瞬間―!
ギュルッ!
「ひゃっ!?」
飛んできたのは社長の触手。その力強さに抵抗できず引きずり出され、行き着いた先は…。
「むぎゅっ…」
社長の胸。つまり抱きしめられた形に。
「ヘルメーヌ様、やっぱり止めまーす! 私はこのアストが一番大切ですから!」
「ハーイ! わっかりマシター!!」
…へ? そんな社長ヘルメーヌ様の声に、私は無理やり顔を動かす。すると、ヘルメーヌ様はにんまり笑い、私の分身達はやれやれと肩を竦めていた。
…………してやられた。弄ばれた…!!!
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