眩しくて、溶けそう。

もちこ

第1話 大好きだった君

「あ!慎くんおはよう。」


「、、陽心、おはよう。」


家を出ると向かいの家から同じタイミングで出てきた陽心が挨拶をしてきた。


嬉しかったが好きな女の子が見慣れない格好をしているのが少し嫌だった。


中学生になった陽心は登校する服は私服から制服になり、ツインテールがポニーテールになっていた。


小学6年の俺は、中学生になった陽心を見て自分と陽心にはとてつもなく大きな距離があるように感じていた。


それでも陽心は変わらず一緒に遊んだり、絵を描いてる俺を隣で楽しそうに見てくれていた。


でもたまに見る中学の制服に身を包んだ彼女の姿はすごく大人っぽく見えて俺の手の届かない場所に行ってしまったんだと思い怖くなった。


一緒に登校したり下校したり遊んでた女の子は違う場所に行ってしまったんだと改めて思った。


ずっとその悩みが頭から離れずもやもやしていたが、やっと中学生になれて晴れて陽心と同じ場所に立つことができた。


本当に嬉しくて、嬉しくて、舞い上がって、自分の気持ちを抑えきれなくて、入学してその春に告白した。


今思えば恥ずかしいくらい若くて痛々しくて見ていられない程だった。


嬉しさと勢いに任せて、自分の気持ちをぶつけるなんて。


「あ、いたいた〜!慎くん探したよ〜」


「お、おう。」


「入学おめでとう。ほら!あっちで一緒に写真撮ろう!圭介も待ってるよ!」


「あ、あの、、、陽心!」


「ん?どうしたの?」


入学式の終わりに陽心を見た途端その気持ちは溢れ出してきた。


「あの、俺、、、、陽心のことが好きだ!」


「!!」


「ずっと好きだった。だから、、、俺と付き合ってほしい!これからもずっとそばにいたいんだ。」


陽心は驚いた表情になったあと少し照れながら、申し訳なさそうに言った。


「慎くん、、、えっと、あの、、ありがとう。」


「うん、、、。」


「、、、、でもごめん、そんな風に見てなかったから、、その、、、付き合うっていうのは難しいかな、、。ごめんね。」


「、、、あ、、うん。いや俺こそ急にごめん、、。」


「あの、、、でも!慎くんのことは大好きで、、その、ライクの方なんだけど、、、あの、、それでも、、もしよかったらこれからも仲良くしてほしい、、。」


その言葉に少しだけ安堵した。


俺が変に突っ走ってしまったからこれから陽心と気まずくなってしまうんじゃないかと今更ながらに思ったから。


「ああ!陽心とずっと仲良くいれるなら俺はそれでいい。ありがとう。」


「え!いやいやお礼を言うのは私の方だよ!私を好きになってくれてありがとう。は〜〜よかった、変わらず楽しく話したりしたかったから。」


そう笑顔で言ってくれたのが嬉しかった。


この時の俺はまだ付き合って何するとか全然考えていなかったし、想像もできずにいたから付き合えないことにそれほどショックではなかった。陽心がそばにいてくれることが、離れていかないことが、すごく安心できた。


でも陽心は俺が中学2年になってその年の夏くらいから、俺に対しての態度が変わってしまった。


「陽心、おはよう。」


「、、、おはよう。」


「、、どうした?なんか元気ない?」


「別に、慎くんには関係ないよ。」


「なんだよ、怒ってるのか?」


「怒ってないよ。、、、ていうか家近いから朝会うのは仕方ないけどさ、もう見つけたからってあんまり話しかけないでくれるかな。いちいち対応するの面倒なんだよね。」


「え、、??」


「幼なじみだからってずっと仲良くしないといけないわけじゃないでしょ。もうそういうのも嫌でさ。」


「、、、なんだよそれ。俺なんかしたか?」


「別にそういうことじゃなくて。」


「じゃあなんでそんなこと言うんだよ。、、、俺は陽心と」


「なんだっていいでしょ。もう一緒に話したり出かけたりそういうのしたくないって言ってるの。じゃあそういうことだから。」


「え、おい!陽心!、、、」


この後から話しかけても何をしても陽心の素っ気ない態度は続いた。


なんでだよ。


俺が告白したから?


だから嫌いになった?


普通にしてたのは全部嘘だったのか?


なんなんだよ。


これからも仲良くって言ったのに。


離れていかないと思ったのに。







ジリリリリリ!!!


「、、、ん゛〜〜、、。うるせえ、、」


目覚ましの爆音が鳴り響いて眠くだるい体を起こしてそのうるさい音を止めた。


だるい体を再びベットに横たわせる。


「あー、、嫌な夢見たな、、」


思い出したくない記憶なのにたまに夢に出てくることに腹が立つ。


今も鮮明に覚えている夢を打ち消すように思いっきり起き上がり、洗面所に行って顔を洗った。

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