4―7
ピンク色はかつての地球で栽培されていた果物にちなんで桃色とも呼ぶらしい。だから私はこのジウ体型の護送対象を仮にモモちゃんと呼ぶ事にした。
……ほんと社長ったら護送対象の名前くらい教えてほしい。時間さえあれば社長みたいな単純な名づけにしないのに。まぁ、本来であれば冬眠ポッドの状態で依頼人に引き渡すはずだったわけで、これは私達の過失なのだけど。
「……」
モモちゃんはまだ声が出せないのかその意思を表情や仕草で訴えてくる。ジウはそれが何を意味するのか〈パターンが足りないから翻訳できません〉と分からないでいるけど、不思議と私にはそれが分かってしまう。とりわけ瞳を見ればテレパシーみたいにバッチリモモちゃんが言いたい事を理解できるのだ。
「そうだね、ここまで来れば確かに誰も追いかけてはこないだろうけど……ジウ! 大丈夫?」
〈まあ……上下の移動もメイドの仕事に含まれているので問題はありませんが……〉
私達は一斉に下を見た。そこに広がるのは宇宙空間と見まがうほどの暗黒空間。上下に伸びるパイプやワイヤーの群れが林立し、時折箱状の物体や機材が通り過ぎる上下運動の世界。私達は今、宇宙港と惑星を繋ぐ軌道エレベーターの支柱の空洞の中にいた。
騒ぎが大きくなり、私達はモモちゃんを失わせないために必死に走っていた。けれどあれだけ派手にやらかした私達が中央エレベーターに正面から入れる訳が無く、次々と現れる警備を避けるために路地裏から人気のない場所へと闇雲に逃げるしか無かった。
ジウが持つ宇宙港の知識をもってしても、警備の方が私達の行動に対して先手を打ち、このままだと上層に行けないどころかじわりじわりと追い詰められてしまうのではないかと諦めていた。そんな時だった。
「……」
モモちゃんは「床下からなら堂々と行ける」と案を出したのだった。確かに宇宙港の地面はいわゆる地面では無く人工物。建物の床下はエネルギー供給のための配管がうねる広大な地下になっている訳で、そこからなら誰にも邪魔されずに動ける。
そしてモモちゃんは騒ぎのどさくさに紛れて入手した宇宙服に身を包むと、適当な床板を壊して地下へと入っていった。あまりに自然な動作だったから思わず固まっちゃったけど、床板の破壊は私でも素手じゃ難しい。宇宙港ともなれば構造物の構築はその辺の宇宙戦艦よりも堅牢で私の眼をもってしてもウィークポイントを探すことが出来ない。それをモモちゃんはまるでプレゼントのラッピングを剥がすようにあっけなく床下を破壊してしまったのだ。
「モモちゃん凄いね。並列化で多くの宇宙港のデータを持っているジウよりもここの事を知っているんだ。どこで知ったの?」
「……」分からない。見ればそれが何なのか、どう壊せばいいのか浮かんでくるから。
「寝起きでいきなり動いてさ、疲れない? ああ、それと……ごめんね、ポッド壊しちゃって。こんな騒がしい事に巻き込んじゃって。家族のところでゆっくり目覚めたかったよね」
「……」問題ない。体力も筋力も常人のそれを超えるように設計されている。この程度の上下運動は苦労の一つにも入らない。姉も私を好きに使うといい。
「姉って……私別にモモちゃんのお姉ちゃんじゃないんだけどなぁ。まあ、モモちゃんが呼びたいならやぶさかではないけど♪ でも『使う』って言葉は良くないよ。モモちゃんはお客様で道具なんかじゃないんだから。そりゃあまあ、今はお金持ちの遺産相続に巻き込まれているからそういうふうに言えなくも……無いのかな? ジウはどう思う?」
〈思うもなにも、私にはウェンズデイと仮称モモ様の間のコミュニケーションが理解できません〉
やっぱり数時間程度じゃジウにはパターン不足で私達の会話が理解できないらしい。でも、この子の独特の癖を解析すれば私達が何を護送しているのか、戦力としてどのくらい私達の助けになるのか理解できるし、コミュニケーションは私達が協力して目的地に行くための団結力向上の手助けになる。何よりも上層に行くためにワイヤーを登り続けるのは単調で退屈で仕方がない。私はくだらない会話を含めてモモちゃんとの会話を続けて、その内容をジウに全部フィードバックさせた。
〈……あくまで仮の話ではありますがモモ様の正体についての案が出ました〉
ジウはヘッドセットを点滅させると情報を整理し、私達に向けて通信を飛ばし始める。
〈おそらく、モモ様の正体はバイオロイドです〉
「バイオロイド⁉」
「……」
ジウの予想に対してモモちゃんは無言だった。どうやら「自分が何をできるのか」については本能的に知っているけど「自分が何者なのか」については本当に知らないみたいだ。
宇宙開拓時代で向上した技術はMaiDreamシリーズがそうであるように宇宙船やそれに関わるものだけじゃない。
生命工学技術もそのうちの一つ。地球の縛りから抜け出した惑星企業国家はクローニングや遺伝子操作によってテラフォーミング先の惑星の環境に適応した生物を放牧させたり、営業所においてある回復カプセルの超回復技術に、培養臓器なんかも生み出して行っては医療技術の発展に貢献したりした。そのおかげで人類は宇宙と言う過酷な環境でも健康を維持し、負傷してもすぐに回復できるまでになった。
ところが、利益を上げる事に関しては血眼になり、お金の亡者になる惑星企業国家が総じて禁じた技術がある。それこそがジウが予測したバイオロイドだ。
低酸素活動でも、放射性汚染環境下でもダメージを受けず、常人では根をあげる作業量も軽々とこなし、複雑な問題に直面しても機械よりも柔軟に答えを導き出してはあらゆる任務を成功させる究極の奴隷。
テラフォーミング技術が未熟だった頃、惑星開発は人の手で行われる作業が少なく無く、その発展には多くの犠牲が伴った。当然資本家であれば人件費を削りたいし、事業の犠牲者が増えればそれは企業の名前に傷をつける事になる。それゆえに万能な労働者を創り上げる事は企業にとっての悲願であったのだ。
それゆえに惑星企業国家たちは互いの垣根を超えて超党派でバイオロイド開発研究に打ち込んだ……のだけど実験は失敗に終わったらしい。フィクションでありがちな話なのだけど、生まれたバイオロイドたちは「なぜ優れた自分たちが性能で劣る人間に従わなければならないのだ」と反旗を翻して惑星企業国家と戦争を起こしたらしい。バイオロイドの反乱は惑星企業国家にとって相当にトラウマらしく、各惑星で偏っている教科書には珍しくバイオロイドに関する黒歴史についてはそのすべてに詳細に事件について記載がある。
中には人間に懐くバイオロイドもいたそうだけど、結局彼らの能力を制御する事を断念した惑星企業国家群はおびただしい犠牲を払いつつ、宇宙からバイオロイドを一掃した。それ以来宇宙では慣習として人間を超える生命体を生み出す研究が禁止される事になった。
「エタニティ財閥は惑星企業国家の中でも最古参の一つ。だったら……」
〈予測なので点数はあげられませんが……モモ様はその可能性が高いということです〉
ジウのヘッドセットが暗色を中心に不規則な点滅を続ける。これは相当悩んでいる時のパターンだ。いや機械が悩むだなんてと思うかもしれないけど、そんなの私だって悩む。
一線から身を引いたとはいえ、エタニティ財閥の最長老がバイオロイドを娘として迎える。こんなことが知れ渡れば大スキャンダルだし、仮にスキャンダルをもみ消したとしても、人間の能力じゃ殺そうとしても死なないバイオロイドが後継者として出馬したら……他の候補者に勝ち目はない。対立候補はそれぞれの利害の対立を超えて、モモちゃんが依頼主の下にたどり着くのを阻止する事は必至。だとすれば追手のやり口がプロそのものであるのも納得だ。
「だとしても……モモちゃんの外見って趣味が過ぎない? ピンクの地毛に、天使体型。ミスターエタニティってロリコンさんだったの?」
流石にモモちゃんの気分を害するかなって、私は秘匿回線でジウと通信する。
〈何をおっしゃるウェンズデイ。天使体型こそ全人類共通の理想、パーフェクトボディです。MaiDreamシリーズをごらんなさい。我々こそ、少女性の極限だと言っていいのです〉
「……」
駄目だ、話し相手を間違えた。ジウは自分の設計者の哲学に忠実に作られている。それに関わる事を言っても肯定的な意見しか返ってこない。
MaiDreamシリーズが地球圏を中心に禁止された理由が分かる気がする。人間、あまりに趣味な物を目にするとなんかこう……いけないことをしている気分になるのかもしれない。
〈まあ、冗談は置いておいて〉
「冗談なの?」
〈話の腰を折ると言う意味では。
真面目な話をすると、外見に極端な要素が備わっているのはおそらくバイオロイドである事を一目で識別するためでしょうね。普通過ぎる外見で人間社会に紛れてしまえば追跡は難しいです。我々のFox Tailと同じように管理しやすい特徴を付与されているのでしょう〉
方やアンドロイド、方やバイオロイド。ハード面で機械か培養肉を使っているだけで両者の哲学は驚くほど似ている。結局外見をどれだけ人間に近づけても、求められているのは「道具」であること。その一点だ。
「だとすると……」
ますますミスターエタニティが何を考えているのか分からない……。そんな危ない存在を娘として迎える。リスクを冒して? ママ……社長もこのことを知っている? どうして何も教えてくれないまま私達を……いやそれは私達を信頼してくれている証で――
「……」着いた。
モモちゃんが私に仕草で伝える。私はモモちゃんの勘をジウに翻訳して、現在地がサマートランスポートの営業所の立地と一致するかを確かめた。その結果はドンピシャ、目の前の鉄板一枚を押し上げればそこはバックヤード。貨物に紛れてこの宇宙港を脱出できる。
「……行くよ」
〈ええ〉
「……」うん。
戦闘能力はモモちゃんの方が高いのだろうけど、彼女はあくまで護送対象。切り込み隊長は私の役目。持っている武器は堅さだけが取り柄の玄武だけだけど、私だって格闘の自信はある。一思いに、一気に出れば、待ち伏せも怖くない!
「はあっ!」
「おわっ! げ、玄武⁉」
「……」〈……〉「……」
相手の事だから営業所を占拠していると疑っていたけど、そんな事は無かった。目の前に広がるのはうちの会社の当たり前の日常。ジウの姉妹たちが忙しなく荷物を運搬して、それを管理職員が監視する内勤の仕事風景だ。
「え⁉ 航路開拓部の職員がなんで、床下⁉」
「ごめんなさい! 実はかくかくしかじかで――」
私は極秘任務である事を管理職のお兄さんに手短に伝えた。私にも分からないことだらけで正直ちゃんと説明出来た気がしないけど、世の中には機械的に処理した方が良い事もあるみたいで、私がタブレットに権限を表示した途端にお兄さんは事態を飲み込んでくれた。
「その計算分のワープでいいのであれば……ここも監視されている可能性があるから次の便を待っていたら危ないな……。よし分かった! 緊急用のシャトルを使おう。装備は最低限しかないけど、遅滞対応用にかなりのスピードが出るように調整されている。ウチのメカニックが改造を施しているから、それなら並みの輩が相手でも振り切れるはずだ」
「ありがとうございます」
〈協力、感謝します〉
こうして私達は目論見通り宇宙船を手に入れることが出来た。早速コックピットに乗り込むとジウは接続を始めて急ピッチでセッティングを構築し始める。死亡偽装はもうとっくにばれている。多分宇宙港には相手の船が周回していて、出港した瞬間にドカン、の可能性が高い。ゆえに、私達が取るべき戦略は宇宙港を出た瞬間にワープだ。ここからはミリ単位の繊細な作業が要求される。ジウは今メモリーに入っている目的地と惑星エリスの位置を計算し、亜空間が安定する抜群のタイミングを計算している。
〈……今です!〉
十分に暖機を済ませたシャトルは勢いよく宇宙港を飛び出し、続いてワープ空間を開いては飛び込んで行った。シャトルは人工物から眩いライトブルーの中を順調に進んでゆく。色々と危ない目に遭ったけど、これでようやく一仕事終えられそう……。
「……!」
最初に異変を感じ取ったのはモモちゃんだった。続いて、宇宙船そのものになっているジウがヘッドセットを警戒色に変化させて――
〈そんなバカな……ワープ空間に外側から干渉……このパターンはまさか……惑星ホノールの〉
「……て事は⁉」
ジウが異常をモニターに映してくれた事で私達の中で確信が芽生えた。本来一瞬で通過するはずのワープ空間で不自由に状況。これはワープゲートの事故の時と一致している。
ダイバーⅡを使ったおかげで私の眼はワープ空間の濃淡を識別できるようになっている。ワープ機関で作ったライトブルーの中に少しだけ暗色の点が発生、それが徐々に大きくなるとシャトルは制御を失ってそちらへ引き込まれていく。
「くっ……」
今回はホノールの時と違って海に落下する事は無かった。代わりに現れたのは視界を埋め尽くさんばかりの戦闘用シャトルの群れ。
〈この宙域は目的地ではありません。総勢三〇機……そのうち十機にダイバーⅡと似たパターンが検出されています。おそらく、相手はこうなる事を予測して、私達を一本釣りに……〉
ダイバーの技術はどこから来たのかまだ得体のしれない物だし、別段エタニティ財閥の関係者が持っていても不思議じゃない。何だったらママがダイバーを解析するのに募った出資者の中に彼らが入っていてもおかしくは無いのだ。
今回の任務は完全に相手のスケールが大きすぎる。ここまで後手に回ってしまうと……私達二人でどうにかなる相手じゃない。
「ジウ……十機がダイバー持ちって事は、敵は実際には二十機って事でいいんだよね」
〈あるいはワープを阻む十機を撃墜すれば道は開けるかもしれません〉
「……」〈……〉
「サブマスター・ウェンズデイの権限によってコードAを宣言! 緊急時につき人類への攻撃を許可する!」
〈……コードA受領!〉
ワープを封じられ、私達が乗っている船には最低限の武器しか無い。状況は最悪と言っていい。それでも……私達はサマートランスポートが誇るロケット野郎。どんな困難も破壊して来たレッキングシスターズだ! 私とジウがいれば誰が相手だろうと絶対に倒す!
それに――
「……!」
私はモモちゃんと座席を交代する。モモちゃんは操縦桿を手に取ると慣れた手つきでシャトルを操作し始める。シャトルはあっという間に相手の一機に肉薄してウィークポイントに一撃、撃墜した。
大切な護送対象を戦闘に参加させるのは職業倫理的に心苦しいけど、モモちゃんは私達二人よりも戦闘のスキルに優れている。ここまで来たら一蓮托生だ。シャトルでの戦闘を任せられるのであればこんなに心強い事は無い。
〈予測演算を始めます! モモ様!〉
誰かが操縦に集中すればその分ジウの作業容量に空きが出来る。ジウはモモちゃんに相手に様々な戦闘パターンを打ち出してはそれをモニターに表示する。それを私は読み取って、最適な選択をモモちゃんにテレパシーで伝える。火事場の何とやら、不思議なことに私とモモちゃんとの間のテレパシーはもう、目を合わさなくても考えを頭に浮かべるだけで成立していた。モモちゃんがキャノピーに、私がモニターに、お互いの視界を共有して私達は順調に敵を撃墜してゆく。
「「十六……十五……十四……」」
いける! この調子なら私達は間違いなく敵を殲滅することができる!
「「……二十三⁉」」
おかしい……カウンターは減少する一方のはず……それなのに、モニターに表示される熱源の量が増えている⁉
「………………な――」
私達は恐る恐るキャノピーから戦況を確認した。一面の暗黒空間を埋め尽くすように青い点がポツポツと打たれると、それはライトブルーのトンネル大に広がり、中からは戦闘機が。
ダイバーⅡの爆発に、エリスの宇宙港での一件で私達はどうやら彼らを本気にさせてしまったみたいだ。目視だけで軽く五十機を超える軍勢。これが宇宙海賊相手だったら、せめて敵が戦艦なりで一カ所に集まっているならまだ戦いようがある。けれど十分な戦力を分散されたら兵装に限界がある私達との間の兵力差は才能ではもう埋められない……。
「……ッ」
帰りたい。
モモちゃんの声が頭に届く。驚くほど無表情で、機械のように真っ直ぐ動いて来た堅牢と言う言葉が似合う女の子。そんな彼女の声が震えている。
「……ジウ」
〈……ええ、まだやれます〉
「だからモモちゃん。大丈夫」
私は操縦桿を握るモモちゃんの手をそっと包んだ。そうだ、どんなに人並み外れた能力を持っていても、この子は親を求める子供。そんな彼女の前で諦めてしまったら先達としての面目が立たないじゃないか! 私達は何だ! サマートランスポートのレッキングシスターズ、あらゆる困難を破壊してきた名物社員じゃないか!
正直推進剤も兵装も底をつきかけているけど、諦めるものか。絶対に――
「この子を家族の下に届けてみせる!」
「よく言った! それでこそ我が娘!」
「……⁉」
スピーカーから耳慣れた声が反響する。この声は……まさか……。
〈後方に多数の空間のひずみが発生! 識別コードは……弊社の航路開拓部です!〉
後部カメラの映像をモニターに表示する。するとそこにはワープゲートを彷彿させる巨大な青いトンネルが広がり、その中から一〇〇〇メートル級の高速宇宙戦艦「
「アンタたちようやく尻尾を出してくれたな。宇宙の果てから果てへと探すのに苦労したけど、レッキングシスターズってエサにまぁ見事に食らいついてくれて今までの地道な苦労が何だったんだって話だよ。でもこれでもう逃がさないぞ!」
この任務の後にママから聞いた話によるとエタニティ財閥は過去に兵器製造で身を立ててきた経緯があり、今でも一部の過激派がその地盤を引き継いでいたらしい。
そんな彼らが今最も力を入れているのがダイバーを代表とするワープ航法に関わる技術だった。バイオロイドに代表されるように表立った強力な兵器を製造することが良しとされないこの時代に彼らは既存の技術で一見すると兵器に見えない次世代の武器を作ろうと発想を転換させた。例えば長時間ワープ空間に潜航する技術があれば、奇襲と撤退を効率よく行えるようになる。亜空間に干渉して他者のワープ空間を操作して――例えばワープゲートを操れば宇宙船を一度に大量に人質にしたり、私達みたいに移動先を固定されて戦場に誘い込む事も出来たりとその用途は非常に柔軟だ。
そして、私達がダイバーⅡを爆発させたように、ワープ機関そのものを爆弾にすることで――正確には爆発を引き起こすのではなくて亜空間に干渉して空間ごと対象を圧縮するらしい――ワープ中の事故として相手を抹殺させる事も。
過激派は相続争いもそうだけど、私達がダイバーⅡを臨界爆発させたことでサマートランスポートが彼らが極秘に目指していた「亜空間爆弾」にたどり着いたのだと錯覚したらしく、身バレのリスクを押してでも証拠である私達を抹殺しようとしていたのだ。
「ウチの社員をここまでひどい目に遭わせたんだ。これは正当防衛って事で、襲わせてもらうぜ!」
セリフだけで言うなら完全にママが海賊サイド。だけど、いくら相手が宙域に権力を広げている惑星企業国家の重鎮だからって現場を押さえられてはたまらない。加えて航路開拓部は宇宙開拓時代の混沌期からのたたき上げ。こちらもダイバーを展開して相手がワープで逃げるのを防ぎ、鮮やかな狙撃で敵機のコックピットのみを残して無力化しては敵兵を収容してゆく。
一対多数だった戦況はママの登場によってあっという間にひっくり返された。推進剤を切らした私達のシャトルはいつの間にか宙を漂い、ママが乗る高速戦艦の中に格納さされる。
格納庫に収容されたことで張りつめていた気がやっと緩み、考える余裕が出来た。キャノピーを開けてくれたママの顔が視界に入ると私はため息と一緒に――
「私達を囮にした‼」
と、毒づくので精いっぱいだった。
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