3―5

「……」

 目の前には六十頭くらいのあのサルの群れが川の源流となっている湖の湖畔で睡眠を取っていた。どうやら彼らはの暑い内はここで涼をとっているみたいだ。

 その気になれば夜でも戦えないことは無い。ショーンさんみたいにスクラップの山から武器を拝借して(これはお客さんの積荷じゃないから略奪にはあたらない)掃討戦を仕掛ければタメを張れる。

 けど、背負ったジウ同様に現代の兵器には常に電子制御が施されていてそれこそ昨日のレイガンみたいに暴発しかねない。ママの部隊ならアナログな実弾兵器もあるのだろうけど、通常の星間運送業社なら護身用にレイガンかヒートガンがセオリー。今は不安定な文明の利器には頼れない。

 でも、文明の知恵であれば材料さえあれば使い放題だ――

「――ッ!」

 私は手に持った火炎瓶に火を点けるとそのまま群れの中心へと投げ込んだ。

 ズドン! とど派手な音を立てて湖畔が焼け焦げる。スクラップの山の宇宙船の推進剤を燃料にしたせいか威力は想像以上。ざっと二十頭は始末できた。

「約四十……」

 その後も手あたり次第群れが密集している箇所に火炎瓶を投げ込んだ。彼らは寝込みを襲われるのは初めてなのか、それとも襲う側としての地位を確立してきたからなのか、動きが鈍い。その数はあっという間に十頭程度に減った。

 だけどその残った十頭が厄介な事にデキる奴で、頭を睡眠から戦闘に切り替えると投擲パターンを予測して私の方へと真っ直ぐ向かって来た。むき出しの牙に、振り上げられた鋭い爪。確かにこれが夜中であれば危なかったかもしれない。

「九」

「⁈ グゲッ――」

 私はスクラップの破片を使って作った槍を数本、サルたちに向かって投擲した。穂は船の破片の中でも飛びぬけて鋭い奴を採用している。これと私の目と筋力が合わされば致命傷をお見舞いできる。

「二!」

 ギャギャー! と一際大きな叫び声をあげて二匹は湖の奥、森のさらなる深みへと逃げていく。

 助けを呼びに行ったのか、それとも開けた場所だと不利だから自分たちにとって有利なフィールドに誘い込もうとしているのか……。

「上等じゃん……」

 私は残りの手造り武器をこれまたスクラップから拝借して来たドラム型のショルダーバッグに押し込んで駆け出した。

 こうなったら徹底抗戦だ。私が生き残るか、それともサル達か。エメラルドグリーンの瞳はもうバッチリに彼らの壊し方を把握している。昼間の内であれば、ジウみたいに素手で解体できる自信がある。

「ああ――――――――――‼」

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