第二話 抜刀!!!!

 「ほらよ!お前があまりにうるせーから白パン履いてやったぞ!」


 華が浴衣の下の部分を思い切りめくって純白パンツを翔に見せつける。


 「女がそんなもん見せるな!」

 

 「なんかお前、そうゆうとこが女々しいっつーか」

 

 「うるせぇー!恥ってもんがお前には無いのかよ!しかもお前女だろーが!」

 

 「女は裸でいちゃわりぃってのかよ!」


 「男だって、流石にパンツくらい履くわ!」


 「華姉さん。脱いでも良いけど見せつけるのははしたないわ」


 鈴が言う。


 「鈴さん、何か違うような…」


 「で!お前にも何かあるんだろう!」


 華が話を遮るようにデカい声で話す。


 「何って何が…」


 「能力だよ。お前の能力。あんた、確か、時計の家紋を掲げた家系の産まれだった

  よな。7代目未来予知太郎の息子の…。ってことはだ、あんたが引き継げば八代

  目ってことになる。そこまで能力を引き継いだあんたの力はおそらく、七代目の

  それを超えるってことだよな。」


 各々が持つ能力は代を重ねる毎に強くなる。前の代で難しいとされていたことが次の代ではすでに子供の内から出来るというのは最早どの能力者にとっても当たり前のことであった。


 勿論、経験が伴わない分には「強力」とまではいかないが。


 「見せて見な。あんたの力。」

 

 ザァッと風がその場を流れる。その間、二人ともまるで動かなかった。


 「出し惜しみかい。なんならこっちからいくよ!」


 と華が言い放った瞬間、華の姿がその場から消えた。次の瞬間には翔の後ろにぴったりと華がくっついていた。


 「おっと、動いてみな。一瞬でも動いたら、私の刀が…」


 「姉さん。切りつけちゃ駄目よ」


 「分かってるよ!ちゃんと鞘に納めてるって!」


 刀…? そんなものあったか…?


 翔が一瞬たじろぐ


 「さぁ、見せて見なよ…あんたの力を…!」


 翔にはさっぱり何が何だか分からなかったが、とりあえず華の体から自分の体を離そうと動こうとした。瞬間、背中に何か棒のようなものが当ったような感覚に襲われた。


 「動くなっていったろ?」


 なんだ…?


 「「何か」に当たっている…?」

 

 「そうさ。これが私の力。「音をも超える速さ」と、「見えない刀」。あんたにこ

  れが攻略できるかい?」

 

 「なるほど、見えない刀、ね、自分から能力についてベラベラ話すとは余程の自信

  家なんだな!だけど、俺の方が速いみたいだぜ。」


 そう言うと、翔は一瞬の内に消え華の後ろに回った。

 

 「そんな!?今何が!?」 

 

 「何がって?これが俺の「力」だってこと」


 「ほぉ、ちょっとはやるようじゃん!だったら、これはどう!?」


 華がまた消える。次の瞬間、翔の周りを三人の華が囲んでいた。

  

 「速さってのは質量を持つ残像すら生み出せるのさ!」

 

 華が得意げに話す。

 

 「さぁどうする!」

 

 次の瞬間、華は首の後ろから強烈な一撃を喰らった。


 「かはっ?!な、なに!」


 「俺には関係ないみたいだぜ。もう終わりか?」

 

 一体、何が?華には自分の身に何が起きているのか分からなかった。


 「くそっ!」

 

 そう言いながら、華は瞬時に後ろに向けて鞘に入っている刀を思い切り突き出した


 「ぐえっ」

 

 翔は何かに腹を押されそのまま後ろに吹っ飛んだ。


 「……?…そうか…あんた、私は見えてるけど刀は見えて無いみたいだね!」


 「いや、まぁそうなんだけどね…」


 翔が頬をポリポリ掻く。


 「だけど、私はそれよりも速さが自慢なんだ!あんたが何の能力者かは知らない

  が、「速さ」で勝たなきゃこの勝負意味が無いのさ!だから…脱ぐ!!!!!」


 そういうと華は身にまとっているものを全て脱ぎ捨てた。


 「は?」

 

 翔はまたポカンと口を開けた。


 「さぁ、あんたにこれが見破れるかな?」


 完全に生まれたままの姿の華が腰に差してある刀を抜き取るような姿勢を見せる。

 

 「それはダメよ。華姉さん。彼、死んじゃうわ。だってそれ「抜く」技でしょう」


 鈴がボソボソと呟く。

 

 「いや、なんか良くわかんねーけど。そ、そこまでマジになることはねぇだろ」


 翔が焦ったように言う。


 「マジだから真剣勝負は楽しいのさ…いくよ」

 

 華の顔が一瞬邪悪に歪む。

 

 「ダメって言ってるでしょ華姉さん」


 鈴の声は華の耳に入っていなかった。


 「抜刀!!!!!!」


 次の瞬間だった。後ろに思い切り吹き飛ばされたこと以外、翔には何が起きたか分からなかった。だが、目の前に白い何かがある。

 

 なんだこれ……。翔はそれを手で触った。白く、柔らかい何か。桃のような…


 「ねぇ、積極的なのは良いけど、女の子には優しくするものよ」


 鈴の声が響く。そして、翔は自分が何を掴んでいるのかハッキリ理解し、慌てて手を離した。


 「ごごごごごごごっつ、ごめん!」


 翔が触ったのは裸の鈴のおしりだった。


 「それと、姉さん。一般人にその技は使っちゃ駄目よ。彼、死ぬとこだったの

  よ?」


 「……」

 

 華はその場で黙り込んだ。


 「ごめんなさいね。姉さんそういうとこあるから。でも、貴方、見破れてはいなか

  ったみたいね。」


 確かにそうだ…俺が見破れないなんてことあるわけが無い。あるとすれば、それは「時空を超えた何か」だ…だが、速度が時空を超えるなんてことあるか…時間軸に存

在しない速さなんて…


 「てか…ごごごごごごめん!その、え、てか何で鈴さんまで裸なの!?」


 「脱いだ姉さんの速さに唯一対抗出来るのは、脱いだ時の私の速さだけよ。」


 「だげど!お前には持久力が無いもん!私の方が凄いもん!」


 華が喚く。


 「そうよ。だからもう今はそれを使わないでね。姉さん。」


 「わ、わわわわかったわよ!でも!あんただって見破れなかったでしょ!私の速

  さ!」


 翔は、あまりの華の子供ぽさに正直、げんなりした。しかし、見破れなかったのは本当である。


 「あぁ、凄かったよ。正直マジで。その見破…その…」


 華が翔の方をじぃと睨む。


 「見破れなかったよ。」


 翔がため息まじりで言うと、華は満面の笑みを見せた。


 「がはははは!そうでしょう!そうでしょう!まぁ、まぁまぁお前もすごかった

  ぜ!まぁまぁな!」


 腰に手を当て有頂天に華が笑う。


 「もちろん私の方が凄いけど!!!!」


 その後、思い切り翔の方を睨み付けながら言い放った。


 あーあ、そうですか、と翔は心でひっそり思った。


 「ごめんなさいね。姉さんそういうとこあるから」


 「いや、はぁ、まぁとりあえず、二人共服をきてくれぇぇぇぇぇぇえええええ

  え!!!!!」

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