第14話 テッドと呪いの祝福。
服を煤まみれ、火の粉で穴だらけにした上に水でビチャビチャにしたテッドとリリオはくしゃみをしながら街まで戻ってきた。
「う~、風邪ひく~…」
「大丈夫か?」
「大丈夫?そんな訳あるか!今すぐ服を買うわよ!」
そんな訳でテッドとリリオは街で洋服を買う事にした。
店に入って元の服と顔付きなどを見てもらい同程度の装備に身を固める。
30エェンで上下の服が揃う。
下着や靴なども含めると35エェンだった。
「くそ〜、今日の稼ぎが…」
リリオはそう言って悔しそうにするが、午後の首狩り蟷螂の巣の除去でも推定だが350エェン前後の報酬になるので損はないはずだ。
テッドはそれを指摘したがリリオは1エェンすら無駄にしたくないと怒っていた。
夕食でオプトは今日もテッドの活躍に目を輝かせて喜び、リリオの「子供なのよテッドは。水遊びや火遊びが好きなんて子供じゃない?」と言っていた。
オプトはそれに困った声を出しながら笑った後で新しい服がよく似合っていると話していた。
「明日は神父様が来ますね。鑑定をして貰ってその後はまたクエストですか?」
オプトは本当に嬉しそうにテッドに確認をする。
テッドはその姿を見ながらこんな日がこの先も続くのかと漠然とだが思い始めていた。
「テッドさん。貴方を拘束します」
朝、教会に赴いたテッド達にシスターのネイはそう言うと僧侶達が周りを囲む。
テッドの新しい祝福を聞きたくて同伴したオプトは目を丸くする。
「何故だ?ネイにはそんな権利があるのか?」
「あります。今日赴任予定だった神父は私です」
ネイは自身が神父であると伝えると厳しい目でテッドを見る。
「何でですか!?」
オプトがネイに詰め寄る。
「オプト様ですね。はじめまして、ネイです。
これが終わったら改めてご挨拶をさせてください。
私は昨日テッドさんを鑑定しました。彼にはあり得ないほどの祝福を授かっていました。
それは神話の英雄達が授かっていた祝福。
僧に確認をしたところテッドさんのライトソードはオレンジ色と黄色。
オレンジ色は公開されていない神話の英雄。
チィト様の兄上、その最愛の女性が振るう剣。
言い伝えでは奇跡の少女が振るう赤のライトソードより切れ味の強い黄色のライトソードを合わせる事でオレンジ色の刀身を作り出しチィト様を御守りしたのです」
「神話の祝福…テッドさん凄い!それなのになんで拘束なんて?」
「そこまでなら私達も丁重にもてなしをさせていただきました。
ですがテッドさんの祝福はそれだけではありませんでした。
全ての祝福を知るはずの我々も知らない祝福…いえ、文言から察するに呪いを授かっていました。
それ故に拘束をさせていただきます」
「そんな!」
オプトは先程までとは一転愕然とする。
「更にオプト様のお見立て通り、始まりの地で生まれたプラスタであれば本来なら神に導かれてサルディニスに来るのにそれもなく名前程度のことしかわからない。
それにしても問題です。
神々に連絡は取りました。
全ては神に委ねたいと思います」
そう言うと語気の荒かったオプトも力なく俯く事しか出来なくなる。
「テッドさん。このまま拘束をさせていただきますね」
「わかった。だが少しだけいいか?」
「まずは昨日の報酬を鑑定してリリオに金を支払ってやってくれ」
「え?はぁ…それは」
そう言うとネイはテッドを鑑定する。
キチンと巣の除去は済んでいてビッグ首狩り蟷螂と首狩り蟷螂を合わせて48匹倒していたので348エェンの報酬をテッドとリリオは受け取る事が出来た。
この状況で仲間を気遣う優しさにネイは驚いていた。
「次だ、俺の祝福を全て教えてくれないか?
未知の呪われた祝福と言うものも含めてだ」
テッドはとにかく自分に起きている状況を知りたかった。
「ですが、ここにはオプト様とリリオさんが居ます」
「構わない。オプトは俺を保護してくれていて、リリオは俺をマネジメントしているらしいからな」
「わかりました。
テッドさんがご存知なのは、
ライトソード、ライトシールド、ソードマスター
五属性のエレメントで計8個。
ここまでですね?」
「そうだ」
「更にチィト様の兄上の祝福、五属性のエレメントソード。治療。時操作高速化。
奇跡の少女の祝福、バトルマスター。
短距離瞬間移動。
料理上手。
ここまでが祝福だと思います。
次が呪われた祝福です。
生命犠牲強化。
恐らく命を使う事で高威力の祝福を実現するための祝福だと思います。
そして最後、大罪の祝福です。
これの意味する所を私には測りかねています。
神殺し。
私は呪われた祝福、大罪の祝福を理由にテッドさんを拘束する事にしました」
そう、ネイはテッドについて悩んでいた。
仮に人の身で18もの祝福を授かった才能溢れる存在であれば神が遣わした新たな英雄、そしてこのサルディニスに危機が迫っていていてテッドこそが世界を救い導くと思えるのだ。
だが同時に呪われた祝福、生命犠牲強化に疑問を持った。
名前の通り命を削る事で祝福の効果や身体能力を向上させるなら、短期で兵器として運用するのならこれ以上ない祝福だ。
だがイィト様やジィマ様、あのお優しいチィト様がそんな事をする訳がない。
ネイは何かの間違いだと思った。
3年に一度の神事で神父以上の能力がある者は皆神への謁見が許される。
神父と言う制度のために女性のネイはシスター以上になれないがキチンと能力を評価されて謁見を許された。
その時にネイはチィトと話をした。
チィトはネイの不満や心配事。サルディニスの今後について話をした。
実際は10分以上話をしたのだがチィトはネイの熱心さから時間制御を行なって規定の時間だけで済むようにしてくれていた。
後でその事を知ったネイはチィトの優しさに心打たれていた。
そして最後の神殺し。
これもまた神話の祝福かも知れない。
現にチィト様の兄上達は神と戦う力を修練で身につけている。
だがどうしてもネイの不安は消えなかったのだ。
「そうか。わかった。抵抗しない」
そう言ってテッドは抵抗なくその場に立つとオプトとリリオに「済まない」と言って背を向ける。
「テッドさん…」
「テッド…」
「テッドさん、ありがとうございます」
ネイがテッドの手を取って「感謝します」と言った所でネイに声が聞こえた。
「ネイ、今から行きます」
「チィト様!?」
そして光と共にテッド達の目の前に1人の少女が降り立つ。
「皆さん、はじめまして。ネイは久しぶり。
私は調停神チィト」
少女は自身を神と名乗った。
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