第7話 テッドと神話。
朝、窓から差し込む光が清々しい1日を告げている。
だがまだ寝ていたテッドはうなされている。
「おい!何やってんだよテッド?
返事しろよ!
もしかし…失…か?
くそ……ッドじゃな……ッドか?……れ…も…キメ…か?」
昨日聞こえた声、テッドの名前を告げた声が聞こえてくるが悪態をつくその声を聞くと酷く不安に…そして不愉快になる。
「お前は誰だ!」
テッドが目を覚ますと一瞬状況が理解できずに居たがすぐにオプトの屋敷にいる事がわかった。
「夢か?」
そう思おうとしたのだが頭痛が夢ではない事を思い知らせてくる。
「お客様?」
ノックと共に入ってきたメイドがテッドを心配する。
「驚かせて済まない」
「いえ、朝食の支度が整いました。
旦那様ともう1人のお客様がお待ちです」
そう言ってメイドは去って行く。
テッドは顔を洗うと食堂に行く。
「おはようございますテッドさん。よく眠れましたか?」
「おはよー、テッド」
食堂で先に待っていた2人が声をかけてきてテッドは返事をする。
そして着席をすると朝食が始まる。
テッドはそもそもクエストに行きたかったのだが昨日の夕ご飯の時にオプトから「世界について先に学んでみませんか?今のままだと世界について知らないことばかりでテッドさんも困られると思いますよ?」と言われ、リリオからも「そうだね。魔物の名前はまだしも国の名前とか祝福の事とか知らないと危ないよね」と言われてしまう。
テッドも少し打ち解けてきたからかリリオに「リリオはどうなんだ?」と言い返す。
「私は平気だよ、
困っていると街の人たちとかが色々声をかけてくれるんだ。
街の名前からお金に困った時にはクエストの受け方とかオススメのクエストとか宿屋の場所なんかも教えてくれるんだ」
これについてはリリオのいない所でオプトから「リリオさんはプレイヤーなのでスタッフは基本的にフォローをする決まりになっているんです」と教えられた。
「テッドさん、とりあえず朝は教会にある神話を聞いたり祝福について書物を読んだりしませんか?リリオさんはどうですか?」
「私はクエスト行くよ。まだ瓦礫除去のクエストがあると思うしね。早く宿屋に直って貰わないと困るしさ。ほら、こんな可愛い子が一つ屋根の下に居ると大変でしょ?」
「…はぁ」
「オプト、リリオは可愛いのか?
リリオが居るとオプトは大変なのか?」
困惑するオプトにテッドが確認をする。
「テッド、いい根性してるわね?」
「何がだ、俺は目鼻立ちの基準がわからない。リリオの評価が一般的なのか妄言の類なのか知りたい」
「普通よ普通。悪かったわね」
「いや、悪くない。
リリオは普通。
ありがとう。ひとつ知れた」
テッドが真面目な顔でそう言うとリリオはため息をつきながらオプトを見る。
オプトは笑いながらリリオを見る。
「リリオさん。
うちは部屋もありますから宿屋が直るまでの滞在なら問題ありませんよ」
「ありがとうオプト君。
だからって一日中遊んでいるわけにもいかないから何か仕事するよ」
食後に屋敷と庭を見回すオプトに付き合って家のチェックをするとオプトは「僕の日課なんです。家のチェックをしないと落ち着かなくて」と言って自嘲気味に笑う。
そこには両親との思い出を確認して回る悲しげな笑顔があった。
街や教会は夜通しで瓦礫除去や遺体の埋葬が進められたようで昨日よりも片付いていた。
教会に着くとリリオは「クエスト受けるよー」と僧侶に話しかけて「後でねー」と言って去って行く。
その間にオプトが僧侶に「テッドさんに神話を読ませてあげたいんです」と言って教会の奥に通された。
「テッドさん、これに神話が記されています」
そう言って一冊の本が渡された。
テッドは言われるがままに本を読み進める。
不思議と文字は読めたし単語は理解できた。
本の中身は創造神イィトが始まりの地を作り、自身を見失った装飾神ジィマがイィトに助けを求めて始まりの地で暴れる所から始まる。
ジィマ自身が始まりの地を去る時に6人の使いを用意し自身の代わりに暴れる事を命じ、始まりの地は壊滅の危機に晒される。
数十年後、イィトから力を授かった英雄達が始まりの地を救う。
英雄達の中には始まりの地の外、楽園から召喚された男も居て始まりの地で愛する人を見つけて子を授かる。楽園から召喚された男はイィトの力で楽園と始まりの地を行き来する事を許されて楽園でも家庭を持ち子を授かる。
再び始まりの地に戻ったジィマは世界が変わっていた事、その一因に楽園から召喚された男が関わっている事を知る。
その頃召喚された男はイィトの補佐として第一の地、第二の地と言う別の世界を2つ作っていた。
ジィマは第二の地に始まりの地で授かった子供と楽園で授かった子供を引き合わせる。
その楽園で授かった子供が後の調停神チィト。
チィトは人の身でイィトとジィマの抱える問題に気付き尽力をする中で神の力に覚醒する。
そしてチィトの活躍でイィトとジィマの問題を解決し、その後に3人でこのサルディニスを作る事になった。
創造神イィト、装飾神ジィマ、調停神チィト…
その名を読むとテッドの胸が痛む。
テッドはこの痛みの正体を知るために一日も早く神に会う必要があると思った。
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