自作解題

綾繁 忍

『変幻探偵カメレオナード 〜対決! 怪人二万面相〜』

※ネタバレありです


 本作は第二回こむら川小説大賞参加作品です。

https://kakuyomu.jp/user_events/1177354054900482535


 本作を思いついたきっかけは、参加企画のテーマであった「擬態」と、それとそのとき今更ながらアニメを見ていた「バクマン」の作中作「走れ!大発タント」の設定でした。こちらでは主人公の祖父が発明家という設定なのですが、「カメレオナード」は主人公? レオンの祖父が発明家で、擬態用に用いられるナノ粒子迷彩も祖父の形見、という形です。それだけです。


 ただ怪人二十面相のモデルであるアルセーヌ・ルパンはルパン三世の祖父だし、怪人二万面相の物語にも祖父要素が入ってきてもいいかなと思ってはいました。そういう「作者だけがほくそ笑む謎の納得」は結構大事にしたりしています。何かこう、言語化できないけど作品が総体として説得力を持っているのって、そういう細かい部分での共通解みたいなものがありそうな気がするんですよね。検証したことはもちろんありません。


 今回は少年漫画になりそうな小説を書こう、というのが個人的なテーマでして、それでどうしてミステリになるんだよというのはあるのですが、下敷きには『荒木飛呂彦の漫画術』にある「キャラクターが最も大事」「キャラクターを作り込んで困難な状況に放り込め」という教えがありました。なので今まで書いた中で珍しくキャラクターを先に考えて作った小説です。部屋の内装を一瞬にして粉々にする強化外骨格女子、書いててちょっと楽しかった。


 さて、本作の大ネタはもちろん「入れ替わり」です。しかし単なる入れ替わりじゃ使い古されている。「じゃあぐるっと回るようにしよう」と過剰な方に走るのが狂ったところかもしれません。


 以下、今作の入れ替わりを書いてみます。

・コノハの正体(研究所来訪時)→ヒメカ

・レオンの正体(美々栗邸来訪時)→コノハ

・コノハの正体(美々栗邸来訪時)→執事だったのを拉致して怪人二万面相

・怪人二万面相の正体(美々栗邸で大々的に登場した方)→レオン

・コノハの正体(最終話)→レオン


 はい。死ぬほどややこしい。Excelで管理しようかと思ったくらいにややこしい。上記の通りなので、本物のコノハは一度も出てきていません。


 ちなみに「開明探偵術研究所」なのでレオンのフルネームは「開明レオン」でカメレオン です。主要人物の名前はコノハカメレオン 、ヒメカメレオン 、ラボードカメレオン というカメレオン の品種名からそれぞれ取っています。これは「登場人物全員、正体が探偵役」みたいなアイディアを思いついていた時の名残りです。美々栗はもちろんmimicry(擬態)。


 なお突然出てきた感を生んでしまったヒメカ・ルディスですが、最初の「第0話 怪人二万面相登場」で怪人二万面相が盗んだのがジャック・ルディスの強化外骨格である、というのが一応の伏線です。伏線とネタバラシは距離が遠いほど良いとは言いますが、「それが覚えられている限りにおいて」というのを新たにラーニングしました…。


 以下はキャラ解説…ですが、入れ替わりがあるので書きづらい。本当の名前で記載します。


・レオン:

 変幻探偵というからにはこだわりの薄い性格、捉えどころのない性格にしようとしています。自我が薄い感じ。割と憧れる境地でもあります。合理的であれば感情的な問題はどうでもいい感じ。

 設定上は、本来は非常にこだわりの強い性格で、だからこそ発明の腕もメキメキ上達したものの、とある事件によりこだわりを捨てた、みたいな背景もありますがいつか語られるといいですね(他人事)。


・怪人二万面相:

 とりあえずクソデカにしよう、と思って20000になりました。増えたからには変装対象も増えるだろう、ということでホログラム発生装置が主武装に。レオンとは対照的にこだわりが強い性格をしています。


・ヒメカ:

 こちらも復讐や奪還という意味ではこだわりの強さを発揮していますし、それが結果的に憎む対象と同じレベルに堕してしまっている原因になっています。そして強化外骨格。大暴れ女子。


・ラボード警部:

 二面性のラボード。奇妙なキャラ造形にしてしまったものだと思いつつ、書いていて面白かったです。

 テーマが擬態なのでどのキャラクターにも表面上から受け取れる要素とは違う一面を付与しようと思っていましたが、ラボードはそれが一番わかりやすい形です。レオンは飄々としつつも合理的、怪人二万面相はスマートでありつつ裏ではこだわり屋、ヒメカは悪を憎みながら自分も悪を為す、みたいな。もう少し露骨に出したかったのですが、この人数でそれをやるなら短編ではありませんね……(遠い目)


 で。いざ書こうとすると、「AがBになりすまし、それを受けてBがCになりすます」って割と思考回路として謎なんですよね。なんで乗るんだよ。暴けよ。

 というわけで、「なぜそうするのか」という部分で変に頭を使ってしまいました。


 今回の教訓。

・伏線はネタバラシから遠いほどインパクトが大きくなるが、覚えておいてもらえるようにすべし

・主要登場人物4名は1万字短編には多い、本当に多い。設定にこだわるなら人数を減らして設定を語れる部分を作れ

・長編のスペックを持ち出すなら長編を書け、短編には短編の戦い方がある

・自分の考えた面白構造を実現することに躍起になるより、人が読んで面白いものを追求する方が健全では?


 最後に。

 主催のこむらさきさん、講評を下さった闇の評議員のみなさま、読んで下さった全てのみなさま、ありがとうございました!

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