第152話 カオス?なバカンス?
読者の方のご指摘でこちらの不手際で冒頭から途中切れていて訳の分からないストーリーになってました。
申し訳ございませんでした!
「パ、パスッス!クティスリーゼさん」
聖槍がネットより上へボールをトスする。
「無駄に致しませんわ!行きますわよぉ。ルゥちゃん、
高く飛び上がったクティスリーゼはボールを砂浜ではなくルティアへ狙い定めた。
「
クティスリーゼは破裂音の如き凄まじい音を鳴らす威力でスパイクを放った。
発言からして、おそらく、スパイクの威力がルティアへの愛の大きさを表しているのだろう。
ボールは頭を吹き飛ばしてしまいそうな勢いでルティアへと向かっていく。
危険極まりない愛情表現である。
「【癒し】避けろ」
「あ、はい」
ソリトの言葉に、ルティアは二歩分後ろに軽く跳び、回避した。
ビーチボールは対象を無くし、ズッドオオンと砂浜へと衝突し、高さ約三メートルもの砂の津波がルティアと聖剣の陣地を襲った。
「終了〜。14-16で勝者、天秤と聖槍ペア」
審判であるソリトは勝者のコールを宣言する。
しかし、クティスリーゼと聖槍から歓喜の声が上がらない。
「ぅ…ひぐっ…避けられ、ましたわ……私の愛……」
自分の愛を受け止めてくれなかった事に座り込み哀しむクティスリーゼ。その彼女を慰める聖槍という勝者とは反対の悲嘆の光景が生まれた。
あれからソリト達は、少し離れた所でビーチバレーをしているのを見て興味が湧いたドーラの提案でネットとボールを借りて遊ぶことになった。
接戦を繰り広げ、あと一点を取ればクティスリーゼと聖槍の勝ち、ルティアとドーラも負けまいと構えていたのだが、結果は試合に勝って人生の勝負には負けたクティスリーゼと聖槍ペアの勝利で終わった。
ちなみに、聖剣はソリトの後ろでシートに座り、荷物番をしながら観戦していた。
「だ、大丈夫ッス。クティスリーゼさんのあっあっあっ愛はしっかり伝わってる筈ッス……たぶん」
「ぐふっ……!」
最後に卑屈が裏目に出てクティスリーゼに追い打ちを掛けて血涙を流させる聖槍。
ソリトの顔はその光景に、我慢しろよ、と少し蔑む表情で語っていた。
そして、何を勘違いしたのか、視線に気が付いたクティスリーゼは彼の顔を捉えた瞬間、いつも変態的興奮を昂らせ始めると……
「躊躇いもなくルゥちゃんへの愛を外させる鬼畜プレイだけでなく、お前は馬鹿なのかとでも蔑むような表情……はぁはぁ……で、出来れば…時と場所を考えて欲しいですわ」
そんなことを恋する乙女の様な恥じらう顔と仕草で言った。
同時に苛立ちが頂点に達しプチッと切れたソリトは、不快そうに顔を歪め、冷めた目でクティスリーゼを睥睨しながら、魔法を唱える。
「〝ブラッドプリズン〟」
直後、血の鎖がクティスリーゼの身動きを封じる為に、胴体、両手首と足首を縛って海老反り状態で拘束した。
「あぁ!これが縛りプレイ!しかも、伝説の亀甲縛りですわ〜!あはぁ私、一体どんなお仕置きをされるんですの!」
自分でもどうやって複雑に縛ったのか驚きと困惑に襲われたまま、変態に発言を許す事に危険な予感がしたソリトは、やむを得ず、魔力弾でボロボロになっている黒シャツを脱ぎ、クティスリーゼの口を塞いだ。
「聖槍、その変態を監視しておけ」
「は、はいッス!」
打ち上げられた魚のように跳ねるクティスリーゼは一旦放置……出来るわけもない姿の為、進めた足を戻して穴を掘り、縛り寝かせた状態で顔だけを残して、砂の中に埋めた。
そして、クティスリーゼのスパイクの威力で砂に埋もれてしまったルティアとドーラを引き摺り出す。
「助かりました。ソリトさん、ありがとうございます」
「うぇ〜ぐぢのながきもぢわるいやよ」
感謝は要らない、とルティアに返事をしながら水分補給用に【魔力操作】で威力と速度調整をした初級水魔法で入れた水袋の口を開け、ドーラの口内の砂を洗い流した。
「それで、ソリトさんあれ、何なんですか?」
砂浜に埋められたクティスリーゼに反応に困った表情でソリトに訊ねる。
「ただの砂遊びだ。気にするな」
「それにしてはもがいてませんか?」
「気にするな。喜んでるだけ、だろ」
「………」
そう言った途端、ルティアが黙って見つめてきたので、ソリトは、なんだよ?、と少し困惑した面持ちで言う。
すると、ルティアは呆け気味な表情で口を開いた。
「いえ、普段口悪く堂々と言うソリトさんも歯切れ悪く言うんだなぁ、って」
「お前のそのサラッと吐く毒舌引っこ抜いやろうか?」
「死んじゃうじゃないですか。冗談キツイですよ、ソリトさん」
「ハハ…そうだな」
冗談っぽく笑みを溢しつつ、ソリトは初級拘束魔法〝アインス・アイシクルプリズン〟を【想像詠唱】で展開させ、ルティアの体を縛り……埋めた。
「え?…冷たっ!…うぇ!舌を掴むくらいはすると思ってたのにやられた!というかいつの間に埋めたんですか!?そもそもどうやって?」
「そこはこう、ズボッ?と」
「直立に埋めたんですの!?」
ソリトは左手で砂浜で表現し、右手でルティアを砂の中へ高速で入れる動きを再現して説明する。
「大まかな説明で何故疑問なんですか!?速度的に私死んでも可笑しくないのに!」
「弟子哀れ」
「無表情で言わんといて師匠!」
「はぁ…埋めるなら、埋めるなら
「ルティアお姉ちゃん引っこ抜くやよ!」
やる気に満ちたポーズを取って、ドーラはルティアの顎に手を掛ける。
「私は野菜ですか……」
「ニュアンスだけだとドーラちゃん恐ろしいッス!あ…いや決してドーラちゃんが犯罪をするとかじゃなくて…ただ少し思っただけで、すみませんッス!」
「そのまま弟子はスッ○ン○の産○○た姿で……」
「ドーラちゃん出来れば砂を掘って助けくださると嬉しいです」
聖槍の言葉もだが、それよりも聖剣の言葉の方の未来に危機感を覚えたルティアは、捲し立ててドーラに要望を告げる。
「この方が早いと思ったんやよ」
「色々とヤバくなるかもしれないので掘ってください!」
焦燥から必死な表情へ変化すると共に要望を懇願に変えるルティア。
そんな彼女を見て、ドーラは身構えたようにぎこちなく頷いた。
「じゃあ俺は泳いでくるわ。どうにか自力で出てやれよ」
「皆で次の予定立てないで、一人で海に行こうとしないでください!」
顔以外砂中に埋もれた状態で、ルティアが真面目な顔で呼び止めてきた。
その巫山戯た光景は何とも可笑しくて、ソリトは笑い転げたくなった。
しかし、ルティアの方は真剣に話している為、笑いを堪える。
真面目な表情で、真面目に返答を待っているルティア。
それがまたシュールで少し可笑しく、ソリトの口元は徐々に緩み出し、笑いを堪える体がプルプル震え始める。
その反応がどういう理由からか察したらしく、羞恥か、怒りか、それとも両方か、ルティアの顔は赤く染まる程膨れっ面の顰めっ面。加えて涙目と、コロコロと百面相を浮かべてソリトを見ている。
「放置プレイの前に、私をルゥちゃんのように埋め直してくださいまし!こんな、こんな埋め方なまぬ…」
そんな中でもブレる事なく変態聖女全開のクティスリーゼ。
ソリトはそんなクティスリーゼの口周りを覆うように手で鷲掴んだ。
この時、こめかみに青筋が一、二本浮き出ていた。
「お前、貴族のお嬢様なんだから頭良いよなぁ?自分の性癖周囲にバレたくないなら、犬みたいに賢く大人しくして、自重しろよ」
「ワン、ですわ!」
直後、最後の語尾のですわにイラッと来たソリトは、クティスリーゼの額へと拳を落とした。
その瞬間、空気が沈黙を帯びた。
「よし、静かになった」
「ちょっ…ソリトさん!?今ゴンッ!って凄い音が聞こえましたけど!」
根菜のように埋まっているルティアの背後でクティスリーゼが埋まっている為、状況を把握しようとソリトに訊ねてきた。
ソリトはルティアの正面に回り込み、中腰に屈んでから口を開き一言告げた。
「聖女、後で【天秤】を砂の中から出してやってくれ」
「は、はい……分かりました…」
「じゃ、今度こそ海行くわ」
「はい……え?いや…」
ルティアに伝え終わったソリトは、立ち上がって海の方へ振り返って向かった。
明るく返事をしたが、直ぐに自分が砂の中から出されていない事を思い出したルティアから困惑の声が漏れ聞こえた。
その瞬間、ソリトの足取りが軽く、速くなった。
「ちょっ…ソリトさん出し忘れてます!」
「え?」
「え?じゃないですよ!」
「お?」
「誰かを見つけたんですね!そしてそれはわた…」
「聖剣が寝てる」
「ちっっっがーう…って師匠〜出来れば助けて欲しかったです!」
「ルティアお姉ちゃんのおムネ見えたんよ。けしからんやよ」
「ドーラちゃん。それ一体誰から聞きました?」
ドーラの発言を聞いた瞬間に陰のある笑顔を浮かべるルティア。
小さい子どもに圧の凄い笑顔を向けるなよ、とソリトはルティアの頭を上から手刀を落とした。
すると、ドーラがルティアの上乳辺りまで掘り進めていたのが、肩辺りまで下に落ちた。
「あ、すまん」
ソリトは直ぐに元の場所まで引き上げた。
「よし」
「よしじゃなくてそのまま助けてくださいよ!じゃなくてドーラちゃん一体誰からけしからんなんて言葉を聞きましたか」
「ん?クティスリーゼお姉ちゃんやよ!」
「クゥちゃん、後でぶっ飛ばす!」
「ルゥちゃんにやられるのはお断りしたいですわ」
後ろの方から聞こえたその一言の直後、聖女にはあるまじき言葉であろう一言をルティアが発した。
それに対して冷静に返すクティスリーゼ。
海から戻るまでにクティスリーゼが喜びそうにないお仕置きでも考えておこう、と考えながら、ソリトは海へと向かっていった。
「んぬぬ……はぁ…ソリトさんめぇ〜」
ソリトが海へと潜っていった後も、ドーラが砂を掘って出そうと頑張ってくれている傍らで、ルティアも砂穴から抜け出そうと藻掻くように左右に体を揺らす。
しかし、更に下へと深く入り込んだ所為か、綺麗に嵌まってしまったようで中々体を動かせず抜け出せない。
「ルゥちゃん。頑張っている所失礼ですが、先に手を出せば抜けられると思いますわよ?」
「ソリトさんが魔法で拘束してるから無理ですよ」
「あら、気づいていませんの?魔法ならとっくに解除されてますわ」
「え?」
いつの間にか意識が戻っていたクティスリーゼの言った言葉に、ルティアは間抜けな声を溢した。
しかし、クティスリーゼが嘘を吐く理由もない。
ルティアは先ず右腕だけに集中して腕を上げようと力を込めた。
直後、右腕がズズッと二、三回小刻みに上に動いた。
本当に魔法が解けていたようだ。
そして、ルティアが全力でやると、砂を撒き散らしながら右腕を外に出すことができた。
後は簡単だった。右手を支えに左腕に力を込めて上げ外へ出して、両手を使い脱出した。
その際に、直ぐに水着は脱げていないか確かめたが、問題なく、ルティアは安心した。
「抜け出せましたか?」
「はい」
「お姉ちゃん砂イッパイ付いてるやよ」
「あぁ……少し海に行って洗い流してきますね」
ルティアはお腹が浸かる辺りの深さまで海へ入り、サッと洗い流してシートを引いた自分達の陣地近くで埋もれているクティスリーゼの側まで戻った。
「ところで、何で魔法が解かれたことに気づいたんですか?」
「簡単ですわ。埋められてから暫くして急に私の拘束が解けたからですわ」
「それで」
「元々、ソリトは魔法が切れるまで展開しておくつもりはなかったのでしょうね。もし、知らない男性が近付いてきたらルゥちゃんの貞操が危ないですもの」
「それなら、何で埋めるんですか?」
目を細め、不機嫌な声でクティスリーゼに尋ねると、寝ていた筈の聖剣が、簡単、と言って会話の中に入ってきて言った。
「砂に埋まっていれば、そう簡単に手出しはできない。もし、
「納得できる容赦ない提案を言いながら、師匠が弟子に別の言葉を入れた気がするんですが……」
「問題ない」
「何がですか!?」
「おっぱいが気になる事は全て包み込む」
「どこの!誰の!おっぱいを見て!言ってます!?」
聖剣は数秒無言でルティアの大きく豊かに、綺麗な丸い形のハリがあり、もっちりした双丘の方を見つめ、ゆっくり目を閉じると、小さく笑みを作った。
きっと師匠は弟子の、と直球に言うだろう。しかし、言うだけなのに何故間を作る必要があるのか。
何か別の事を言うつもりなのか、もしかして他の誰かの、とルティアは唾を飲み込む。
「卑しパイ」
「癒しのいやしが違う気がして、食べ物に感じるのは何故ぇ〜…!」
予想の斜めの発言に、ルティアは悔しい思いの込もったツッコミをした。
「もう一つ。マスターが言った通り、海に一人で入りたいから。きっと弟子も変態もトカゲも付いていくと言って聞かないだろうから」
「トカゲじゃないやよー!」
「危なかった。真面目な発言に反射的にツッコミそうになりました!」
「若干、声の圧がツッコミから抜けられてませんわよ」
クティスリーゼの小声の呟きが聞こえてしまい、内心で自己ツッコミし、最後の少し冷静になったルティア。
ともかく、聖剣の予想を纒めれば、ソリトは海に入りに行く為に男からルティア達の身を守る為に砂に埋めた事になるが、ルティアは、絶対に違う!と思った。
ただ、ソリトに付いていく可能性は否定出来ない。
ソリトと一緒に楽しく遊ぼうと思っていたからだ。
可能なら他の人よりは断然小さいとはいえ、自分とクティスリーゼに対しての拒絶反応を消せれば、とルティアは思っていた。
焦っている訳では無い。が、やはり好きな人にアプローチを掛けられるようになりたいのだ。
誰にだって一人で行動したい時もあるが、ソリトの場合は基本的に一人でいたいようなので、海へ一人で行くあたりまだまだ難しいようだ。
「仕方ないですね。こうなったら私達だけで楽しく海を満喫しちゃいしょう!」
「「「「おー!」」」」
ちなみに、クティスリーゼは砂に寝かせ埋められた状態をもう少し満喫したいと、しばらく四人で遊ぶことなった。
理由は一応聞いたルティアだが、やはり聞かなければ良かったと思った。
あれから、ダンジョン島の海を泳ぎ始めたソリト。
現在いるのは、ルティア達のいる最も大きい島から北西側にある島付近の海中。
大体反対側の位置にある。
ちなみに、残りの二つの島はルティア達のいる島から西と南の方角にある。
何故、そこまで遠泳してきたのか特に理由はない。
ただ、泳ぐなら狭い範囲ではなく広々と泳ぐ方が悠々と気楽に泳ぎ回れるかも、とは少し思ったソリトだった。
何よりあのカオス空間にいるのはキツかった。
作ったのはソリトなのだが。
そんなこんなで、北西島から西島をぐるりと回り、南島の海域へやって来た。諸島全体周囲で千何百キロはある距離を泳いだにも拘らず、今は昼過ぎ。
太陽は真上を越えて、少し東の方へと傾いている。というのも、ここまでソリトはスローペースではなく割りとハイペースで遠泳を続けながら海中を眺めていた。
それでも、太陽の光が射して透き通ったマリンブルーはとても美しい。
時間帯によって光の反射角度が変わり、場所によって色の濃度が変わり、エメラルドグリーンに見える様は中々に摩訶不思議で楽しい光景だ。
集団だと水着は着ているものの、遊ぶ方向に行ってしまっているようで、泳ごうとするものは少なかった。
ルティアやクティスリーゼ達も海に浮かれてはいたが実際はビーチボールで遊んでいた。
一人だからこそ海の色が変わる光景を目の当たりにすることができたのかもしれない。
ただ、ルティア達なら私達も、と付いてきていた可能性もある。
それで、カオス光景になったものの来てよかった。
リフレッシュの為と、ルティア達についてきたのが良かった。
戻ったら、何か礼でもしないとな、とソリトは海の中の美しい光景を眺めて泳ぎながら、ふと、そんな事を考えていた。
そんな時、深い海の底の方に建造物らしきシルエットを見つけた。
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