第43話中央都市アルス

『サイズマンティス討伐により全能力が上昇します』

『スリープモース討伐により全能力が上昇します』

『アギアント討伐により全能力が上昇します』

『ポイズンゲェジ討伐により全能力が上昇します』

『スキル【斬撃耐性(中)】獲得』


【斬撃耐性(中)】

 斬撃への防御耐性が四割上昇する。(一段階アップ状態)

 スキル効果により【斬撃耐性(中)】から【斬撃耐性(大)】に変化。


 襲撃に来たカマキリ、蛾、アリ、ムカデに似た多足の虫の魔物達をソリトは難なくと討伐した。

 最初は多足の虫ばかりで何のいじめだと思ったが、毒と催眠系の攻撃はスキルで無効化、四種類の内のサイズマンティスは鎌のような二本の脚、アギアントはノコギリのような顎を持っていたので、試しにわざと受けて、斬撃に対しての耐性スキルをソリトは獲得したあと一掃した。


【自己再生(中)】を合わせれば斬撃に関しては大してダメージになることはなくなっただろう。

 欲を言えば、【斬撃無効】をソリトは獲得したかった。そうすれば【耐性】から【無効】にスキル変化が起きたと思われるからだ。

 回避行動も時々とっては行ったので原因を挙げるならば、おそらくそれだろう。

 次に同じ、似たような魔物がいれば受け続けることにしよう。と、そう思った矢先……


「スキルの為なのかもしれませんが無茶は止めてください!」


 ルティアから少々説教染みた注意を聞く羽目になってしまった。しかし、そうしなければ獲得出来ないスキルもある為、ソリトは聞くだけ聞き振り流す事にした。

 それで何かあったなら自己責任、元々一人で行動するつもりだったソリトは反転した日にそう決めていた。


「マスターもうすぐ着く」

「あるじ様ごはーん」

「着いたらな」

「えー」

「我慢しろ」

「はーいやよー」


 ドーラは進みながら早く食べたいのらしく脚を空中でそわそわさせている。


「それじゃあソリトさん」

「ん?ああ…そうだった」


 中央都市に向かうことになった際、ルティアは万が一に備えてある魔法を自身にかけて検問を通る事を提案した。

 聖女が検問を騙すような事を良いのかと考えるが、提案したのだからルティア自身は安全なのだろう。

 とはいっても、協力関係である間は何かあれば、ソリトは多少対処するつもりではあるので一応気を配っては置くことにして行動に移す。


「闇の精霊よ、我が声を聞き届け、我の一面を騙せ〝ハイド・マスク〟」




『スキル【幻影師】獲得』


【幻影師】

 幻影魔法の効果を微増。(一段階アップ状態)

 幻影魔法の効果時間を微増。(一段階アップ状態)

 幻影魔法の詠唱を省略できる。(一段階アップ状態)

 スキル効果により幻影魔法の効果を増加する。幻影魔法の効果時間を増加する。幻影魔法を無詠唱で発動できる。


 中央都市アルス。

 そらから落下してきた隕石によって広大な荒野となり、その中に聳え立つ巨大な岩壁に囲まれた無所属国中立都市。

 その入口に辿り着いたソリト達は入市審査に入るところだ。


「入市の方でよろしいですね」

「ああ」

「ここに来た理由は?」

「行商とある人物の護衛だ」


 事前に話し合った内容はこうだ。

 ソリトは自身の顔を幻影魔法で変化させて御者台で行商人兼護衛として振る舞い、ルティアは護衛対象として中で待機。

 聖剣もソリトの腰で剣のまま待機。

 ドーラはソリト達以外がいる場合は、ドラゴンの姿のままで、喋ることを禁止することになった。幽体離脱は小屋のある宿に泊まる際になら行っても良いことにした。これらに関して、ソリトは今後も継続していくことにした。

 最初は否定的な態度のドーラだったが、「俺達以外の前で話せば一緒にいられなくなるけど良いんだな?」とソリトが語ると、ひっくり返るように素直になった。

 そして、


「どなたかはお尋ねしても?」

「すまないが、いくら審査でもそれは言えない」

「それでは通すことはできません」

「なら、上の人間を連れてきてくれ。それならこっそり確認をとってもらって構わない」

「分かりました。少し待ってください」


 憲兵が詰め所に行った所で中からルティアが顔を出す。


「上手く行きましたね」

「今のところはだ、油断するな。幻影を見破られないとも限らないんだからな」

「それもそうでした」

「ギュア〜」

「喋れると知ってるとドーラちゃんが何を言ってるのか気になります」


 確かにソリトも気にならないと言えば嘘になる。分からないより分かる方が気分がすっきりと晴れるような感じだ。逆に分からないと悩まされ気分は陰る。しかも最初から分かっているとなると一層悩まされる。


 〈ドーラ聞こえるか?〉

 〈あるじ様やよー!〉

「ギュアー!」

「ドーラちゃんいきなりどうしたんですか!」

 〈最初みたいに頭で話せ〉

 〈ごめんなさいやよ〉


 これに関しては【念話】で繋げ尋ねた時に思念で話すことを説明することを付け足さなかったソリトに原因があるので、謝らなくて良いとソリトはすぐにフォローした。


 〈で、さっき何を思って鳴いてたんだ〉

 〈お喋りしたかったんやよ。でもこうしてあるじ様と話せるの分かったからもう大丈夫やんよ!〉


 話していると先程の憲兵がもう一人の両目蓋まぶたに三本傷を持つ憲兵の男を連れて戻ってきた。

 その前に再度幻影魔法で顔を少し変化させる。この魔法は魔法本に書かれていた初級魔法の為、【賢者の卵】のスキルアップ効果で想像詠唱で唱えた。


「私がここの担当を任されている門番長のガルダだ。護衛対象者の確認をしてもよろしいかな」

「あなただけなら」


 ガルダが御者台に軽く上がりカーテンを払って竜車の中を覗く。

 横目からガルダを見ると聖女だとすぐに分かったのか目を見開いていた。

 一度訪れた事があることは、話し合った際に聞いている。ゆえに護衛という名目で通ることにしたのだ。重要人物が今回はお忍びでという意味で。


「ガルダ様でしたね。表に出れないこと、お許しください。私はステラミラ皇国が聖女。【癒しの聖女】のルティアと申します」

「ぞ、存じております。一度この都市に訪れてくださいましたので」

「覚えていてくださりありがとうございます」

「い、いえ」

「それで、通ってもよろしいので?」


 ソリトが尋ねると、答える前にガルダはルティアに尋ねた。


「え、あ…その前に聖女様申し訳ありませんが今回はどう行った目的で?」

「前回と同じで【癒しの聖女】としての仕事です。あとは観光ですね。観光はゆっくりしたいので両方お忍びということで」

「なるほど、それで今回は……分かりました。ですが一応身分証明を、護衛の貴殿もだ」

「それなら、これを」


 ソリトは街長から貰った商業通行証をガルダに手渡す。


「ふむ……その前にその仮面を外して顔を見させてもらっても」

「………申し訳ありませんが見せることは」

「何故だ?何もやましい事がないのであれば問題ないだろ」

「分かりました」


 ソリトは仮面を外す。その瞬間ガルダともう一人の憲兵の顔が引き顰った。今二人には顔面を抉られた醜い顔に見えているはずだ。そういう風にここに来る途中で練習したのだ。


 その際【思考加速】が役にたった。

 想像詠唱が一瞬で唱えられる為に百を軽く越える回数を短時間で鮮明に変化させる事が可能になった。

 お陰で【幻影師】というスキルを得たので上々だ。


「すみません。余りお見せできるものではないもので」

「いや、こちらこそすまなかった」

「いえ、仕事上仕方ないと思います」

「そう言ってもらえて助かる。通って良いぞ」


 この顔を見て敢えて聞こうとせず、躊躇ったのは話したくないと考えたからだろう。

 あちらの見当違いだが、ソリト達としては成功だ。


 門を潜るとクレセント王国とは大きく違った風景だった。

 岩壁の斜面にに張り付くような独特な建造物、店名は二の次のように芸術性あるレリーフ彫刻の看板の店の数々、賑わい絶えない通りは行商人が馬車で行ききしやすいように広く時折踊り子や小さな音楽団が人を集めている。


 クレーターが落下した事で生まれたオアシスを始まりとして各国の行商人達を中心とし、建物、芸術、音楽など現在も様々な人間が交流し独自に発展していったこの都市は独立国家と言っても過言ではないものにソリトは感じた。


「先にギルドに行く。商業通行証を持ってるとはいえ、許可がいるだろうからな。【天秤の聖女】についても聞いておきたい」

ギュアーごはーん!」


 ずっと我慢していたし、そろそろ融通が効かなくなってくる。魔物商を探すことも考えると、この都市ではやることが沢山ありそうだ。


「……はぁ、聖女ドーラを連れてけ。俺だけで行く」

「え?聞くなら私が探してることにした方が良いのでは」


 それも一理ある。ソリトも一度考えたくらいだ。

 しかし、


「だがお前だと顔も広いし、名前が有名過ぎる。どこで情報が漏れるか分からない」


 その点、ソリトは名前は割れてしまっているだろうが、以前ルティアが教会に手を回していた為ある程度は広まることはないだろうし、それに顔は魔法でどうにかなる。


「それにお前みたいなしぶとくて諦め悪いお人好な聖女でなくとも聖女として役割を果たしてるなら些細なことでも接触を考えるだろ」

「誉めるか貶すかどちらかにしてくださいよ!混ざってボロクソに言われてるみたいですから!」

「それに【天秤の聖女】というスキルで少々疑り深くなってるはずだ。俺が名前を出して依頼したとしても噂は信じないだろ」

「話を……もう……確かに噂は信じないと思います。スキル【天秤の聖女】では噂の真偽というのは判断できないそうです。人から人へと伝わった噂というのは曖昧なものだそうですから」

「スキルを過信評価して自分の判断で噂を鵜呑みにしてなければな」

「そこは大丈夫だと思います。とりあえずソリトさんの考えは分かりました。食事ついでに宿も探しておきますね」

「なるべくドーラが入れる小屋のある場所で頼む」

「騎竜の泊まれる宿を基準に聞いてあたってみます」


 そして、ソリトは交代するようにルティアが御者台に移った瞬間、竜車から魔物の素材を持って飛び降りルティア、ドーラと別れてギルドに向かった。


 ―――

 どうも翔丸です。


 スキル変更です。話に合わせて【伝令】というスキルを【念話】にスキルアップ変更させていただきました。


【伝令】

 対象を決めて十メートル範囲内で思念での伝達を可能とする。(一段階アップ状態)

 会話不可。

 スキル効果により思念伝達を二十メートルまで範囲拡大する。【伝令】から【念話】に変化。


【念話】

 対象を決めて二十メートル範囲で思念での会話を可能とする。


 さて、久しぶりにソリトオンリー…オンリー?聖剣が人化出来ると判明したので違いますね。

 久しぶりに次回はソリトと聖剣だけです。

 少女化するのは難しいでしょうね。

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