幕間:釣りの才能

幕間ですけどifくらいだと思ってください。








出立する前のある日。


その日、ソリトは釣りをする事にした。

森の奥にある大きく美麗な湖、湖を囲う木々の木漏れ日、天候は晴天。最高の釣り日和だった。

ソリトは村の宿で借りた釣竿に糸と針を取り付ける。


「よし、釣るか」


竿を後ろに構えて、湖に向かって振った。

その時、ぐっと突然重さが加わったが、何のそのとソリトは竿を振る。


「きゃっ!」

「あ?」


背後から声がして間抜けな声を出す。その間も声は聞こえており、後ろから徐々に上から上斜めからと移動している。

そして、大きな水飛沫が起きたのを最後にその声は消えた。


「あいつ何やってんの?」


水飛沫か消え、現れたのはルティアだった。声の主は彼女だったらしい。

いくら湖が綺麗だからといっても舞い上がり過ぎだろと、呆れるような目で湖にプカプカ浮かぶ聖女を見ていた。


「何するんですか!!」


どうやら、針がルティアの服に引っ掛かりそのまま投げてしまったのが原因らしい。


(道理で重かった訳だ)


と、これは女性には禁句なので、胸の内だけで呟く。

ルティアはまだ子ども一人分くらいの小さなドーラによって服に引っ掛かった釣り針ごとを岸に引きあげられた。

針を外すとすぐにルティアは服の水を絞り出し始めた。


「もう、気を付けてください」

「はいはい」


今度は後ろをしっかり確認するソリト。

誰もいない。その確認を取った瞬間、湖に視線を戻して竿を振った。


「…き………!」


ドボン!


「ん?」


隣を見ると何処にもルティアがいなかった。しかも、さっき同様振った時に重く感じた。

水飛沫の場所を見るとまたもルティアが湖に飛ばされていた。

その時だった。


「お?」


眼を凝らして良く見ると、聖女に向かって多方面から沢山の影が近寄ってきていた。


「ぷはぁ!もぉソリトさん!!……え?ええええ!」


ルティアが上がってきた時に彼女の周りに多くの魚型魔物が集まりだしていた。


「ソリトさーーーん!」


救命要請の叫びがあるもソリトは釣り上げず、細剣をルティアに放り投げた。


「助けてくれないんですかぁぁ!」


叫びながら抗議するルティアにソリトは語る。


「聖女!俺は気付いた。自分の才能に……何度もなければ気付かなかったわ」


語っている間にもルティアは懸命に細剣で魔物を牽制する。


「そう、俺はお前を釣りのエサにする才能を持っていた!」

「そんな才能は今すぐ捨ててー!」

「そして、お前は釣りのエサとなることで獲物を引き寄せる才能がある」

「そんな才能いらないです!」


この後ソリトは【釣り人】というスキルを獲得した。

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