48.告白と、忠臣の最後
崩れ落ちた宮殿。爆発の起点となった地点には、ケペルムの
そこから少しだけ離れた、
「くっ──。キテラン王女、
「無傷じゃ、クウ。それよりも──!」
瓦礫から
「ロフストさん──!」
ロフストの容体は、一目で分かるほど深刻だった。全身の表皮が赤黒く焼け焦げ、背中は──組織の一部が丸ごと吹き飛んでいる。
目の前のロフストと──"
「ロフスト! 気をしっかり持たぬか! ──お主の働き、
「キテラン王女様……よくぞご無事で……。何より──です」
ロフストは、もう意識を
「王女様──お許し下さい。俺は、あの時……」
「もうよい、ロフスト! 地上に戻るまで、
「いえ……言わせて下さい、王女様。俺は、
ロフストの目に──細い涙が伝った。
「俺は──本当は、逃げたんです。あなた達、王族を置いて──自分一人だけ、助かろうとしたんだ……!」
「えっ──?」
唐突なロフスト告白に、クウが驚いて目を見開く。
「あの時、俺は恐ろしくなって──泣きながら走って逃げた。
ロフストの口の
「許してくれ──王女様……! 俺は、あなた達を……見捨てた。俺にこの
「──よい」
キテランの
「お主の目には、深い後悔と──
キテランの目からも、大粒の涙が溢れ出す。
「ロフスト、お主は我が王家にいかなる時も
「キテラン……王女様──!」
「キテラン王女様、心より感謝します──。俺はとんだロクでなしだったが……あなた達にお
「ロフスト……? おい、ロフスト──!」
キテランが大声でロフストを呼ぶ。目を閉じていたロフストは──もう息をしていなかった。
「ロフスト……! お前まで……
キテランが、安らかな眠りについたロフストにしがみ付き、
クウは棒立ちになってその様子を見つめていたが、少しして──自分も泣いている事に気付いた。
「──クウ、泣いているの?」
クウの真後ろから、心配そうな声がした。クウは姿を見ずとも、それがフェナの声である事が分かった。
クウは視線を向けないが、背後にはフェナと、鎧を着たドワーフ達が全員
「おお、キテラン王女様──。それに、ロフスト……」
ドワーフ達の何名かが、キテランと、変わり果てたロフストにゆっくりと近寄る。互いの泣き顔を見たキテランとドワーフ達は、更に涙の勢いを増した。
「肩が震えてる。後ろ姿でも分かるわ、クウ。──あなたも、泣いてるのね」
「──フェナ、無事で良かったよ」
クウはフェナに背を向けたままで話す。
「あの女の子が、キテラン王女様ね。倒れてるのは、ロフストさん……? まさか──」
「ロフストさんは
「そうだったの……」
フェナはクウの横に並び立ち、キテランと仲間のドワーフがしがみ付いているロフストの遺体を、悲しげに見つめた。
「あの時、ロフストさんは動けるドワーフ達に
「
「そうね。──それより、さっきの大爆発には本当に驚いたわよ。あれは当然、"ケペルム"の
「うん。"
「あまり良く分からないわね。──つまり、ケペルムは
「……倒れたよ」
「
「
「あら……ごめんなさい」
クウはフェナの顔を一度も見ようとしないまま、その場から歩いてケペルムの
クウは例によって、ケペルムの死骸に向かって丁寧に
クウは指輪を腰袋に収納すると、そこでやっとフェナに
「フェナ、ここを出よう。"メルカンデュラ"まで戻るんだ。──君も、結構やられたでしょ? 傷の手当てをしないといけない」
「爆撃に
「君は役立たずじゃないよ。前世の僕とは違ってね。──さあ、行こう」
"役立たず"という言葉がフェナの口から出た時、クウは──痛む古傷を手で抑えるような動作をした。
「さて、大爆発で宮殿の各空間が繋がったのか、新鮮な空気が流入してるね。もう息苦しくないのはいいとして……地上にはどうやって戻ればいいのかな?」
「ええ。それについてだけど──」
フェナが指で、後方に立っていたドワーフの一人を示す。
ドワーフの手には、
「アレを使えば、地上まで帰れるらしいわよ。──私達が火口の湖に飛び込んだ時や、あなたが"
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