33.生存者の発見
クウは歩く速度を
「──あれ? ここは、もう外だ」
クウは驚いた声を出した。
洞窟が終わり、突如として広い岩場に出たのである。空間の光量が少し増し、生暖かい
クウは視界の良くなった前方を注視する。岩場の向こうから、多くの人影がクウ達を見ていた。
「あら……先客がいたのね。それも、こんなにたくさん」
頬の汗を拭いながらフェナが言う。およそ30人程いた人影の正体は、よく見ると──2種類の種族達である。
一つは、白に近い金髪に金色の瞳を持った、屈強な
もう一つは、
「──貴様ら、何者だ! "黒の騎士団"とは……違うな?」
人影の中心にいたノームの男が、急に立ち上がってクウとフェナにずんずんと近寄ってきた。側面を
「エルフの衣を着てはいるが、その夜色の髪……もしや"人間"か? それに、そっちは緑掛かった白髪……吸血鬼の上位個体だな?
ノームの大男は混乱しているらしい。盾を構えながら、クウとフェナの顔を交互に見る。
「あなたは、"白の騎士団"の将軍の一人──"大盾のドルス"ですか?」
「そうだ。……どうして、俺を知っている?」
ノームの大男──ドルスは、クウが自分の名前を特定した事に驚いている。クウは腰袋から、セラシア王女に渡されたドルス
「これを、あなたに。──送り主のセラシア王女は、あなたを心配してましたよ」
「セラシア王女様だと? ……そうか、お前達は王女様の使いの者か」
ドルスはすぐに渡された小包を開ける。中身を見て、クウとフェナが
「おお、これはまさしく──王女様の! どれどれ……」
クウとフェナが、今度は揃って口を開けて驚く。ドルスは、セラシアのものらしき平服に顔を
「ふむふむ、これは確かに王女様の香りだ。──ああ、お変わりないご様子だな」
「……あの、参考までに、何をしてるか教えてくれませんか?」
「うん? 決まっているだろう。王女様の
「
「何を失礼な。身も心も清らかなセラシア王女様のお肌を、間接的にとは言えこの身で感じられるんだぞ。白の騎士団の一員としては、この上ない
ドルスの表情は
「ドルスさん。セラシア王女は、あなた達をウルゼキアに撤退する手助けをして欲しいと、僕達に頼みました。半壊した"メルカンデュラ"を見た時には、"黒の騎士団"に先を越されたのかとも思いましたけど……どういう経緯でこんな場所に? 何があったんです?」
「ああ、話せば長いぞ」
ドルスは、背後のノーム達とドワーフ達をちらりと見る。
「俺の部隊は元々、赤と白の領域の境目で、黒の騎士団と交戦していた。そこは
「それが、"舞踊千刃シェスパー"だったんですね」
「……そうだ。恐ろしい奴だったよ。奴が"輪"を展開すると、俺の部下の騎士達は驚く事に──
「
フェナが腕組みをしながら、ドルスを
「ちょっと待て、吸血鬼。今、実際に相手をしてみて──と言ったか?」
「ええ、言ったわ。ついさっきの話よ。──クウ。あなたがさっき拾った、アレを見せてあげたらどうかしら」
クウはそのフェナの言葉に、
「な、何!? それは、まさか……」
「お察しの通り、シェスパーが
「彼女!? 奴は女だったのか? いや、それより──倒した、だと?」
「正確に言えば、倒したのは彼女──"
「クウ。シェスパーを倒したのは、私達二人よ」
製鉄所の方角を指差すクウに、フェナが
「馬鹿な、信じられん……。いや、だが信じるべきか。お前達が通って来た道には、ドワーフ達がいないのをいい事に、"黒の騎士団"共が野営地を
「ドルスさん。僕はクウで、彼女はフェナです」
「む……済まなかった。クウと、フェナ」
ドルスは目の前の二人に向かって、それぞれ一度ずつ名前で呼びかけた。
「ああ。そう言えば我々が、こうしてここにいる理由を答えていなかったな。──結論から言おう。現在我々が直面している
「どういう意味ですか?」
「言葉通りの意味だ。確かに、シェスパーの
「では、その背後にいる方々は?」
「俺の部下、ノームの騎士達。そして、メルカンデュラからどうにかここまで逃げ出してきた、住民のドワーフ達だ。生き残った俺の部下達は、皆この場に集まっている。しかしドワーフ達は、ここにいる者が全員じゃない。──生き延びている者がいないか探すべきだろう。全員が、奴に食われる前に」
「ドルスさん、直面している脅威は黒の騎士団では無いと言いましたね。ドワーフの村をあんな風にしたのは、何者なんです?」
「"
ドルスが親指で、空間の奥の方に座っている小柄なドワーフを示した。クウはそのドワーフに近づき、膝を地面について、視線を同じ高さに合わせる。
「僕にもその話、詳しく教えてくれませんか? えっと、お名前は──」
「俺はロフストだ。あんたは、クウって言ったか。──あんたも、"人間"なのか?」
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