10.十三魔将 ~紫雷のゴーバ~
「寝てる……のかな?」
クウの手によって、台の上の少女の拘束は全て解かれた。クウは改めて少女の姿を、じっと観察する。
「ううん……。んんっ……」
台の上の少女が、吐息と共にゆっくり目を開けた。数回の
「──あなたは、誰かしら?」
数秒の沈黙を破って発言したのは、少女の方だった。
「角が無いし、肌が青白くもない。それに髪の毛は──"
「ヨル色、ね。やっぱり違和感あるなあ、その表現」
「聞くまでもなさそうだけど、あなたが開放してくれたのね。……あなた、"人間"なのかしら?」
少女は上体を起こし、台の上での姿勢を座位に変えた。
「僕は人間だよ。少なくとも、エルフには認めてもらえたね。──僕からも聞いていいかな。君は、何者なの?」
「──"
「え?」
少女は台から降り立ち上がる。すこしよろけながら、身体の
「"
少女はふらふらとした足取りで、無理に歩き出す。すぐに転びそうになったが、クウが腕を
「うわっと──大丈夫?」
「あら、
「──この部屋、"黒の騎士団"によれば"対悪魔用兵器"があるって言ってたんだよね。僕が見逃してる可能性を除けば、この部屋にはそれらしきモノは君ぐらいしかない。それについて、君はどう思う?」
「それ、私の事よ」
少女はあっさりと答えた。
「言葉の意味は、
「つまり"兵器"っていうのは、黒の騎士団が考えた失礼な
「少なくとも私はそう思ってるわ。個人的には、極めて心外なのだけれど。ついでに言えば、騎士団達に不意打ちを受けて捕まって、特別牢で
「つまり君は、黒の騎士団の敵でいいんだね? なら、やっぱり助けて良かったよ。──君の職業が傭兵って部分は、ちょっと
「それなら、実際に仕事を目の前で
少女は体の各関節を動かす。
「歩ける程度には回復した? 吸血鬼さん──じゃなくて、えっと……」
「──フェナよ」
クウは
「"人間"さん、あなたの名前は?」
「僕は、
「クウね。──助けてくれてありがとう、クウ」
「あ、いや。……どういたしまして」
フェナの感謝の言葉に、クウは少し照れる。
「さて。ここにはもう誰もいないね。──行こう」
クウはフェナの足取りを気にしつつ、ソウと合流すべく牢の外を目指した。
◇◇
「これは……」
フェナと共に地上に出たクウが、驚いた様子で
黒の騎士達が、至る所に
──強い打撃。
クウは状況を分析する。ソウは騎士を仕留める際、青く光る短刀を武器に使っていた。これがソウの
嫌な予感がして、クウは走り出す。フェナが一瞬だけ遅れて、後に続く。
「──ソウ!」
最初の、騎士団達が宴会をしていた広場に、ソウが一人で立っていた。その姿を見て、クウが叫ぶ。
広場の各所からは、激しい火の手が上がっている。クウの起こした風で勢いを増した炎は、周囲の
クウはソウのすぐ
「ソウ! ──捕まってた人や、エルフの皆は!?」
「……ついさっき、何とか全員
「何とか……?」
クウは、はっとしてソウを見る。よく見るとソウの頭部からは出血があり、彼の着ている皮鎧はかなり破損していた。別行動をとる前のソウは、確実にこうでは無かったはずである。
「逃がした連中なら、後を追われる心配はねえよ。黒い騎士のマヌケ共は、ほぼ全滅しちまったからな。──あの男の手で」
クウは、ソウの視線の先を追う。
広場の中央。炎に
大男の手には、悪魔の頭部を
「──ほう。貴様が、新たにイルトへと至った"人間"か」
大男がクウを
「
大男は
「十三魔将、"
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