満月の次の日

takahiro

満月

月というものは何とも神秘的で一定の周期で満ちては欠けるを繰り返す。

例外はあれど一度欠けて見えなくなる月も次第に姿を現す。


どんな時だって見えなくなった後は必ず姿を現してくれるし、満月になった月はいずれ見えなくなる。


それが私たちにとっての常識であり日常である。

自分もそれを疑わなかったし信じてきた。


どんなに欠けた月も少しすればまた美しく光る姿を見せてくれる。


もしも突然月が今後満月を迎えることなく必ずどこか欠けているとしたら私たちはどう思うのか。

不安を感じる者もいれば、その姿に慣れて違和感を感じなくなる者、はたまた神に祈る者も出てくるのだろうか。


私なら最後の満月の姿をこの目に焼き付けなかったことを後悔するだろう。

写真に残すわけでもなく、じっくりと、その様を見届けなかったことを後悔するだろう。



常識であった事や、日常であった事がいつまでも存在する事は無いという事をわかっていても、私たちはそれに目を向けることなく過ごしていくのだろう。


失ってから大事だったことに気づくというのは慢心であり、傲慢であり、怠惰だったのだ。

その一瞬を目に焼き付けなかったことを必ず後悔する時が来る。


本当に大事なものは失う前に気づくべきで、それをいつ失っても後悔がないようにしなければならない。


私たちは月と違って一度見えなくなった後にもう一度光ることはできない。

一度欠けてしまった所を取り返すことも、もう一度満月に戻り光り輝くことはできない。


私たちは月とは違いもう一度同じ姿を表す事はできないのだ。


今の自分の姿を、他人の姿を見逃す事はできない。

それは、私たちにとってたった一度きりで今後戻ってこない姿なのだから。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

満月の次の日 takahiro @dorabure1014

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る