放課後の《マグノリア》

久米坂律

プロローグ

 白木蓮。


 彼女を形容するのには、これが一番だ。

 白木蓮のように高潔で、清廉で、


 儚く散っていった。


 彼女はあの日、息も絶え絶えに言った。

「君には、できないか」

 何が無理なんだ。俺は何だってする覚悟だったのに。何で最初から決めつけるんだ。


 彼女の存在が、言葉が、何もかもが、掌から零れ落ちていく。

 駄目だ。待ってくれ。待って、待って。


 少年の声にならない慟哭は無慈悲にも神に受け入れられず、彼女は消えていった。


 それから三年が経った。

 彼女の思い出は白木蓮のように純白のままでいて、まだ俺の心に仄暗い影を落とし続けている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る