掌編小説・『ドライブ』

夢美瑠瑠

掌編小説・『ドライブ』

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 あたしは、女だてらに、F1レーサーなんです。(こういう語り口の小説を書いていた宇能鴻一郎っていう小説家がいたらしいけど、読んだことはないです。女性の一人称だし色っぽい小説だったのかしら?)

 F1レースで完走すると、A級ライセンスというのがもらえてー一流のドライバーという証明ができます。あたしはスピード狂みたいなところもあってー命の危険と隣り合わせみたいな、死と紙一重みたいな、そういうシチュエーションにワクワクドキドキしてしまうんです。

(レースで興奮した後はセックスの味もよくなる感じかも。ウフッ♡)

 本当に150キロくらいでぶっ飛ばしていると、脳内にアドレナリンがバーッて出る感じで、すごいカタルシスになるんです。

 ちょっとでもハンドル操作を誤るとお陀仏・・・そういうスリルがたまらないんです。フロイトはこういう感覚のことをタナトス、死への衝動、と言ったのかもしれない・・・

 F1の車がすごいスピードを出せるのは、白バイと同じで、速度のリミッターというのが外されているからなんです。それであたしの意識のリミッターみたいなものも外れてしまって、エクスタシーみたいな恍惚境に浸れます。

 マラソンとかを完走するのも何だか命の洗濯みたいな、すごく気持ちのいい達成でしょうけど、あたしはすごい爆音を出しながらサーキットをぶっ飛ばして、男たちをぶっちぎってゴールして、チェッカーフラッグを最初に振らせるというそういう快感に勝るものは今の処見つけられない感じです・・・

 あたしの家庭はみんなの想像通り?すごい大金持ちなんですけど、娘の危険極まりない道楽?を、両親はいつもハラハラして死ぬほど心配しているんです。美人F1レーサーというんで、新聞にも紹介されたりしますけど、あんまりそういうことも誇らしいとは思わないらしくて、「お転婆もいい加減にしないと嫁き遅れるぞ」と、お説教ばっかりされるんです。

 あたしはプライベートでは真っ赤なポルシェに乗っているんだけど、うちには、他にレクサスとベンツとリムジンとBMWとロードスターがあります。

 気分によって乗り換えて、湘南までドライブして、ボーイフレンドとサーフィンをしたりします。

 あたしはこうやって青春を謳歌して、燃焼し尽くして、もうこの瞬間に太陽が爆発して世界に終わりが来ても後悔しないような、そういう充実した時間を送っていこうと、そういうポリシーで生きているんです。

 車やドライブより素敵な男性が現れるまでちょっとこういう生活から抜けられないかも・・・


 だけど今は私はとっても幸せなんです。きらびやかな人生、というのは、こんな感じかなーと思っています。


 いつも私はみんなの人生のポールポジションにいたいと思うんです。

 私は瀬名愛子という名前なんですけど、きっと誰かの生まれ変わりかもしれませんね?(*^-^*)



<終>


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掌編小説・『ドライブ』 夢美瑠瑠 @joeyasushi

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