第6話 後夜祭

 聖橋学院では高校のグラウンドで中高合同の文化祭の後夜祭が行われていた。

 薄暗い闇を照らす炎はとてもきれいで、写真を撮っている子も多くいる。

「きれいだね! 菜月、こんな感じなんだね」

 わたしは劇の衣装から制服に着替えてグラウンドでキャンプファイヤーを見ている。

 みんな制服のシャツの上からクラストレーナーを着て、とても嬉しそうな表情をしている。

 隣にいる菜月はスマホで何枚か写真を撮っていた。

「劇、大好評だったし。ロシア訛りの日本語で話すのもすごい、めちゃくちゃかっこよかったな」

 クラスで行った劇は大成功で、毎回拍手が鳴り終わらなかった。

 そのあとに体育館裏で撮影会をしたりと、とても忙しかったんだよね。

「ひかりが男装をしてるって気づかれてなかったよね~」

「そうなのかな? でも、楽しかった」

 わたしの男装は見抜けなかった子が多くて、とてもびっくりされてしまったことも多かった。

 そのとき、スマホに着信音が聞こえた。

「あ、れ、零くん!? うそ」

 わたしはびっくりして、LINEの通話を始めることにした。

「もしもし? あ、零くん?」

『ひかり? 元気にしてる?』

 零くんは落ち着いた声で話しかけてくれた。

『もう文化祭、終わったんじゃ?』

「え? 後夜祭だよ、零くん。もう少しで帰る」

『わかった。復学するのは来週になるから、登校するときに一緒に行こう』

 零くんにすぐに会いたかった。

「うん。待ってる」

 心臓が少しだけ速くなっていく。

 零くんとの通話を終わって、キャンプファイヤーを見つめていた。

 千鶴と桜が一緒にフォークダンスをしていて、とても楽しそうにしてきたのでわたしは菜月とペアになって踊ることにした。

「菜月! 踊ろう。フォークダンス」

「うん。踊ろう!」

 菜月の手を取って踊る。

 そのときに炎の向こう側に誰かがいた。それに一人の男の人が見えたのは菜月もわかっていた。

「え? うそ……」

「菜月、大丈夫?」

 向こう側にいたのはラフな格好をした男の人、その顔は明るく照らされていてはっきりと見えた。

「先生……だ。遠藤先生」

 遠藤先生は小六の夏休みまで図工を教わっていた先生で、夏休みに突然亡くなってしまったんだ。

 そのときはみんながびっくりして、ショックだった子が多かった。

 それだけみんなに慕われていた子で、いつも先生の周りには学年を越えて生徒がいた。

 そのときに先生はにこやかに笑いかけて、わたしたちに向けて口を開いた。

「藤野さん、上野さん。突然この世を去って、言えなかったことがあるんだ。君たちの未来には辛い、暗いできごとがある。でも、それを支えてくれる人を見つけて」

 それだけを伝えに来たのかもしれない。

「あと……息子が来年の春。この学校に来るかも、そのときはよろしくね」

 わたしは泣きそうになる菜月の肩を抱きしめて、炎を見ると先生が消えてしまっていた。

 あとで千鶴と桜に聞いてみたけど、二人は見えてなかったらしい。

「先生……」

 そのまま先生が姿を見せたことはなかった。




 わたしと菜月は迎えに来てくれた桜のお兄ちゃんとお姉ちゃんと一緒に帰ることにした。

「あ、お兄ちゃんと一緒に帰ろー! みんな」

「うん。いいよ」

 桜のお兄ちゃんは六年前と二年前のオリンピックにアイスダンスの日本代表で出場しているんだ。

 そして、再来年にある冬季オリンピックの代表の最有力なんだ。

 ちなみに桜のお姉ちゃんはシングルの前回オリンピックの銀メダリストなの。桜と一緒に今度のオリンピックではメダル候補の一人。

 三兄妹のなかで特に強いのが桜、わたしも小学校卒業するまでスケートをしていたから、彼女のことをずっと前から知っていた。

「桜、好きな人っているの?」

「え……いる。中学の同級生の平賀」

 その名前を聞いたときに菜月と千鶴と一緒に叫びそうになった。

「ええぇぇ!? あのバスケ部のキャプテンだったやつ、いま西陵学園にいるんじゃ」

 西陵学園っていうのは中高が男子校で、バスケ部などの部活が全国大会に出たりと有名なの。

 そんな話をしながら家に帰っていった。

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