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須川  庚

プロローグ

 図書館の本棚に置かれてあった一冊のノート。

 それがきっかけでわたしの止まった時間が動き始めた。




「菜月、おはよう!」

 わたしの名前は上野ひかり、今年聖橋学院高校に入学した。

 声をかけたのは幼なじみの藤野ふじの菜月なつき

 幼稚園の頃から高校に入ってもずっと同じクラスで、一番仲の良い友だちの一人だ。

「ひかり、おはよう。今日、英語の小テストだよ~」

「そうだよね!? 大丈夫じゃないし、急ごう」

 菜月は急いで教室に向かうと、高校のクラスメイトの何人かが寄ってくる。

「おはよう! 菜月~」

「おはよー!」

 わたしは静かに一人で席に着くと、本を読み始めた。

 聖橋学院高校ここに入学して一ヶ月、まだクラスメイトたちになじめてはいなかった。

 同じ中学から来ている坂井さかい千鶴ちずる深瀬ふかせさくらの二人とは話をしている。

 他の中学や附属中学から来た子とはあまり話せていない。

 もともと幼稚園のときのことがきっかけで上手く人と話せなくなってしまったんだ。

 そのせいで小中学校の頃はずっと本を読んでいた。

 ずっと変わっていないことだ。

「学活を始めるぞ~!! 席に着けー」

 担任の先生の声が教室に響いた。

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