第68話 ルティ、盗賊団に追われる

「アック様~! これなんかどうですか?」

「いいけど、こんな杖をどこで拾って来たんだ?」

「それがですね、この先の草地に落ちてたんですよ~!」

「落ちてた……?」

「はいっ! きっと使い古しちゃって、捨てて行ったんじゃないでしょうか」


 ◇


 服が完全に乾いたところで、おれは広域スキャンを使って人や村を探している。

 スキャンスキルが上がったおかげで、人だけでなく人工物といったものも探せるようになった。


 このまま調子よく村を探せそうではあるが、自分の装備が貧相なことに気付く。

 見知らぬ土地で人に出会ったとして、船乗り装備では不審に思われてしまいかねない。

 

 そう思って、ガチャを引こうとしたが……。


「アック様。ガチャを使おうとしてますか?」

「そのつもりだ。今のままじゃ、村が見つかっても恥ずかしい思いをするだけだしな」

「それでしたら、ぜひぜひわたしを頼って下さいっ!!」

「何かアテでもあるのか?」

「むふふ……実はこう見えて、わたし鼻が利くんですよ~!」


 ドワーフ娘ではあるが、野生側だっただろうか。

 シーニャが言うなら納得出来るが、ルティだと何とも言えない。


「どういう風に利くんだ? 近くの食べ物でも探せるとか?」

「違いますよぉ~! 全くアック様は、わたしのことをどういう目で見ているんですか~!?」

「いつも元気そうだなと」

「元気が取り柄で……えへへ! ――って、そうじゃなくて、実は父から継いだスキルがありまして~」

「――何のスキル?」

「金目の物を探すことが出来ちゃうスキルです。これのおかげで今まで助けられてまして」


 もしやトレジャーハンターとかいうレアジョブのことか。

 ただのハンターならどこにでもいるが、お宝だけを見つけられるジョブは滅多にいない。


 そうか、それで金回りがいいのか。

 何気に商売も上手いし、倉庫も手に入れることが出来た。


 今まではレアガチャスキルだけで何とか出来ていたが、ルティにもあるなら任せても良さそうだ。

 それで任せてください発言が飛び出したとすれば、納得がいく。


「そういうことなら、ルティ。おれの武器を探し出せるか? フィーサがいない以上、何か手にするものがないと不安だからな」

「お任せくださいっ! では早速、行ってまいります!」


 周辺には人や魔物の気配が無い。

 そんな中で、そうたやすくレアな武器が手に入るとは思えないのだが。


 そう思っていたが、


「見つけて来ました!! 魔法の杖です! どうぞっ」

「……杖か。無いよりはましだが、魔法を使うのに杖は必要無いんだけどな」

「いえいえ、たとえ魔法を出さずとも杖で攻撃出来ますから! それじゃ、次行ってきます~」

「次……? って、もういない……」


 まさか本当にその辺に武器やら防具やらがあって、見つけて来ているとでもいうのか。

 レアガチャで出すより効率が良すぎるぞ。


「はふーはふー……戻りましたっ! 今度はこれですっ!!」

「鋼鉄鎧……鎧だけか。ルティ、これをどこで見つけたんだ?」

「それがですね、所々にある草地に武器とか防具とかが大量に落ちてまして、そこから拾って来たんですよ~」

「草地に落ちてた……? ちなみに周りに人の気配は無かったのか?」

「アック様の言う通り、見当たらなかったです。きっとアック様の為に、武器たちが見つけて欲しかったんじゃないかなぁと思うのですよ~」


 そんなスキルなわけがないだろ……。

 まさかと思うが、この杖も鎧も盗品なのでは。


 もちろんルティではなく、何者かが一時的に置いていた可能性がある。

 そうなると予想できるのは、


『そこのドワーフの女ぁ!! そこを動くんじゃねえ!』


 あぁ、やはり。

 野太い男の声が、離れたところから聞こえて来る。


 すでに後を付けられて、追われていたようだ。

 そう上手い話は無いと思っていたが、見つけて来るのが早すぎた。


 スキルは本物のようで、それは責められない。

 肝心のルティはぼんやりとしていて、状況が呑み込めていないようだ。


「アック様、もしかしなくてもわたし追われていたんですか?」

「そうだと思うぞ」

「やっつけますか?」

「いや、まずは言い分を聞かないことには……」

「それはそうと、杖と鎧を身に着けて襲撃に備えちゃいましょう!」

「……杖だけは持っておくよ。鎧は様子見だな」


 よりにもよって盗賊の物を拾って来たのか。

 ルティに悪気は無いが、果たして盗賊は何を言って来るのやら。


『お頭ぁ! ドワーフ娘と、弱そうな野郎がいますぜ!』

『おぅ! 舐めた真似をしやがるもんだな、おい』

『どうします? やっちゃいますか? 野郎の手には、早速杖がありますぜ!』


 なるほど、盗賊団だったか。

 ラクルの周辺では見かけないものだったが、やはり見知らぬ土地にはいるものだな。


「アック様。どうされますか~?」

「うう~ん……」

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