スキルの覚醒

第29話 スキル習得スキルと魔石変化

「わたしの為にアック様がーー!」

「わらわのおかげだもん!!」


 ルティとフィーサの口喧嘩が続いているが、宿に戻るとスキュラが出迎えてくれた。

 彼女たちの様子を見て呆れた表情を見せているが、機嫌は良さそうだ。


「お帰りなさいませ、アックさま。フフッ、随分と賑やかなお戻りですのね」

「これは何というか……」


 落ち着いた雰囲気を見せるスキュラは、余裕を見せているようでありがたい。


「……まぁ、街の中も慌ただしくなっていますけれど。そこの小娘たちと関係がおありなのでしょう?」

「何か知っているのか?」

「ええ。近く、剣闘場が開催されるようですわ」


 あの馬車の集団はそういうことか。


「なるほど、それでか」

「どうでもいいことですけれど、貴族が沸き立っているのではないかと」


 貴族たちの動きに気を付けるべきか。

 それにしても、まだ続いているのが彼女たちのケンカだ。

 

「小娘が今さら色気づくなんて、邪魔なの、邪魔なだけなの!!」

「わたしはフィーサよりも一番最初っから、アック様にお会いしているんですからね! 呼び方を変えただけであって、深い意味なんて~……え、えへへ」

「あ~うざい、うざ~い!!」


 ルティとフィーサは、ラクルの港の時から仲が悪い。

 何故こうもケンカばかりするのか。


 ――そんな彼女たちを気にせず、スキュラが話の続きを聞いて来る。


「それで、アックさま。あなたさまは、剣闘場に出られるのですか?」

「そのつもりは無かったんだけど、何というかルティが」

「ふぅん? 大体分かりますけれど、アグエスタの騎士団なんかが、ドワーフの娘ごときを気にするなんて、おかしな話ですわね」


 ◇◇


「――というわけなんだ。ベッツって名は、確か酒場の男の名前と同じはず」


 真面目に聞いて来るスキュラに対し、おれは事の成り行きを話した。


「あたしの出番ですわね?」

「――! 出来るならぜひ頼むよ」


 さすがというべきか、スキュラはすぐに理解したようだ。


「あなたさまは、あたくしたちに頭を下げて頼んではいけませんわ! 小娘たちと同様ですけれど、お傍にいたいお方……それがアックさまですわ。頼むのではなく、命令を出して頂きませんと」

「それじゃあ、スキュラ。貴族騎士アルビン・ベッツに近づき、動向を探れ」

「……承知しましたわ」


 未だ、ルティとフィーサの口論は収まりそうにない。

 そんな中、スキュラには引き続き貴族騎士のことを調べてもらうことにした。


「ゼーハーゼーハ……」

「くどい! 小娘、くどい!」


 本当に仲が悪いな。

 しかし問題は山積みだ。剣闘場、ルティの処遇。そして――


「そろそろいい加減にし――」

「イスティさま!! 小娘はどうでもいいけど、イスティさまには時間が無いの! 分かってる?」


 時間が無いというのは、剣の実力のことだ。


「いや、それは」

「戦うにしたって、わらわを軽くすればいいってわけじゃないんだよ? ちゃんとスキル上げしないと駄目なの!」


 もっともなことである。拳と魔法に関しては、結構自信がある。

 しかし剣のスキルは、今までまともに握って来ていないツケがここで訪れてしまった。


 いくらフィーサ自身が強くても、おれ自身を鍛えなければ意味が無い。


「あぁ、アックさま。以前から気になっていましたけれど、どうしてお使いにならないのです?」

「何を……?」

「剣を扱ったことが無いのは分かりますわ。ですけれど、そうであれば魔石ガチャで何とかすればよろしいのでは?」


 ルティと似たことを言うものだな。


「ガチャで何とかするって、どういう意味で? 強くするものを出すっていうのは、それはどうなのかなと」

「フフフッ! 同じではありません? あなたさまはそこのドワーフ娘、宝剣の小娘……それら全てでお強くなられておりますわ」


 拳にしても身体的な強化にしても、ルティの恩恵を受けている。

 フィーサについても、外で助けられた。


「……う」

「全て頼ることをどうして嫌っているのか存じませんけれど、それがあなたの良さなのですわ。使えるスキルを存分にお使いになられても、あたくしたちは咎めませんわ」


 そう言われればそうか。

 ルティやフィーサは、ガチャを引いて出た子たちだ。


 それもあって、おれがガチャをすることについては口を出して来ない。

 しかしそうじゃないスキュラは、違う見方が出来る。


 今のままでは、間違いなくフィーサに頼ることになってしまう。

 彼女の動きだけでは、Aランク騎士に太刀打ちも出来ない。


「――よし、それならこれで!」


 【Uレア ソードスキル習得の書 Lv.--】

 【Uレア スキル上げスキル Lv.0】


 スキュラに言われるがまま、ガチャを引いてみた。

 だが出た物は、どれも何とも言えないものだった。


「何だか不思議なものが出ましたね~!」

「…………うーん」


 新しく加えた魔石には、一切変化が見られない。

 ――そう思っていたが、その内の一つだけスキル専用と書かれた魔石が見えた。


 魔石の色は今まで変化がなく、普通の黒っぽい石だった。

 しかし今回変わった魔石は、アメジストの色に変わっている。


「やりましたのね、アックさま! 魔石も変化させたということは、スキルも成長をしているということなのでは? それもスキル向けの魔石ということでしたら、使い勝手がよろしいのでは」

「そ、そういうことなのか」


 どんな属性なのかは不明だ。

 しかし今回出たスキルに対し、魔石の色が変化した。


 今後はこの色のある魔石で、スキル向けのアイテムが出るかもしれない。

 ソードスキルを習得出来るアイテムのようだが、実戦でどう使えるのか。


 とにかくこれらを使って、剣闘場に参加出来そうだ。

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