第17話 火山渓谷を目指そう!
「アックさん! ご無事ですか?」
バヴァルより少し遅れて、ルティとスキュラたちが駆け寄って来る。
彼女たちはおれのことを心配してくれているみたいだ。
「平気だぞ」
「良かったです~! ところで……さっきの人間たちって、その魔石に?」
「あぁ、そのようだ。一応聞くけど、ダメージは無いよな? ルティ」
「――痛みって何でしたっけ?」
前々から感じていたが、ルティの身体能力とか性格はおバカさんなのでは――。
それでも彼女には愛嬌も可愛げもあるし、よしとしよう。
「いや、うん……」
「はい~! アックさんもお元気そうで何よりですっ!」
ひとまずおれは、元Sランクパーティーたちを封じた魔石を地面に置いた。
バヴァル曰く、おれの手に乗せたままでは魔力を吸いかねないのだとか。
「フンッ、それにしてもいい気味ですわね。あたしは元々人間が好きでは無かったですわ! しかも愛するアックさまをひどい目に遭わせていた連中なんて、魔石でも手ぬるいと思いますけど?」
やはりスキュラからすれば、甘いと言われてしまうか。
「スキュラ的には納得が行かないか?」
「――いきませんわね。アックさまは別として、そこの……途中で加わった魔女も気に入らないですし、ドワーフ娘はまぁ、どうでもいいですけれど」
水棲怪物スキュラは、海底神殿の番人のようなものだった。
恐らく人間の嫌な部分は何度も見てきた上で、この結末に納得出来ないのだろう。
当のバヴァルは、おれが手にする魔石をジッと見つめている。
果たして彼女がどういう考えなのか、何となく聞きづらい雰囲気だ。
「あ~あ。わらわの出番が全然無かった~! せっかく起きたのに~」
「あんな奴らを斬っても何にもならないよ。フィーサはもっと別の――」
「そ、それだけわらわのことを大事に!?」
「――もちろん、そうだよ」
どうも意味合いが違う気がするが、グルートたちを斬る為に使うつもりは無かった。
フィーサは別の機会に使わせてもらう。
「あぁぁっ!! マスターイスティさま! ずっとずっと一緒にいたいの!」
「これからも頼むよ、フィーサ」
「はぅぅ……」
どうやらずっと考え事をしていたバヴァルが、ようやく口を開くようだ。
「ところでアック様。その魔石をどうされますか?」
「……連中を封じたとはいえ、あまりいい気分はしない。ガチャで使えるとしてもね」
たとえこの魔石でガチャが出来るとしても、使う気にはならない。
「――ええ。それに今の状態では、たとえレア確定になるとしても油断は出来ません」
「邪気が残っているから?」
「悪しき心を持っていたからこその怪物変化。アック様だったら、邪悪な魔獣には変化していなかったはずです」
ガチャで出したアイテムとしては、特殊なスキルだとは思っていた。
しかし結局奪われて、あんなことになった。
まずは魔石の処分を決めるのが先か。
ここはバヴァルの考えに従うか、あるいは――。
「なるほど……」
「その魔石を使われるおつもりでしたら、竜の息に近い熱さで浄化をするべきかと」
「竜の息?」
「アック様が吐き出された炎のブレスのことですわ」
「あぁ、竜だった時の攻撃か」
おれの口から炎を吐き出したんだった。それに近い熱さの所に沈めるとか、そんな所がどこにあるというのか。
「何かお困りですか? アックさん」
「ん? どこかに竜のブレスみたいに、熱い場所は無いかなと」
「そっ、それでしたら、ありますよ!!」
「心あたりでも?」
「フフッフフフ!! それこそわたしの故郷ですよっ! お忘れですか?」
あぁ、そういえばそうか。
彼女は火山渓谷の出身で、ガチャで引いて呼び出してしまったんだったな。
「確か火山渓谷の――」
「ロキュンテです! 是非! ぜひぜひ!! アックさんに来てもらいたいですっっ!」
「そ、そうだな」
すでに行く気のようで、ルティは手放しで大喜びを体現している。
ルティはともかく、他の彼女たちの気持ちはどうなのか。
「アック様。水棲の――あの魔物の彼女のことですが、守っておやりになればよいかと」
「バヴァルもそこに行くんだよね?」
「――もちろんです。魔石を何とかするのが、わたくしの務めでございます」
「そ、そうか」
一刻も早くという距離では無さそうだが、まずはスキュラを説得して、火山渓谷を目指すとするか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます