Sランクパーティーから追放されたけど、ガチャ【レア確定】スキルが覚醒したので 、好き勝手に生きます!

遥 かずら

生まれつきのスキル

第1話 追放、放置のち覚醒!

「おい、倉庫番!! ぼさっと突っ立ってんじゃねえ!」


 おれは以前、町で倉庫番をやっていたアック・イスティ、19歳。

 倉庫番をクビにさせられ、そこから無理やり勇者たちの荷物持ちにさせられて同行している。


 町から程近いダンジョンであるサクリフ石窟に入って早々、賢者テミドは怒気を含めて、おれの背中を蹴りだした。

 

「グズめ、とっとと歩け! 倉庫番の荷物より軽いだろうが!!」


 おれから頼んだわけでもないのに、魔石のドロップ目当てとその場でガチャをしたいだけで仲間にしたのに、この仕打ちはどうなんだろう。


「す、すみません、テミドさん」

「あぁ? いっぱしの荷物持ちなんぞが、俺の名前を気安く呼ぶな、張り倒されてえのか?」

「クスッ、随分と粗雑ですこと。わたくしのことは、遠慮なくエドラ様とお呼びくださるかしら? 荷物持ちさん」

「……は、はい、エドラ様」

「テミド! この先に眠ったままのワイバーンが一匹いる。僕がおびき寄せるから、迎え撃つ準備をしてくれ」


 勇者グルートから聞こえて来た合図と同時に、緊張感が高まりだす。


「おい!! さっさと武器をよこせ!」


 おれは急いで装備袋に手を入れた。しかしそれすら待ちきれなかったのか、テミドは装備袋を奪う。

 そこから両手杖を取り出し、ワイバーンに向けて氷系魔法を放った。

 

 その効果は麻痺のようで、ワイバーンは動かなくなり、そのままグルートの剣によって倒されていた。

 勇者と賢者の連携というやつなのだろうか、Sランクの強さは本物のようだ。


 彼らは世界に名を知られているSランク冒険者で、勇者であるグルート・ベッツを筆頭に、賢者テミド・ザーム、聖女エドラ・シーフェルの3人でパーティーを組んでいる。


「よしっ! 情報通りだ。魔石が出たぞ! アック、君の出番だ。ガチャスキルを使いたまえ!」

「あ、はい」


 魔石を手の平に乗せて握りしめ、そのまま地面に向かって放り投げた。

 その中身は、


 属性結晶の欠片かけら、静寂魔草、猛毒草、暗闇草、それとたくさんの魔石だった。

 こんなにいっぺんにアイテムが出たのは、ガチャスキルを使って初めてのことだ。


「それがガチャで出たモンか? 全部ゴミアイテムかよ!! 役に立たねえ魔石まで出てるじゃねえかよ!」


 そう言いながらテミドは、魔石と暗闇草を奥の方に投げ捨ててしまった。

 石窟ということもあり、間近で見ない限り地面と区別がつきそうにない。


「……ふぅ。やはりそんなものでしたわね。冒険者が夢を抱いたところでスキルを持つ人間が外れでは、何度ガチャをしても無意味というもの。魔石から魔石を出している時点で、無駄スキルですわね」

「で、でも、今までのガチャの中では一番いいものが出たかと。見たことが無いものばかりで……」

「アックくん、君のガチャスキルには期待しているんだ。魔石が追加されたことだし、今ある分でガチャをしてみてほしい」

「わ、分かりました」


 あるだけの魔石を使ってガチャを繰り返す。

 しかし結果は、最初にガチャをしたものよりもいいものが出ない。


 そして残り一つの魔石でガチャをした時だ。


「ふむ……蘇生魔法が込められた宝珠を引き当てたみたいだね。これは使えそうだ」

「ほ、本当ですかっ!!」

「あぁ、残念なことにね」

「え、ど、どういう意味――」

「テミド! これを投げろ!!」

「任せろ!! おぅらぁぁぁぁぁぁっ!!」

「あぁぁっ!?」


 グルートから手渡された宝珠を受け取ったテミドは、倒したワイバーンに向けてぶん投げた。

 宝珠はワイバーンに当たり、蘇生魔法の効果が効いているのか、復活しかかっている。


 様子に気を取られていたおれに対し、エドラが麻痺と物理と属性耐性低下、睡眠耐性の魔法をかけてきた。


「ひょーっ! エドラは容赦ねえなあ! まぁ、俺もアックが出した静寂魔草と猛毒草を追加で当ててやるけどな!」

「外れ荷物持ちの分際で、グルートさまを落胆させましたもの。本当ならわたくしの手だけで片付けてしまいたいくらいですわ!」

「だはははッ! 聖女にやられて嬉しそうだぜ? もがきながらエドラに近づこうとしてるぞ!」

「汚らわしいことですわね!!」


 な、何だこれ……全身痺れているうえ、毒も回っていて口が開かない。


「ぅぐあぁ!? な……ぜ、こ……」

 

 尋常じゃない激痛があるのに、睡眠耐性のせいで意識を保ったままで眠ることも出来ない。

 そのくせ耳だけは正常で、彼らの本性がはっきり正確に聞こえて来る。


「荷物持ちアック・イスティ。僕の見込んだ通り……使う価値のないゴミスキル持ちだった。ガチャスキルなんかが役に立つと思っていたか? いや、ワイバーンの命は救えたか」

「その通りですわね。ワイバーンの命を救った荷物持ちアック……わたくしたちが、世界に知らせて差し上げますわ!」

「だっはははっ!! そりゃあいいな! それだけでも俺らの名がさらに高まるだろうぜ」

「聞こえていると思うが、アック。今をもって、僕たちSランクパーティーから永久追放とする。ガチャスキルを持った自分を悔やむだろうが、心配いらない。間もなく目覚めるワイバーンによって、君は耐え難い痛みと苦しみを味わうだろう」

「荷物持ちのグズなアック、じゃあな!」

「役立たずで愚かなアックさん。苦痛と共にごきげんよう」

「あぁ、残念だ。最期を見ておきたかったものだが、Sランクの僕たちは無駄な時間を過ごすのが嫌いなんだ。それでは、アック・イスティくん、無事に消えてくれることを祈っているよ」


 く、くそ……初めからおれをここに連れて来て、消すつもりだったんだ。

 それもワイバーンによって。


 倉庫をクビにさせ、仲間に入れて荷物持ちにした勇者グルートこそが、黒幕だった。

 こんなこと許すものか……ガチャスキルでおれは……、ここから這い上がってやる。


「――ぅ……」


 勇者たちがいなくなってどれくらい経っただろうか。

 どういうわけか、猛毒と静寂、そして麻痺は全身に回ってしまっているが、不思議なことに苦痛を感じていない。

 

 単純に聖女エドラの睡眠耐性が強烈だからというのも関係しているかもしれないが、まどろみながら無意識のうちに這いずり回り、手で強く握りしめていたものに気付く。


 属性結晶の欠片だった。 

 欠片ではあるが眼前で確かめてみると、複数の魔法属性が渦を巻きながら結晶全体に封じられているようにも見える。


 結晶は聖なる石から作られたと聞いたことがあったが、禍々しい魔法を吸い取って封じたのだろうか。

 とはいえ回復したわけでは無く、静寂や麻痺、猛毒の要素が体から抜けただけで痛みは残ったままだ。


 睡眠耐性は自分の体を高める効果だからなのか、結晶には含まれていないせいか、目が覚めている。

 こうなるとワイバーンがどうなっているのか気になるが、近くにはいないらしい。


 蘇生されてその場に留まらずに動き回っていれば、間違いなく襲って来るだろうが、幸いにして這いずり回っていたらしいおれは、石窟の奥にまで動いていたようだ。


 ワイバーンのねぐらだからなのか、妙に落ち着くし何かに包まれているような感じがする。

 いずれにしてもうかうかしていられない。ワイバーンは元の場所に戻って来るはず。


 今のうちに魔石と暗闇草を探すべき……そう思っていると、力任せのテミドが投げたものが、ここに落ちている。


 これなら――!


「ンギィィィィ……!!」

 予想通り、ワイバーンは元々眠っていた奥の場所に戻って来た。


 身を隠すところはどこにもなく、ワイバーンはすぐに俺をめがけて突進して来る。

 今だっ!!


 おれは手にしていた暗闇草と、属性結晶の欠片、数個の魔石をワイバーンに投げた。


 間近に迫っていたワイバーンに当たると、結晶の欠片が割れて封じ込められていた静寂や猛毒、そこに暗闇草の効果も重なってのたうち回り、石の壁に何度も体をぶつけている。


 その隙に、手元に残した最後の魔石を握りしめてガチャをした。

 これに賭けるしかない――そう思っていたのに、視覚を失ったワイバーンがこっちに向かって来る。


 とっさのことだったがぎりぎりのところで、壁際に体を張り付かせて避けることが出来た。

 それなのに、ガチャをした魔石は、ワイバーンによって踏み潰されてしまった。


 そ、そんな……魔石が粉々になっているなんて。

 もうどうしようもない……思わず目を閉じてうつむくと、そこにはワイバーンに投げつけていた魔石が転がっている。


 駄目元で、力無く魔石を手にしたその時だ。

 

 な、何だこれ……!? 

 魔石に触れた手の平には、ガチャ【レア確定】という文字が浮かび上がっていた。

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