第6話 初陣にしてMVP!!

「やーっぱりケルベロスだったか」

「前の村と同じだったねー」

「ジュリアの予想通りかもな。この地方に派遣されてきてる魔王の下僕は皆このタイプだ」


 古城の最深部。死闘の末に決着がついた。俺たちを待ち構えていたのは、3つの頭を持つ巨大な犬だった。元の世界のファンタジー作品でおなじみのケルベロスというやつだ。


 強敵だった。3つの頭からはそれぞれ、火炎、吹雪、毒の息を吐き、正面からマトモにぶつかろうとすれば近づくことすら出来ない。

 ジュリアちゃんが前衛のアグリに魔法の防壁を張り、彼の後ろに安全地帯をつくる。そこから、オクトが飛び出しヒットアンドアウェイでケルベロスの体力を削り取る。ジュリアちゃんは攻撃魔法でオクトの援護をする。


 だが、この戦いのMVPは……


「しかしゲン、お前のスキルすごいな!!」


 何を隠そうこのオレだった!!


「ホントホント! 初めての実戦とは思えなかったよー」

「長期戦覚悟だったんだが、お前のおかげで手早く片付いたよ!」


 歴戦の勇者たちからの熱い勝算。メッチャ気持ちイイッ!!!


 オレのスキルは想像以上の威力を発揮した。ダガーを構えて跳躍。ジャンプ力はジュリアちゃんの補助魔法でバフがかかり、ケルベロスの頭よりも上 (だいたい8メートルくらい…?) まで跳び上がることが出来た。最初はその高さにビビったものの、二回目のジャンプからは、敵の姿をしっかりと把握することが出来た。

 そして、狙うのはやつの3つの頭…… 心のなかで標的をイメージし、ダガーを振る!

 

 一瞬で、2つの頭の額から血が噴出した。なるほど、要領はわかった。ならもう一回…!

 見事に決まる3連撃!! それぞれの頭の右目を潰す。ならもう一度だ! 次は左目!!


 ……そうして、オレはケルベルスの視界を完全に奪うことに成功。敵の動きは格段に弱くなり、あとはオクトたち3人による連携攻撃で一気にカタがついた。



      *     *     *



「よし、出来たぞオクト」


 アグリは大剣でケルベロスの死骸から3本の首を切り落とした。首だけで、元の世界の大型犬くらいのサイズがある。


「それじゃあ、こうしてっと」


 オクトはそれを掴むと、腰からぶら下げている革の袋に入れた。袋自体はそこまで大きなものじゃない。せいぜいリンゴが2~3個入るくらいの大きさだ。が、オクトがケルベロスの首をその袋の口に近づけると、スルスルとその中に首が収納されてしまった。


 元の世界で遊んでいたRPGでは、武器やアイテムを99個ずつ持ち歩いたり出来たけど、アレってこういうナゾ原理の袋に収納していたのだろうか……?


「よし、それじゃあ村に戻って報酬をもらうとするか!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る