第25話 ボルダリング

それから数日が経った。

加奈からメッセージが届いた。


「ううっ……ショックだよ……」

「どうしたの?」

「ケーキバイキングで美味しくてついいっぱい食べちゃったからか、ちょっと太ったの」

「ありゃ……。まあでも加奈は、元々痩せてるからそんなに問題ないんじゃない?」

「問題あるよ。体重は、ちょっと油断したらすぐ太るんだから」

「そうかぁ」

「なんとか痩せないと。体重増えたから、何だかお腹周りも二の腕も気になるようになってさ」

「あー、まあ……。そういうものなのかなー。意識しちゃうと特に気になるよね」

「智也君は、ケーキバイキングから体重増えてないの?」

「ほら。俺って介護の仕事だからさ。仕事が運動みたいなもんじゃない。だから多分、それが運動になってカロリー消費してると思うんだ」

「えー!!智也君の裏切者ー!!」

「えー!?」

「痩せる為に何か運動したい。私、事務職だから運動不足なんだよ」

「運動かぁ。うーん、何がいいかな」

「なんか楽しくて痩せるのない?」

「うーん、そうだなぁ。ちょっと調べてみるよ。また連絡する」


それから俺は、色々と考えた。そしてスマホを使って調べた。

テニスをする。いや、テニスはラケット持ってないしな。これは却下だ。

続いて出てきたのが登山をする。確かに山の頂上に登れば綺麗な景色が見えていいかもしれない。でも登山の道具なんて持ってないし、登山はよく遭難してニュースになってる事もあるし、ちょっと危険かもしれない。これもやめよう。

更に検索を続ける。


「……おっ!!そうか。ボルダリングか。これは良いかもしれない」

ボルダリングなら全身運動になるし、道具もいらない。

そしてボルダリングができる施設が、割と近くにある事が分かった。

俺は、加奈にメッセージを送った。


「運動不足解消できるやつを調べたんだけどさ、ボルダリングなんて良いんじゃない?全身運動になるし、道具も買ったりしなくていいよ」

「ボルダリングかぁ。やった事ないけど、やってみたい」

「俺もやった事はないな。割と近くにボルダリングできる施設もあるみたいだし、来週行ってみようよ」

「うん!!」


それから一週間が経った。今日は、加奈とボルダリングに行く日だ。

俺は今日の日の為に、ボルダリングの為の知識を調べてきた。

ボルダリング施設でレンタルシューズを借りるらしい。

その時に選ぶレンタルシューズは、普段履いている靴よりも少しきつめを選ぶといいらしい。また蒸れるので替えの靴下を持っていくといいらしい。

それから事前に、爪は必ず切っていく方がいいらしい。

俺は、加奈に爪を切っておいてねと前日にメッセージを送っておいた。

後、替えの靴下も用意しておいてもらった。


駅前で待ち合わせて、いつものように俺が先に来て待っていた。

待ち合わせの時間通りに加奈がやってきた。


「おっ、ジャージだね。やる気満々だな」

「うん。今日は頑張るよ。頑張って痩せるんだ。今日は、私の記念すべきクライマーデビューだよ」

「俺もだよ」


電車に乗って一駅。そこから十分ほど歩いてボルダリングが出来る施設へ着いた。

受付を済ませて中に入る。レンタルシューズも借りて準備は完了した。

目の前には、カラフルな色をした足場が沢山付いた壁が聳え立っていた。


「おおー、これ登るのかー」

「難しそう」

「えーとね、ルールがあるらしいよ」

「ルール?」

「足場のところにさ、テープ貼ってあってアルファベットが書いてあるよね」

「うんうん」

「その同じアルファベットを使って登っていくのが、お店側が設定したコースなんだってさ」

「それを使わないとダメってこと?」

「ダメではないけど、お店側オススメみたいな感じらしい」

「そうなんだ。じゃあちょっとやってみようよ」


初心者だからAの文字が書いてあるコースから順番にやっていく。


「結構簡単だね」

「まあ最初だからね」


続いてBをやって、Cをやって順番に攻略していく。

そしてしばらくやっていると、次第に難しくなってきた。


「うわっ……。これは結構きつい」

「うん。きついね」

「全身使わないと……」

「うん。これはかなり辛い」


体重をどこに乗せたらいいのか。どこのホールドを使えばいいのか。

結構、頭も使うし判断力も必要なのが分かった。

ボルダリングとは、なかなか奥が深いものだった。

俺と加奈は、ひたすら登っては降りて、登っては降りてを繰り返した。


「はぁはぁはぁ……」

「はぁはぁ……」

「ちょ、ちょっと休憩にしようか」

「うん……」


それから飲み物を飲んで休憩する。

そして再びチャレンジして、初めてのボルタリングを終えた。


「良い運動になったんじゃない?」

「うん。明日、絶対に筋肉痛だよ」

「加奈は運動不足なら、明日は大変そうだね」

「智也君は平気なの?」

「俺はまあ大丈夫なんじゃないかな。毎日、運動してるようなものだし。高齢者抱えるからね」


そして加奈と駅で別れて帰った。

次の日になり、俺は筋肉痛になっていた。

普段使わないような筋肉を使ったせいだ。

ボルダリング、恐るべし……。

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