第18話 おうちデート

それから数日が経ち、加奈がメッセージを送ってきた。


「智也君。今度、智也君の部屋に行っていい?」

「えっ?いいけど」

「おうちデートってやつしようよ。部屋でのんびり過ごすの」

「うん。いいよ」

「それでさ、一緒に料理しようよ。前にピクニックの時にさ、料理教えるって言ったし」

「ああ、うん。俺もなんか簡単な料理作れるようになれたらありがたいし」

「うん。じゃあ来週、智也君のマンションに行くね」

「うん。わかった」


それから一週間が経った。今日は加奈が俺の部屋を訪ねてくる。

のんびりおうちデートの日だ。

俺は今日の日の為に、部屋を念入りに掃除して綺麗にした。

そして見られたらまずい秘蔵コレクション達を、押し入れの奥に隠した。

これだけは、死んでも見られてはいけない。

インターホンが鳴り、加奈がやってきた。


「お邪魔します」

「どうぞ」


加奈が部屋に上がった。ついに俺の部屋に彼女がきた。

この感動は、一生忘れないだろう。


「へぇー、部屋綺麗にしてるんだね」

「いや、まあ……いつもは散らかってるんだけど、加奈が来るから片付けたんだよ」

「正直だね」

「それだけが取り柄です」

「あはは」


加奈を座らせて、俺は冷蔵庫から珈琲を出してあげる。


「はい、珈琲」

「ありがとう。……あっ!!フィギュアが沢山ある!!」

「うん。ゲームセンターでゲットしたやつ、結構あるんだ」


俺は、フィギュアを見せてあげる。


「へぇ!!いっぱいある!!いいなぁ。私もクレーンゲームが上手かったら自力で取れるのに」

「欲しいのある?いるなら何でもあげるよ」

「ほんと!?やった。見てみよっと」


加奈がフィギュアを物色して、ひとつ手に取った。


「これ貰っていい?」

「うん。いいよ」

「ありがとうー。あっ、ゲームもあるんだね」

「うん。何かゲームする?」

「うん。やろうー」


コントローラーを加奈に渡して、二人で対戦ゲームをする。

加奈はお世辞にも上手いとは言えない腕前だったので、手加減してあげる。

しばらく対戦ゲームをした後は、協力プレイモードをして敵を倒していく。

そして気がつけば最終ボスまで、ずっとゲームをプレイしていた。


「やったー!!クリア!!楽しかったー!!」

「加奈も上手くなってきたね。特にアイテム使うタイミングとか」

「才能ある?」

「うん。ある」


ゲームを終わり、それから今日の目的のひとつでもある料理をする事になった。

加奈が冷蔵庫を開けると、大したものが入っていない。


「えー、材料とか全然入ってない。今から買い物行こうよ」

「じゃあ行く?」

「うん」


加奈と二人で近所のスーパーまで歩いていく。

スーパーに着いた。


「それで今日は何作る?」

「智也君は、何食べたい?」

「じゃあカレー」

「わかった。カレーはね、簡単に出来るんだよ」

「らしいね。でも俺、自分で作った事ないんだよ」

「じゃあ私の特製カレーの作り方教えてあげるね。一緒に作ろう」

「うん、楽しみ」



加奈は、ジャガイモやニンジン、玉ねぎをかごの中に入れていく。


「ねぇ。シーフードカレーとビーフカレーどっちがいい?あっ、他にもバターチキンカレーとかもできるよ」

「えー、そうだなー。どれも美味しそう。じゃあビーフカレーで」

「わかった」


加奈は、牛肉をかごの中に入れた。

会計を済ませて、俺の部屋へと戻る。


「じゃあカレー作っていくよ。まずは、ニンジンの皮とジャガイモの皮をむいて。野菜を切る」


俺は加奈に横でアドバイスされながら、慣れない手つきで包丁を使って野菜を切っていく。


「ジャガイモの芽は、ちゃんと取ってね」

「う、うん」

「玉ねぎも切って」


玉ねぎを切ったら、目に染みた。


「おー、痛い痛い痛い。玉ねぎが……」

「頑張ってー。具材を炒めたら、鍋の中に投入して」

「はい、加奈先生」


具材を水の入った鍋に入れて、しばらく火にかけると沸騰してきた。


「じゃあそろそろルーを入れて」

「このくらい?」

「うん。それくらい。後は待つだけ」

「えっ!!めっちゃ簡単じゃん」

「でしょ?カレーは簡単なんだよー」

「マジかー。今度一人で作ってみる」

「うん」


そして出来上がったカレーを食べてみる。


「おおっ!!美味しい!!」

「ね?美味しく出来たでしょ?」

「うん。これで俺もひとつ料理を覚えたよ」

「智也君は、何の料理ができる?」

「いや、全く出来ないよ。ゆで卵とスクランブルエッグくらい」

「全然だめじゃん!!」

「スーパーの総菜がなくなったら、俺は餓死するね」

「だめだよー。一人暮らしのくせに料理全然できないなんて」

「でもまあ、総菜のおかげでこの歳までなんとか生きてこれたよ」

「もー」


カレーを食べた後、二人で映画を見る事にした。


「何見ようか。俺、映画のサブスクリプションのサービス入ってるから色々あるよ」

「あっ!!海外ドラマ!!」

「アニメじゃなくてもいいの?」

「うん。たまには海外ドラマもありかなって。智也君は、海外ドラマ見るの?」

「うーん、見た事ないなー。俺は基本、アニメが多いよ」

「せっかくサブスクリプション入ってるのに勿体ないよ。色々見ないと」

「加奈は海外ドラマ見るの?」

「お母さんが好きで色々見ててさ、私もその影響でたまに見たりするよ」

「何か面白い作品ある?」

「あっ!!これ見よう。天使に一撃」

「天使に一撃?どんな話?あらすじ読んでよ」

「スラム街で育った捨て子のジルコは、大富豪ウィリアムズの大事なペンダントを拾う」

「うんうん」

「ウィリアムズは、ジルコにペンダントを返してくれと頼むが、ジルコはペンダントを買い取ってと言う」

「ふむふむ」

「だがウィリアムズは、ペンダントを買い取るのではなく、うちの屋敷で使用人の仕事をしないかと持ちかける」

「それで?」

「ジルコは、お金を稼げるならと使用人になる。そこから大富豪とスラム街出身の使用人との不思議な共同生活が始まるって話だって」

「なるほど。面白そうだね。見てみよう」

「十話あるよ」

「連続ドラマにしては、短めだね」

「とりあえず一話見てみようよ」


天使に一撃を見始めた。

ジルコとウィリアムズが出会い、そしてジルコが使用人として働き始めた。

食器を雑巾で拭いてしまったり、来客に対して無礼な態度をして怒らせたりして失敗する。

それをコメディタッチで描いていて、笑えるシーンが結構ある。

そして次第にジルコは、使用人の仕事に対して責任感と誇りを持って仕事していくようになる。

話を進めていくと、ウィリアムズは病気にかかり、倒れてしまう。

ウィリアムズに家族はおらず、親しい友人もいない。

ジルコは、ウィリアムズから遺産を相続しないかと話を持ちかけられる。

ジルコは莫大な遺産を相続し、孤児院を建てるとウィリアムズに話した。

それを聞いたウィリアムズは、満足そうに微笑みながら亡くなった。

そしてその孤児院の名前は、ウィリアムズ孤児院という名前になった。

悔しい。どうしてウィリアムズを天国に連れていくんだよ。俺は天使の野郎を一撃、ぶん殴りたい。そうしてエンドロールが流れた。


「やばい……。まさか最後、こんなに泣かせに来るとは」

「面白かったね」

「天使に一撃っていうのは、ジルコがウィリアムズを天国に連れて行こうとする天使に腹を立てて一撃入れたいって意味だったんだね」

「これ、ジルコの悔しい気持ちが表現されたタイトルだったんだねー」

「いやー、これは面白かった」


まさか十話全て見てしまうとは、思わなかった。

加奈がいなければ、こんなに面白い作品に出会う事はなかっただろう。


「たまには海外ドラマも良いもんだね」

「でしょ?マイナーだけど名作みたいなの結構いっぱいありそうだよ」

「また楽しみが増えたな」

「私もまた面白そうなのあれば探してみるね」

「うん」


海外ドラマを全話一気見したからか、時間的にも遅くなった。


「それじゃ、私そろそろ帰るね」

「うん。暗くなってきたから気をつけて帰ってね」

「うん。それじゃ、またね」

「うん。また」


加奈が帰った後、俺は他にも面白い海外ドラマがないかと検索していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る