第17話 カラオケデート

それから数日が経った。加奈に勧められた魔女ナースの感想をメッセージで送った。


「今度本屋に行った時には、二巻買ってみるよ。面白かったよ。なんか実写映画化しそうな軽いノリだったね」

「分かる。実写化するかもね」

「風神雷神の実写化とかしたらどう思う?」

「えー、それはやめて欲しい。絶対やめて欲しい。あれはアニメだから良いんだよ」

「だよね。俺もそう思う」

「通り過ぎていくー。奇跡よー。ああー、カラオケ行きたいなぁ」

「じゃあ来週、カラオケ行く?」

「カラオケ行こう!!最近全然歌ってないからさー、行きたいなって思ってたんだ」

「よし、じゃあ行こう」

「うん!!」


それから一週間が経った。今日は加奈とのカラオケデートの日だ。

俺もライブに行った時からずっと行きたかったカラオケだ。

カラオケに行くのも久しぶりだし、もちろん彼女とカラオケなんていうのも初めての経験だ。とても新鮮な気持ちだ。

待ち合わせ場所は、カラオケ店が併設しているゲームセンターにした。

先に着いた俺は、中に入ってクレーンゲームをして加奈に何か獲ってあげる事にした。こっそり獲ってプレゼントしよう。

そんなちょっとしたサプライズを狙って、大きなエグモンのぬいぐるみを獲った。

そして待ち合わせ場所で待っていると、加奈が時間通りにやってきた。


「お待たせ―。……って、エグモンだー!!」

「はい。これあげる。サプライズプレゼントだよ」

「ありがとうー。大きいぬいぐるみだなぁ。帰ったらベッドの横に置いて寝るよ」

「うん。それじゃ行こうか」


カラオケ店へと行き、受付を済ませる。

機種は、アニソンが多そうなやつを選んだ。

部屋にマイクと荷物を置く。


「とりあえずドリンクバーで飲み物でも取りに行こうか」

「そうだね」


二人でドリンクバーで飲み物を取りに行った。


「俺さ、カラオケ行くとウーロン茶は絶対選ばないんだよね」

「そうなんだ。なんで?」

「テレビで言ってたんだけど、ウーロン茶は喉の脂分を洗い流す効果があるって言ってたから」

「そうなんだ。気を使ってるんだね」

「まあなんとなくって感じなんだけどね」

「私はオレンジジュースにしようかな」

「俺は炭酸が欲しい気分だから、コーラにしようかな」


ドリンクバーに飲み物を入れて、部屋に戻ってきた。


「何か食べる物とか注文しようか」

「そうだね」


テーブルの上にフードメニュー表を広げる。


「加奈はいつもカラオケ来たら何を注文するの?」

「野菜スティックとかかなぁ」

「へぇー。俺はフライドポテトかな」

「アイスも良いよね」

「歌ってカロリー消費してまた食べるって感じになるんだよ」

「分かる。ちょっとくらい良いかなって」

「オニオンリングも美味しいんだよね」

「智也君。脂物多いよ。脂物ばっかりも良くないよ」

「あー、まあ……歌ってカロリー消費するし大丈夫でしょ」

「まあとか言って私も食べるけど。あっ、ハニートーストも美味しそうー」

「ハニートーストも美味しいよね。一回食べた事ある」

「友達と来た時さ、このロシアンたこ焼き頼んだことあるよ」

「ロシアンたこ焼き?何それー」

「六個のたこ焼きの中のどれか一つに、からしが大量に入ってるんだ。罰ゲームとかのやつ」

「うわー、それは嫌だなー」

「でさ、俺が運悪く引いちゃって食べたんだけど、その後で歌うのが辛かったよ」

「ダメージ受けたんだね」

「うん」


リモコンを使い、フードメニューを見ながら注文番号を入力する。


「これでよしっと……。じゃあ歌うかー」

「そうだね」

「どっちから歌う?」

「じゃあ智也君から」

「えっ?俺か。じゃあどうしようかな。何にしよう」


画面をタッチパネルで操作して曲を探す。

そして曲を選んで送信ボタンを押した。

画面に表示されたのは、エグモン奇々怪々というエグモンの曲。


「あー、エグモンだー!!」

「さっきぬいぐるみ獲った時になんとなく歌いたくなって」

「そっかそっかぁー」


一曲歌い終わる。


「おおー。智也君、結構歌上手いね」

「そうかな?俺、そんなに歌上手いとか言われた事ないよ。普通って言われるよ」

「そうなんだ。音程もちゃんと合ってたし、結構良いと思ったけどなぁ」

「次は加奈の番だよ。何か曲入れて」

「えー……どうしようかなぁ……」


加奈は、ランキングのページを見て一番上に表示された最近流行りの恋と走るを入れた。


「恋と走るかぁ。確かドラマの主題歌のやつだよね」

「うん。最近流行ってるから乗っかってみた。やっぱりランキング上位の曲は入れないとね」

「うん、わかる」


そして加奈が歌った。

加奈の歌は、とても上手かった。

加奈が歌い終わって、俺は感想を言った。


「おお。めっちゃ上手い。高音とかも綺麗に出てたし、結構難しい曲だと思うけど」

「そうなんだよー。この曲、結構難しいんだよ」

「採点してたら何点くらい取れてたかなー」

「あーっ!!採点入れるの忘れてた!!採点入れよう」

「あっ、うん。そうだね」


タッチパネルの画面を操作して採点モードを入れた。


「次は智也君だよ。何歌うー?」

「うーん……そうだなぁ……。やっぱりこういう時は……」


俺は、履歴の欄を選んで、誰かが歌った履歴を見ていく。


「あー、やるやる!!私も履歴から選曲したりするよ」

「やっぱやるよね。前は、どんな人が歌ってたのかとか想像しながら見ちゃう」

「うんうん」


しばらく見ていると、アニソンがあった。


「うわっ!!めっちゃ懐かしい。ピースだって。俺が小学生の時に流行ったやつ」

「ピース知ってるー!小さい時見てた」


ピースを選曲して歌い終わる。

点数は平均点より少し上くらいだった。


「じゃあ次は私だね。私もアニソン歌おうかなー」


加奈もアニソンを入れる。

エグモン音頭だった。


「おっ、エグモン音頭。これも懐かしい」

「でしょー。初期の頃のやつだよね」


加奈がエグモン音頭を熱唱している最中、注文したフードメニューが運ばれてきた。

ちょっと気まずくて恥ずかしそうにしている加奈。

そんなところも可愛かった。


「タイミングよ!!恥ずかしい」

「まあこれは仕方ない。運が悪かった。でももうメニュー何も頼んでないから入って来ないよ」

「うん」


そして俺の番になり、またアニソンを入れる。


「やっぱりアニソンのノリは最高だと思う。神曲が多い」

「だよねー。何回でも聞いてしまうよ。ねぇ智也君。風神雷神入れて一緒にデュエットしようよ」

「おお、いいね。やろうか」


風神雷神の曲を入れた。

風神のパートを俺が、雷神のパートを加奈が歌った。


「やばい。超楽しい」

「私、風神雷神のデュエット始めてした」

「俺もだよ」


それから結構歌い続けて、少し疲れてきた。

ダラダラとお喋りしながら、フライドポテトをつまんだりして過ごす。

そしてまた歌ってというのを繰り返した。

気が付けば6時間経っていた。


「ふぅー、かなり歌ったなー。そろそろ帰ろうか」

「うん。そうだね」


片付けて会計を済ませた。

それから併設しているゲームセンターで少し遊んで、その日は解散になった。

こういう同性の友達と遊ぶ時のような事をするデートも悪くない。楽しいな。

加奈も楽しんでくれたみたいで良かった。

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