第12話 ドライブデート

それから数日が経った。加奈とメッセージのやりとりをする。


「今度会う時は何しようか?実は色々調べてたんだけどさ、海鮮料理の美味しそうなお店があるんだよ」

「えっ!!行きたい!!どこにあるの?」

「ただ県外なんだ。ちょっと遠いんだ」

「じゃあ車で行こうよ。私、お父さんに車借りるよ」

「車借りても大丈夫なの?」

「うん。お父さん、運動の為に自転車通勤してるから車空いてるんだ」

「じゃあ次は、ドライブして海鮮料理食べに行こうか」

「うん!!」


それから一週間が経った。今日は加奈とのドライブデートの日だ。

加奈がお父さんの車を借りてきてくれる事になっている。

俺は家で待っていると加奈が迎えに来た。


「じゃあ行こっか」

「うん。俺、運転代わるよ」


加奈が運転席を降りて助手席に座る。

俺が運転席に座る。


「それじゃ出発するよ」

「お願いしまーす」


俺はアクセルを踏んで車を走らせた。

車の運転は、介護の送迎があるから仕事でよく運転している。

軽自動車だから小さいし、送迎で乗っている車よりも運転しやすい。慣れたものだ。


「音楽でもかけようか。俺、今日のドライブの為にディスク作ってきたんだ」

「いいね!かけよう」


アニソンを中心とした俺好みのラインナップで編集した曲をかける。


「おお、一曲目は風神雷神のオープニング曲だね」

「そう。加奈も喜ぶかなって思って」


軽快でノリの良い音楽が流れ、サビの部分に入る。


「光よ。俺の光よ。神となりし風と雷よ。強い絆は世界の剣になれるんだー」


加奈が歌いだした。

加奈が楽しそうに歌っているのを聞いて、俺も楽しくなってきた。


「海鮮料理美味しそうー。楽しみだなー」


加奈は、スマホで海鮮料理店の店のホームページを見ながら言った。


「結構人気店らしいね。グルメレビュー見ても評価高かった」

「ほんとだー。これは期待できるね」


それからしばらくは、お互いの子供の頃の話をしたり、仕事の話や笑える話をしたりした。


「利用者のおばあちゃんにさ、リクエストされて演歌をよく歌うんだよ。だから歌詞とかも覚えちゃってさ」

「へぇー」

「加奈は、事務員だからずっとパソコン触ってるの?」

「そう。だからさー、肩こりとかしちゃう」

「それは大変だなー。それに毎日、同じ仕事だと飽きてくる事もありそうだね」

「まあそうだねー。でも時々変な間違い電話とかがかかってくるんだけど、そういうのも面白い時があるよ」

「変な電話?」

「うん。なんかね、会社の電話番号がさ、どこかの小学校の電話番号に似てるらしいんだ」

「うんうん」

「三年一組の宮下ですけどー、今日体調悪いので学校お休みしますとか言われてさ」

「あー、なるほどね」

「まあそれなら、まあ間違い電話だったよねって話じゃない」

「うん。そうだね」

「この間はさ、一年二組の伊藤です。息子が怖い夢見たからどうしても学校行きたくないって言って泣くので、今日は休ませますってかかってきたんだー」

「えー!!何その理由!!しかも休ませるんだ。俺なら絶対無理やり行かされる」

「でしょー!!普通、怖い夢見たって休ませてくれないよね。うちは学校じゃないですって言って電話切ったんだけどさ、凄くツッコミたかったよ」

「子供の時ってさ、加奈はどんな子だったの?」

「ずっとお絵かきしてた気がする」

「へぇー。あんまり外とかで遊ぶ子ではなかったの?」

「そうだねー。お絵かきするか友達とおままごとやってたかも」

「俺は幼稚園の時とかは、砂場で泥団子作ってたなー」

「あー!私もやった事はあるよ。泥団子作るの」

「でさ、ある日に最高の出来栄えの泥団子ができたんだよ」

「うんうん」

「それを家に持って帰って庭に置いてたんだけどさ、次の日が雨だったんだ。だから泥団子がなくなってしまって泣いたのを今だに覚えてるよ」

「あはは。それは残念だったねー」


そんな風に車内では、ずっと会話が途切れる事がなく、中間地点に辿り着いた。


「一旦さ、ちょっとトイレ休憩にしようか。コンビニ寄るよ」

「うん」


コンビニに寄って飲み物とお菓子を買った。


「智也君。ずっと運転も疲れるでしょ?私、交代するよ」

「えっ?そう?俺は全然大丈夫だけど」

「ここまで運転してくれたし休んでていいよ」

「そう?じゃあお言葉に甘えて……」


交代で、加奈が運転する事になった。

俺が助手席に座り、シートベルトをかけた。


「それじゃ出発するよ」


ブオーン!!と車は急発進した。

は、速い!!

これスピード出し過ぎじゃないか!?

しばらくスピードが出たまま、カーブに差し掛かった。

そしてガリガリガリという音がした。


「あっ……」

「か、加奈!!車こすっちゃったよ」

「ど、どうしよう!!」

「ちょっと降りてみてどうなっているか見てみよう」


車を降りて確認すると、左側の後部ドアの所に傷が入っていた。


「うわー、やっちゃったー……。お父さんに怒られる……」

「まあやってしまったものは仕方ないよ」

「そうだね……」


しかし加奈は、またスピードが速いまま走っていた。

まあちょっとスピード出し過ぎてるけど、今度は広い国道だし大丈夫だろう。

その時だった。


「そこの白の軽自動車。左に寄って止まってください」


後ろを見るとパトカーがいた。

そして加奈は、車を左側に寄せて止まった。


「スピード違反だね。10キロオーバー。気を付けてください」

「すみません……」


加奈は、交通違反で検挙された。


「運転、やっぱり俺がするよ。加奈、もう運転したくないでしょ?」

「うん……。お願い……」


それから加奈は、しゅんとなって落ち込んでいた。

なんとか元気付けようと色々な話をした。


「まあこんな時もあるよ。仕方ないって」

「うん……」


そのまま走っていき、目的地である海鮮料理の店に着いた。


「元気出して。美味しい海鮮料理食べようよ」

「そうだね。せっかく食べに来たんだから楽しまなくちゃね」


そして店内に入った。

席に案内されてメニューを広げる。


「うわー、どれも美味しそうだな。何にしよう」

「色々あって迷うねー。蟹もあるー」

「蟹かー。蟹も良いなぁ」

「ハマチ定食だってー!!これもいいなぁ」

「せっかくだし、ちょっと高いのにしようか」

「しちゃう?」

「蟹づくしセットいこうか」

「おおー、蟹づくしセットいいね。これも良いんじゃない?お任せセット」

「お任せセット?どんなの?」

「その日獲れたもので作ったセットなんだってさ。何が来るかはお楽しみだってさ」

「じゃあ蟹づくしセットと、お任せセットにしようか」

「うん」


しばらく待っていると、蟹づくしセットが運ばれてきた。

ゆでガニ、カニしゃぶ、焼きガニ、カニ雑炊。中でも蟹鍋は、ドカンと丸々一匹が鍋に入っていて特に迫力があった。


「おおっ……。すげぇ」


そしてお任せセットが運ばれてきた。

お任せセットは、ウニやいくら、タコにハマチ、バリエーション豊富なセットが運ばれてきた。


「凄い。色々きた」


二人で分け合って食べる。

ボリュームは文句なし。二人では多いくらいの量だったが、どれも美味しくて全部完食した。


「ああー、めっちゃ食べたー。幸せー」

「美味しかったー」

「ここまで来た甲斐があったね」

「ほんとだねー」


そして会計を済ませて店を出た。


「じゃあ帰ろうかー」

「うん」

「いやー、ほんと美味しかったね」

「うん。また来ようよ」

「そうだね。ちょっと遠いけど、ここまで来る価値はあるよね」

「うんうん」


二人で海鮮料理店の味を絶賛して感想を言い合いながら帰っていた。

その途中の事だった。

突然、車のパワーが弱くなったかと思うと、静かになってエンジンが止まってしまった。


「えっ!?あ、あれ!?エ、エンジンが止まったけど……。どうなってるんだ!?」

「えっ?」

「…………あっ!!ガソリンがない!!ガス欠だ!!」

「ええー!?」

「ごめん。俺、ガソリンの残量全然見てなかった」

「いや、私もガソリン入ってるとばかり思ってた。お父さん入れてきてくれてると思ったんだけど。どうすればいいの?」

「こういう時は、ロードサービスを呼ぶしかないね」


俺はネットで調べてロードサービスを呼んだ。

しばらく車の中で二人して待っていると、ロードサービスの人が来てくれてガソリンを入れてくれた。

そしてなんとか再び走り出す事ができた。


「いやー、ビックリした。ただのガス欠でよかったよ」

「私も全然ガソリンの残量とか見てなくてごめんね」

「まあこんなトラブルがあっても一つの思い出かな」

「そうだね」


加奈が車をこすったり、スピード違反で捕まったり。

車がガス欠になったりと色々なトラブルが多いデートだった。

でも海鮮料理は美味しかったし、楽しい一日だった。


俺の家まで車でいき、俺は車を降りた。


「それじゃ、加奈。帰りは気を付けて運転して帰ってね。事故しないようにね」

「うん。スピード違反しちゃったし、車はこすったし。物凄く慎重に運転して帰るね」

「そうだね。それじゃ、またね」

「うん。またね」


加奈は、本当にゆっくりゆっくりと車を運転して帰っていった。

こうしてドライブデートは、終わりを迎えた。

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