宇宙を渡る声 大地に満ちる歌
@hiromi-tomo
プロローグ
海が、光っていた。
暗い海の向こう、右側の――西側の水平線が、仄かに茜色を帯びて明るい。あちらに昼が去り、夜が訪れるのだ。だが、それとは別に、海が光っている。うねる波の下にいる無数の小さなモノ達が、光を放ち、岸辺に立つ者の姿を青く柔らかく照らし出している。
小柄で華奢な姿をしたその者は、こちらに背を向け、ほっそりとした両腕を広げて、纏った白い服を正面から大きく風にあおられながら、大海原へ何かを捧げるかのように佇んでいる。
不意に、白い服が動きを止め、その者の細い輪郭をなぞるように静まった。海から吹き続けていた風が止んだのだ。夜と昼との狭間、凪の時間の到来だ。
【何度隔てられても、どんな彼方からでも、どんなに嫌われようとも、何度でも何度でも――】
不思議な声で話しながら、その者がゆっくりと振り向く。
【手を伸ばしたい。出会いたい。分かり合いたい。どんなに隔てられても、どんな隔てを超えてでも、あなたの許へ行きたい。あなたへ辿り着きたい。あなたに触れたい。そう思うのは、おかしいでしょうか……?】
真面目に、困ったように問いかけてくる、その顔をよく見ようとして、目が覚めた。
(誰だったんだ……?)
知っている相手ではない。男か女かすら、はっきりとしなかった。けれど、妙に懐かしいような、慕わしいような相手だった。
(ああ、駄目だ、忘れちまう――)
夢の風景は急速に遠ざかり、現実が圧倒的に迫ってくる。
(……さっさと起きて、仕度しねえとな)
* * *
太陽系時代の地球文明期、宇宙文明期、人類宇宙時代の分散文明期を経て、人類は、人類宇宙時代集合文明期を迎えた。各
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