いきなり濡れ衣着せられました。

緑月文人

プロローグ

 

 ひょうすべ。

 九州地方の伝承に登場するこれは、河童の一種と伝えられている。

 絵巻物等で描かれているのは、全身ずんぐりとして毛深いが頭部のみがつるりとして、目はぎょろりと大きい姿。

 異相ではあるが、どこか奇妙な愛嬌を醸し出す外見である。


 その姿を見た者に、全身が毒々しい紫に染まる熱病を起こさせる。


 風呂につかった後に、その湯を浴びただけで馬が死ぬ。

 

 大宰府に左遷させられた菅原道真によって助けられた。


 伝承によって様々な形で語られるが、その中のある1匹が、今――


「お前がやったんだな!?」

「誤解です!」


――濡れ衣を着せられようとしていた。

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